行政や専門家が未利用魚にしている、アイゴ
無知な人間がアイゴを見ると棘はあるし、臭いしと言う

さて、未利用魚、未利用魚と騒がしいが、未利用魚がわかっている人いるんだろうか。ということで、未利用魚の基礎知識を始める。ちなみに未利用魚の問題点は、魚をたくさん集めて、たくさん料理するなどして作りあげた巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。
当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないという現実も知るべきだ。
最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほどのバカ丸出しなことをいうヤカラまでいる。
また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。
本州以南、赤道を越えてオーストラリア沿岸までの広い生息域をもつ。
浅い沿岸域にいて海藻など植物でも、甲殻類や小魚などでも、なんでもかんでも食べる雑食性の魚である。
雑食性なのでやたらに腸管が長い。この長さが臭味の原因でもあり、珍味でもある。
尾鰭と胸鰭以外の鰭に強く鋭い棘があり、毒がある。刺されると、ボクの場合、9時間くらい苦しんだ。
海藻を食べるので、磯焼け(海藻がなくなり、石灰藻などがはびこる)の原因とも言われている。本当はアイゴが悪いのではなく、悪いのはヒトなのに可哀想な魚である。
沖縄以南、西太平洋ではときどき高値がつく魚でもある。人気があるので養殖の研究もしている。西日本各地で人知れず人気がある魚でもある。
沖縄の郷土料理、「まーす煮」など非常にうまいし、干ものなど絶品だと思う。基本的に魚類中もっともうまい魚でもある。
さてアイゴは未利用魚なのか? どうも行政と、未利用魚の専門家と言われている無知な人達が作り出している、わざわざ未利用魚にさせられた魚だ、と言っておきたい。
最初から臭味のことを出してくるが、この未利用魚に関わりを持つ人達よ、徹底的にアイゴを食べたことがあるんかい、と言いたい。
産卵期のアイゴは信じられないくらいいい加減な扱いをしても比較的臭味がないし、この夏のアイゴはとても脂がのっている。
手のひらサイズの若い個体は瀬戸内海の一部では高級魚なのだ。
アイゴを食べていない愚か者は未利用魚を語るなかれ。
実際に食ってみないことには始まりはしない

さて、2021年からアイゴを集中的に食べている。主に小田原産だが、日本各地からも送ってもらってもいる。
例えば2021年8月5日、神奈川県小田原魚市場、二宮定置の選別台の下に落ちていたアイゴを3尾ほどひろった。
「もっと持っていってくださいよ」と5尾追加して、計8尾、すべて野締めである。
ちなみにアイゴの場合、最初から臭い個体があるが、これはそんなに多いわけではない。
当然、触っただけで臭い個体は、今回の8尾には含まれない。
手に入れてから6時間後に棘を取り、内臓を除去しておく。すぐに第一回目の刺身の味見を始める。
産卵間近の個体もあるので脂は少ないものの強いうま味と、豊かな食感がある。食べたらびっくするに違いないおいしさである。
これを4日間にわたって食べてみたが臭味は出なかった。
水揚げ後すぐに食べたものはうま味と強い食感があった。時間とともに落ちたのは食感である。
野締めでも臭味のない個体は、内臓さえ抜けば流通できるのかも知れない。
減らしたかったら卵巣・精巣を食えばいい

ついでにいえば、すぐに抜いた卵巣・精巣が美味なのである。野締めでそのまま放置したものは卵巣・精巣にも臭味が移るが、すぐに出して塩漬けにするとやたらにおいしく、しかも保存がきく。
磯焼けの原因で、減らしたいなら産卵期の個体を食べなければならないが、本体以上に真子と白子がうまいということも知って置くべきだ。
臭いけど、すさまじくおいしいぜんまい

四国や九州で渦巻き型に巻いた腸管を煮つけて食べる「ぜんまい煮」がある。
非常に好き嫌いが出るものだが、臭味さえ気にしなければこれ以上の美味はないと思う。
このようにアイゴの利用は郷土料理や地方にもヒントが散らばっている。