長崎県新上五島産イワガキ
明らかに養殖ものだけど
イワガキ
まるで梅雨本番のような雨。つめたい雨はいやではないが、ぬるいやるせない雨が降る。
市場に着いて最初に目指すのはいつも八王子総合卸売協同組合、マル幸である。
店頭に長崎県五島列島新上五島町宿ノ浦産の養殖イワガキがきていた、珍しい形で殻長12cm・150g・厚み2cmから3cmほどで突起がついている。非常に薄っぺらいし、軽いけどそれだけに安い。味見に2個だけ買ってみた。
イワガキは大きいものほど高く、豊洲市場などでは巨大なのをこれ見よがしに並べている仲卸がある。ただ、イワガキの味と軟体(可食部分)の大きさは必ずしも貝殻の大きさではなく、また厚みでもない。
ついでに述べておきたいのは目の前のイワガキは養殖ものだが、イワガキなど貝類はヒトがエサをやるのではなく、栄養分が流れてくる海域に活かしておくだけだ。昨今の自然保護の観点からして問題のある、肉食魚の養殖とは分けて考えるべきだ。
いびつな形ではあるが味は最高!
イワガキ刺身
さて、安いのにはわけがある。薄いだけではなく形が悪いのである。しゃくれているので普段よりもちょっとだけ時間をかけて開く。
開いてみると貝殻は薄っぺらいけど、軟体部分が薄いわけではない。
身ぜんたいがぷっくりと膨らんでいるし、口に頰張ると実にうま味豊かだ。この甘いだけではなく、うまいだけでもない味を表現するのは難しい。苦みやなんとなくだけど硫黄を嗅いだときのような風味がする。これらがイワガキ特有の味を生み出しているのだ。
たぶん、新上五島町にはもっと大振りで見た目のいいものがあると思う。上物も食ってみたいが、これだけうまければ、これでいいんじゃないと、貧乏なボクには思えてくる。
ちなみに合わせたのは山梨県、まるき葡萄酒ワイナリーの1升瓶の赤ロックである。イワガキには赤だって合う。
とうとう、なにひとつなすべきことをなさず、今年も6月が来てしまった。小雨、大雨、長雨のときをイワガキで乗り切ろうか。