佐渡産小コショウダイの刺身
見た目が悪いのは文化包丁で引いたため、味は別格
1982年12月の新潟県新潟市は寒かった。浜辺から佐渡を眺めている内に気分が悪くなるくらいで、新潟県は北国だなと思ったものだ。
へんな話だが、同じ日に道路から噴水が出ているのに感動して、舟木一夫の映画、『北国の街』(1965)そのまんま、だなと思ったものだ。
北国であるはずの新潟県でも、今も昔も比較的気温・海水温が高いのが佐渡だ。新潟市の競り場で一番幅を利かせているのも佐渡ものである。
水揚げされたであろう2024年12月8日の佐渡は、雨で雪もちらつく日だったようだが、そんな佐渡からコショウダイがくるんだな、と思いながら刺身を食べる。
これがほぼ脂の塊といったもので、コショウダイらしく身が締まっているので室温で溶けるようなことはないが、舌の上で融解して甘い。
濃口醤油としょうがで食べても、醤油がきかない。
刺身の表面に脂の皮膜があって馴染まないのである。
脂だけではなく、コショウダイの独特の濃厚なうま味がある。
どことなくイシダイに近いけど、よりタイ科の魚に近い味かも知れぬ。
近所の米屋にもらった試供品、秋田県のサキホコレが、これまた実にうまいので、結局片身で2膳となる。
コショウダイはどんどん北上し、しかも冬が旬の魚になっていると考えている。
冬のコショウダイは値段からしても味からしても庶民の味方である。