シロダイは今が旬

東京では古くからの高級魚


フエフキダイ科メイチダイ属の魚は1955年以前はメイチダイだけが国内で知られていた。1960年代に急に種が増えるのは赤崎正人という魚類学者の功績に負うようである。本種は当時、魚類学的には沖縄県でしか見つかっていなかったようだ。
食用魚としては沖縄県の次には東京都で認知される。1980年代には東京都小笠原で水揚げされたものが築地にやってくるようになって高値をつけ始めたからだ。
1990年代後半に築地で初めて買ったとき、見た目にもこれといった特徴のない魚で、味も取り立ててうまいわけでもないのに高いのが不思議だった。
もちろんこれは小笠原から船で送られてくるために鮮度がそれほどいいとは言えないが、白身の少ない時代に嫌みのない味わいと歩留まりのよさ、使いやすさだけでの評価でしかなかったのだと思っている。
そこに鹿児島からシロダイが来るようになって、大型であることから一段上の高値をつけ始める。航空便なので鮮度が非常にいいためだ。
さて、八王子総合卸売協同組合、マル幸、クマゴロウが銭州から釣り上げてきたものは、釣り上げてすぐ締めて血抜きをしているために、鹿児島県産以上に鮮度がよい。三枚に下ろすと身(筋肉)が生きており、切った部分が盛り上がってくる。卵巣が膨らみ始めているものの、まだ小さいことからも明らかに旬真っ只中であることがわかる。

旬のシロダイはメイチダイに負けぬ味


本来、シロダイの刺身はやや単調な味だが、少し切りつけて食べてみて言葉を飲み込む。味に深みがあるのだ。明らかに伊豆諸島神津島南海域、銭州ではシロダイが最旬を迎えている。
単調な味だなんて言っていられないほど刺身の味は抜群というか、最上級の味わいだった。本種メイチダイ属の魚の特徴は活け締めにしてすぐに刺身にしても硬すぎないことだけど、食感があるのに少しもちっとしているのである。
以前、鹿児島県産を刺身にしたのは晩秋11月だ。それなりにおいしいとは思ったものの、やはり本種の旬は産卵を控えた晩春から夏にかけてだ。鹿児島県のシロダイも最旬のもので評価すべきだった。
今回の刺身はある意味、危険なほどうまい。この時季のシロダイは超高級魚となっても不思議ではない。
クマゴロウに「メイチダイじゃない、シロダイだぜ」なんて訳知り顔をしてみせたことを後悔する。
念のために焼霜造り(焼き切り)も作ってみたが、今なら素直に刺身すべきだと思う。



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