マスはマスだけどカラフトマス

サケの高騰を受けて少し値を上げている


知らなきゃ非常識という魚がある。以下標準和名(図鑑に載っている名前)で記すが、一般名があるときは「 」内に一般名、その中に( )で標準和名。「イワシ(マイワシ)」、サンマ、「アジ(マアジ)」、サワラ、「マグロ(メバチマグロ)」、「サバ(マサバ、ゴマサバ)」、「ウナギ(ニホンウナギ)」なんて挙げていくと、だいたい100種くらいになる。
大衆魚と言われる、もしくは言われていたものはアジ・サバ・サンマなど取り分け重要だけど、ここにサケがきて、サケ以上に安くておいしいのによく忘れられてしまう最重要魚がいる。「マス(カラフトマス)」だ。
小売店でマスを見つけると必ず買うことにしている。最近、おかない店が増えている気がするからだ。比較的見つける機会の多い山梨でまた1パック買って来た。
「マス」という言語は江戸末期くらいから混乱に次ぐ混乱の連続である。もし説明しようとしたら一日かかる、のでここでは述べない。サケ科の魚で海との繋がりが長いものはサケとしていいし、マスとしてもいい。言語的な決まりはないので、カラフトマスをサケといってもいいが、一般的には「マス」で売られている。ちなみにサケ科の魚に対して、サケ、マス、サーモン、トラウトはすべてOKだと思っている。規制をかけようとしても無駄だし、愚かだと思う。

塩マスは脂は少ないがサケ科の魚らしいうま味は十二分にある


最近ではサケが、サケがと言われるが、昔はそんなに身近な存在ではなかった。高級魚だったからだ。たしか1970年代くらいまでは非常に高価だったし、正月に食べたいテイのものだった。サケよりも日常的なものが「マス(カラフトマス)」、特に「塩マス」である。
東京都西部にある八王子は昔、魚屋が、山梨や奥多摩地方に「塩マス」を売りに行く、その拠点だったという。東京都内でも日常食べるのは「塩マス」で、たまに食べるのが「塩ザケ」だった可能性が高い。
報道を見ていてもいつの間にか「マス(カラフトマス)」は忘れられた存在になってやしないだろうか? 日本の基本となる魚100に入れたのはいいけれど、だれも「マス(カラフトマス)」の話をしないのが大不思議だ。
ちなみに「塩マス」をよく食べるのは東京都内よりも山梨県、長野県、もともとサケマスをよく食べていた東北、新潟県などだ。西日本に行っても比較的山間部でよく食べられている。
鬼は描けても犬は描けないという。ほんの数年前、野菜のマイスターかソムリエか知らんが、知ったぶりのオロカモノのバカが一般人にとって物珍しいものばかりを解説していたのを見ている。変わった食材を説明できるオロカモノは五萬といるが、平凡な魚を説明、生活を鑑みて話せる人は非常に少ない。
魚の世界にもマイスターだとか、ソムリエとかくだらねーのがいっぱいいるが、せめて地道な生活の場にある魚くらいは知って欲しいと思う。
マスはうまい魚なのである。ときどき食べようではないか。


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