マダラのどんがら・じゃっぱ汁
「どんがら」・「がら」・「じゃっぱ」は魚のあらのこと
みそ味のどんがら汁
新潟県では魚のあら(中骨・腹骨の他、肝、白子、腹部の膜、腸などの内臓を含む)を「がら」、「どんがら」という。例えばサケの「がら」は中骨であったりする。新潟県で「たら」といえばスケトウダラなので、「たらのどんがら汁」、「たらのがら汁」はスケトウダラの汁となる。ちなみに新潟県以南はマダラも食べるけれど、どちらかというとスケトウダラ圏なのである
山形県で「どんがら」は魚のあら(内臓を含む)のことだが、主にマダラのあらを「どんがら」というようだ。当然、「どんがら汁」はマダラのあら汁のことになる。
秋田県ではあら(内臓を含む)を「じゃっぱ」、「ざっぱ」という。郷土料理店で食べたマダラの汁は「しょっつる仕立て」の「たら汁」であった。
青森県で魚のあら(内臓を含む)は県全域で「じゃっぱ」だと思っている。ただ県西部と東部では作り方がまったく違っている。津軽のみそ仕立て、下北の塩仕立てなどといい。濃厚で泥臭く体が芯から温まるのが津軽風、さっぱりして後味がいいのが下北風である。
どの県の汁も重要なのは肝(肝臓)、雄であれば白子である。肝が汁の味にこくを出し、肝の脂が汁の表面を覆うので、汁がいつまでも冷めないのだという。
写真は山形県庄内、鼠ヶ関の「どんがら汁」でみそ仕立て。
青森津軽・山形庄内・秋田のみそ仕立て
青森県津軽地方の「じゃっぱ汁」はマダラのあら(内臓を含む)を適当に切り、湯に入れて煮て、白子、肝を加えてみそを溶く。大根やニンジン、ゴボウなどを一緒に煮て、みそを溶く。肝が汁に溶け込んで非常に濃厚な味である。
秋田県でも青森県と同様のマダラのあらの汁を食べているが、「たら汁」であって、「じゃっぱ汁」、「ざっぱ汁」とは言わなかった。
山形県庄内地方の「どんがら汁」も青森県のものと作り方はほぼ同じである。庄内地方で食べたものは料理店のもので、比較的あっさりした味わいであった。ちなみに農水省のページには岩のりを入れるとある。これは一般的なものではなく、あれば入れる程度の話だ。農水省の低級さが見えてくる。もっと地域の料理を載せるなら勉強しなさいと言いたい。
新潟県にもみそ仕立ての「たら汁」はある。マダラを使ったものもあるが、主ににスケトウダラを使う。新潟県がマダラ・スケトウダラの圏境になると思っている。
下北半島の「じゃっぱ汁」は塩仕立て
下北半島は青森県ではあるが津軽藩ではなく、むつ市の方曰く、「南部藩の影響が強い」という。青森県では西部津軽地方の言葉は訛りが強く、とても聞き取れない。対するに下北半島はあまり訛りがない。
下北半島にも「じゃっぱ汁」があるが、塩仕立てである。しかも作り方からして洗練されている。新鮮なマダラのあらと白子、肝などは振り塩をして半日から1日寝かせる(時間などは様々だと思う)。これを湯引きして汁に使うために、汁が濁らない。昆布だしを使い味付けの基本が塩なので後味がよく「何杯でも食べられる」と漁師さんなどは言う。
ちなみに八戸市では「じゃっぱ」は「雑端」という意味合いで使われている。中でもソイ類や「あぶらこ(アイナメ)」、「どんこ(チゴダラ)」などの、磯などにいる売れない魚のことを「じゃっぱ魚」という。マダラを使った汁を「たらの三平汁」といい塩仕立てであるようだ。『聞き書 青森の食事 南部〈八戸〉の食事』