行者にんにくのために買うバカ

檀一雄でおぼえたギョウジャニンニク


終日デスクに向かっている。外出先は市場だけという日々だ。自分の生息域だけで花を見、風に春を感じている。まことに淋しい人生よ、と嘆きながら市場を歩いていたらギョウジャニンニクの値が少し落ち着いてきているではないか。
未だに天然ものは食べたことがない。当然自生しているのを見ていない。なんとか天然もののギョウジャニンニクを食べて見たいが、いつになるのかまったくわからない。今回の初ものも、あくまでも秋田県で栽培された温室育ちのギョウジャニンニクである。
今では比較的よく知られているこの山菜は、ボクの生まれた四国には自生しない。山菜として採取できるのは新潟県・福島県以北ではないかと思っている。
ボクがギョウジャニンニクという言語に初めて出くわした1970年前後、当時は知る人ぞ知るといったもので、山菜通だけのものだったのではないか。この頃、盛んにとりあげていたのは文化人では小説家の檀一雄だけだと思う。我ながら変な中学生、高校生で、愛読書が檀一雄の特集もあった雑誌『太陽』だった。図鑑にも載っていない上に、周りの大人に聞いても知っている人はいなかった。
一般的に八百屋などで売られるようになったのはいつ頃だろう。2000年以前であることは間違いないが、最初はとても高額で、ボクの初買いは新宿伊勢丹である。
今や、新年早々に都内やっちゃ場(青果市場)などに来る。ただし非常に高い。値を下げるのは2月後半になってからだ。

春の味


さて2月最後の日に八百角(八王子総合卸売センターの八百屋)で1パック買って、これが今季初買いである。大急ぎで魚屋にとってかえる。マル幸で殻ヤギ(活けのバカガイ)を2つ、3つ選び剥き身にして帰ってくる。
ギョウジャニンニクを買ったらバカを買うのはボクの鉄則である。あくまでもボクの個人的な考えだが、ギョウジャニンニクはバカガイにバカに合う。
ちなみにバカ、バカ、バカとぬたにして、飽いたらマグロに代える。これが毎年変わらぬ春の日常である。
バカガイは星(貝柱)も足も外套膜もすべて使う。軽く塩水でゆどうしして冷水に落とし、内臓と薄皮を取り、食べやすい大きさに切る。
ギョウジャニンニクは茎と葉の部分に切り分け、茎からゆでて葉を加えておか上げにし、団扇で扇ぐ。決して冷水に落とさない。食べやすい大きさに切る。
後は辛子酢みそ(市販のものでいい)で食べる直前に和えるだけ。
軽い味の吟醸酒を合わせた。ともに春らしい味なのである。


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