小田原魚市場、締めて12時間後のヒラメの刺身
箱根颪の吹く小田原魚市場、寒のヒラメは身が分厚い

神奈川県小田原魚市場でヒラメを見ていたら、まさか買うんですか?(ボクの場合、買受人に競ってもらうということで、直に買うわけではない)と、何人かの買い受け人に意外そうに聞かれた。
「もちろん買います! 買います!」
たまには普通のおいしい魚だって「買います!」。
この日の小田原魚市場にはうまい魚が五万とあったけど、ボクが心底食べたいと思ったのはヒラメなのである。
というような話をした朝、競ってもらったのが体長42cm・1.1kgのヒラメである。
ぎりぎりヒラメといったサイズけど身に厚みがある。
それほど大きいわけではないが、エイヤ! と気合いを入れないと買えない値段に競り上がった。
持ち帰ってすぐに下ろそうと思ったら魚体が非常に柔らかい。
夕方になっても柔らかいのは死後硬直前だからだ。
下ろしにくいのをがんばって下ろす。
皮を引くときにも、刺身に切りつけるときにも、死んでもなお食われてたまるか、といった抵抗を感じ取る。
抵抗しながら身は硬く締まるのである。
皿に盛っても微かに刺身が動く

さて、ヒラメの締めたては、おいしいのか?
非常においしいのである。
寝かせたのと比べるといかがなりや?
個人的には締めたばかりが好きだ。
こればかりはうま味成分の量とかでは計れないと思っている。
もちろん活け締めで通常流通で来たものだってまずいわけじゃない。
普通に考えたらウマスギかも知れない。
でも包丁を引くのが大変だ、といった状態。
薄く切りつけてもなお、身が微かに動く状態のものが遙かにおいしいというか、ボク好みなのだ。
その上、この時季のヒラメにはヒラメ特有の脂がある。
このヒラメの脂を表現するのは至極難しい。
マグロ類のようなわかりやすい脂ではなく、口の中でとろけるのではなく、味にこく、味に膨らみをつけ加えてくれるといった脂なのである。
ちなみに味よりも食感のよさが、おいしいと感じさせる根源かも知れない。
味は呈味成分や脂だけから感じるものではなく、口の中にあるときの存在感(食感)からも感じられるのである。
ヒラメの場合、食感の方が、呈味成分や脂から感じるものよりもおいしいのかも知れぬ。
箸が進んで困るほどだが、数日間刺身で食べて、味の変化をみないといけない。
ウマスギの10乗ウマスギなので、箸を止めるのがつらい。
見事なヒラメを競り落としてくれた、さんの水産さんに感謝!
さんの水産
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