ソウハチの刺身は新しい美味
大きな真子を抱えているのに身は締まって張りがある

3月上旬、富山県魚津市、田中智宏さん(好栄丸)からソウハチが届いた。
神経締めをし、胃洗浄をしており、血抜きは完璧といったものだった。
ソウハチガレイは、日本海や東北太平洋側から北にいるカレイで、消費地では鮮魚よりも干ものとして馴染み深いものである。
このカレイの刺身のおいしさは過去に島根県大田市、丸貴商店さんに教わって味だけは知っていた。ただし底曳きで揚がった野締めで鮮度はその場ではいいにしても、遠路、島根から帰り着いて食べたので、単なる味見でしかなかった。
また新潟県上越市でも食べた。かなり大きな衝撃を受けたが盛り合わせの中の二切れでしかない。
濃厚なうま味に満ち満ちているソウハチガレイの刺身

今回、初めて高鮮度化されたものを3日間に渡って刺身で食べてみた。
富山湾のソウハチガレイは産卵間近なので、本来身の旬ではなく、子持ちという状態での旬である。
宅配便で到着した当日は、産卵期なので食感こそベストではないが、非常に濃厚な味わいであった。強い味といってもいいだろう。
例えるなら超高級魚であるマコガレイとは違う、こくのある味と言った方がいいだろう。
干ものにしたとき生まれる独特の、くせのある風味がうま味として感じられている気がする。
おいしさが口の中で、長続きするけど嫌みがない。
縁側は他のカレイ類同様、ヒラメには及ばないが、やはり食感が心地よく脂が感じられ、美味である。
脂がないにも関わらず、おそるべき味わいといってもいいだろう。
漁をして3日目、4日目もうまい

翌日は漁を行った3日目に当たるではないかと思われる。
食感は前日以上に落ちているが、味は前日以上だった。
2日続けて肝を添えたが、肝自体があっさりと軽い味でいながら、あとから強い甘味とねっとりと下に張りつくうま味が感じられる。
喉に消える終いまでおいしさが続く。
思わず肝だけど食べてしまいそうになったが、肝醤油にして刺身を食べたが、これがいちばんの食べ方だなと思えた。
翌々日、肝は諦めたが、味は申し分のないものであった。
刺身のおいしさは、島根県、新潟県、富山県などなどの産地では知られているものの、消費地では手に入らないおいしさとは、まさにこれかも知れない。
カレイには産卵期の子持ち・白子持ちの旬と、夏が近づいての身(筋肉)の旬がある。
身の旬に食べるソウハチガレイの刺身はいかなるものだろう?
ソウハチガレイを高鮮度化したものは、消費地に来ても刺身でうまい。
これこそ新しい高級魚となり得るかも知れない。