4月1日 小田原魚市場 渉さんおすすめ、青アジのなめろう

小振りなのに太肉


神奈川県小田原市、小田原魚市場、江の安 日渉丸、渉さんたちの選別は至極ていねいである。選別された魚すべてが刺身になる。普通は雑魚として処理される青アジ(マルアジ)も渉さんの手にかかると予想外の上物になる。
マルアジは、マアジ(一般的なアジ)そっくりだが別属(同属とは同じ家族の血のつながりと思うといい。別属は別の家族だ)、ムロアジの仲間である。ムロアジ属の特徴は血合いが大きく、マアジほど脂がのらないところだ。ただし背の青い魚特有のうま味は、ときにマアジ以上でもある。
最近、マアジの旬が明確ではなくなっているが、マルアジはそれ以上に旬が不明確である。この時季なら確実という時季がない。
「なめろうがいいな。みそ多めでさ」
と渉さんが言うので今回は刺身ではなく「なめろう」にする。「青唐(青く辛い唐辛子)も入れたら」というので素直にやってみる。
持ち帰った青アジ(マルアジ)は16cmSL・60g前後である。小振りではあるが第1背鰭から後方がふっくらしている。

青アジのなめろうは端的にうまい


帰宅後急いで水洗い、頭を落として中骨沿いの血液をていねいにこそげる。
数本だけ残して、三枚に下ろして皮を剥いて食べたら、やたらにうまい。刺身方向に頭が少しだけ傾くけど、春なのでネギと冷凍保存しておいた昨年の青い唐辛子(三重県尾鷲市の虎の尾)でたたく。
ちなみに小田原には「なめろう」はなかった。もちろん「みそたたき」という言語があるわけでもなく、みそとたたくという料理法自体がなかったのだ。小田原のマアジを有名にしたのは1960年代後半の「アジのたたき」である。マアジの身を数ミリ角に切ってネギや青じそと一緒に和えるもので、しょうが醤油、わさび醤油で食べる。マアジの市場価値を変えたとさえされる歴史的な料理法でもある。
我が家の「なめろう」は切れすぎるくらいに切れる包丁でかなり執拗にたたきまくったもので、練り練りなものだ。これを箸でしゃくってはなめるように食べるので「なめろう」だけど、一なめがやたらにうまい。
3分の1は、なめろうそのままで食べ、3分の1は茶漬けにする。ともに青い唐辛子、虎の尾の辛味がやたらにいい。

〆の「さんが焼き」


この余韻のまま翌日は「さんが焼き」を作る。
「さんが焼き」は、「なめろう」を板などに乗せてたき火で焼いたのが最初とされる。これが徐々に家庭料理に変化して、最近ではソテーすることが多い。「さんが焼き」は千葉県のスーパーで市販されているがフライパンに油を敷き、ソテーしてくださいという説明までついていることがある。これではまるで魚のハンバーグである。
我が家では小型のパンに薄く油を敷き、平たくのばした「なめろう」を乗せて上火で焼く。ソテーするよりも出来上がりのときの香りがいい。
朝飯のつもりが朝ビールになる。


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