中国産ホンアメリカイタヤの話

地球の反対側から養殖用の二枚貝を連れてくる中国


イタヤガイ科の二枚貝であるホタテガイのことは誰でも知っているだろう。
ホタテガイが一般的になったのは養殖されるようになってからだ。
それまで本州以南でもともと食べられていたイタヤガイ科の二枚貝はイタヤガイ、ヒオウギガイ、ツキヒガイ、アズマニシキ、アカザラガイなどなどで、どすべて水揚げ量は少ないし、一般的ではない。
今現在、イタヤガイ科で一般的な食用貝はホタテガイだけだ、と言えるだろう。

さて、それでは東京など関東周辺のスーパーに行って、イタヤガイ科の貝を探すとしよう。
もちろんホタテガイはすぐ見つかると思う。ただ、それ以上に目立つのは中国産イタヤ貝という小振りの貝柱だ。
業務用のスーパーなどでは至って普通の冷凍食材だし、一般的なスーパーでも荒天で不漁が続いているときなどには刺身として並んでいる。
しかも加工品がとても多彩で安いのである。
我がデータベースには2004年から画像があるので、もっと歴史は遡りそうである。
今や「イタヤ貝」は国内では、この国を原産地とするイタヤガイ以上に一般的だと思う。

ではこの中国産イタヤ貝とはいかなる生き物なのか?
日本で考えられた標準和名はホンアメリカイタヤという。
「ホン」とは当然「本」のことで、このあたり難しい話になるので避けるが、当然、単にアメリカイタヤというそっくりな二枚貝もいる。
両種とも北アメリカ大陸東岸のカナダ・アメリカ沿岸域にいる。
ホンアメリカイタヤの方が北に生息域を持つ。
もちろん国内に生息しているイタヤガイとは貝殻の形、大きさからして縁もゆかりもない。

韓国では活魚槽にうじゃうじゃ活かされている


なぜ中国産なの? と聞かれたら、養殖しているからだよ、というしかない。
その実体はわからないが、国内や韓国などでの流通量からしても半端な量ではない。
渤海・黄海周辺の山東省などで養殖されている、らしいとは輸入業者の方から教わったことだが、まだ確かめていない。
韓国の市場などには地物の貝以上にたくさん活けで売られている。
指さして買うと、いろんな料理となって運ばれてくる。

国内のスーパーでも、駅弁でも回転ずしでも


国内で、本種を食べたことのない人の方が少数派ではないか。
貝柱の直径1㎝足らずで、回転ずしや、お弁当、惣菜などあらゆる分野に侵入している。
ある日など、テレビのザッピング中にタレントらしき人が、本種がぎょうさん入っている駅弁をおいしそうに食べていた。
実際、イタヤガイ科の二枚貝はすべておいしく、当然、本種もなかなかの味である。
それにしても中国という国は、なんでもかんでも養殖してしまうという点では、この国以上に貪欲である。
末恐ろしい気がするが、いかがだろう?


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