2m SL ・4.7kg前後になる。非常に細長く断面は丸く、棒状。頭部は身体の3分の1ほどもある。全身が赤みを帯びる。背正中線上に鱗がある。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、触ると引っかかる。尾鰭の中央軟条が糸状に伸びる。
アカヤガラの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)




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魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トゲウオ亜系トゲウオ目ヨウジウオ亜目ヤガラ科ヤガラ属外国名
学名
Fistularia petimba Lacepède, 1803漢字・学名由来
漢字 赤矢柄、赤簳魚 Akayagara
由来・語源 簳(矢の棒状の長い部分)のように細長い魚で、赤いという意味。古くはアオヤガラ、アカヤガラは同種だと思われていたこともある。武井周作は『魚鑑』に〈王氏囊苑(王氏画苑)に戴帽魚(たいぼうぎょ)なりという〉。同〈ふゑふき綱目の鞘魚(せうぎょ)〉とも。
Synonym
Fistularia serrata Cuvier, 1816
Fistularia villosa Klunzinger, 1871Lacepède
Bernard Germain Lacepède(ベルナール・ジェルマン・ド・ラセペード 1756-1825 博物学者、音楽家。フランス)はビュフォン(Georges-Louis Leclerc de Buffon 博物学者。リンネとは違った配列を試みた)の後継者。
魚鑑
『魚かゞみ』(著者/武井周作、画/一勇斎国芳)。天保2年(1831年)。魚貝類の和漢書(事典)。武井周作は江戸日本橋長浜町の蘭方医で本草家。地方名・市場名
生息域
海水魚。沿岸〜沖合いの200mよりも浅場。
北海道・[岩手県宮古]〜九州の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、沖永良部島、沖縄。
東シナ海大陸棚域、台湾、福建省、広東省、インド・西太平洋域、ハワイ諸島、大西洋。生態
産卵期は冬〜春。
沖合のやや浅い岩礁域に生息。沖縄などではより深場。
小魚などを狙う肉食魚。基本情報
北海道〜九州、沖縄など日本各地で水揚げがある。特異な姿なので認知度も硬い。
関東などでは古くから椀ものなどに使われる上等な魚とされている。当然、割烹料理などに使われるもので、一般的に知られている魚ではない。
刺身、焼きものなども味がよよいが、歩留まりから考えると超高級魚といえる。
田中茂穂は「薬用となるとの評判が多い」と書くが意味は不明。水産基本情報
市場での評価 入荷は少ないが珍しいものではない。歩留まりが悪く、高級魚というよりも超高級魚といえそう。
漁法 釣り、定置網
主な産地 九州など選び方
赤味の強いもの。触って硬いもの。味わい
旬は秋から冬
比較的年間を通して味が落ちない。
鱗は皮と一体化して取れない。皮は薄いが硬い。頭部の骨は硬い。
やや赤みがかった白身で熱を通しても硬く締まらない。身離れがよい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
アカヤガラの料理法/汁(鍋、潮汁、みそ汁、吸もの)、煮る(煮つけ)、生食(刺身、焼き切り)、焼く(塩焼き、幽庵焼き)、揚げる(唐揚げ)クリックで閉じますヤガラの鍋
アカヤガラのちり 鱗がほとんど気にならず、水洗いしてそのまま使える。上質の白身で煮ると適度にしまり、甘味がある。皮や骨からうまいだしが出る。鍋ものにして美味な条件が総て揃っている。ここでは昆布だしに塩、酒で味つけして煮ながら食べる。アカヤガラ単味を味わいたいなら具は単純に。鍋として楽しみたいなら具だくさんに。
アカヤガラの潮汁 刺身などで残った中骨の部分(小型は単にぶつ切りにしても)を湯通しし、冷水に落としてぬめりなどを取る。水分をよくきり、昆布だしで煮だして酒、塩で味つけする。淡泊で上品な味の中に甘味とうま味が満ちている。身をせせり食べてもおいしい。クリックで閉じますヤガラの潮汁
アカヤガラの吸いもの 椀ものの種に使うと、上品な中に豊かな味わいがあってうまい。白身魚で椀種となるものでは最上級のものだろう。ここでは昆布だしに酒塩の地に身側から切れ目を入れ、別のつゆで開かせて椀に盛り、新しいつゆをそそいだ。クリックで閉じますヤガラのお吸い物
アカヤガラの煮つけ 大振りのアカヤガラの前半中骨の周辺を煮たもの。もちろん全身をぶつ切りにしてもいい。これを湯通しして冷水に落としてぬめりなどを流す。よく水分を切り、水(昆布だしでも)と酒・しょうゆ(酒・みりん・しょうゆでも単に塩味でもいい)味で煮る。煮ても硬く締まらず、あっさりしたなかに甘味がある。ゴボウ(魚の臭い消しにもなる)、焼きねぎ、うどなどと煮てもうまい。クリックで閉じますヤガラの煮つけ
アカヤガラの刺身 皮を引き薄作りにしたもの。厚切りにしてもいい。血合い、銀皮が美しく見た目にきれい。淡白ななかに旨味があり、脂の甘さも感じる。肝や胃袋もうまいのでゆでて添えるといい。クリックで閉じますヤガラの刺身
アカヤガラの焼き切り 3枚に下ろして腹骨や小骨を抜く。皮目をあぶり、急速冷凍の場所で冷ます。身が落ち着いたら適宜に切る。あぶり、氷水であら熱をとってもいい。皮目のうま味を楽しむもので、湯引きして肝や内臓も一緒に。クリックで閉じますヤガラの焼き切り
アカヤガラの塩焼き 頭部や尾に近い部分は小骨が多く、身が少ない。これに振り塩をしてじっくりと焼き上げる。皮目に独特の甘味をともなう香りがあり、うま味も強い。身は適度に繊維質で身離れがよく甘みがある。クリックで閉じますヤガラの塩焼き
アカヤガラの幽庵焼き 小振りのものを水洗いして、水分をよく切る。これを酒、みりん、しょうゆを同量合わせた地に数時間つけ込んで焼き上げたもの。みりんを多くして甘くしてもいい。気温によって漬け込み時間を変える。クリックで閉じますヤガラの祐庵焼き
好んで食べる地域・名物料理
日本各地関連コラム(郷土料理)
ねこや商店のヤガラのたたき
宮崎県油津、ねこや商店にいただいたものだが、なんどかまねて作ってみたがうまくいかなかった。 油津の海水につけて、たたいた(あぶる)ものだが、火の通し加減が難・・・ 続きを開く加工品・名産品
干物 三重県尾鷲市。岩田昭人さんから。釣り情報
沖合の岩場の上などでイサキやマアジ釣りをしていると釣れた魚を加えて上がってくる。もし専門に狙うならルアーや生き餌がいい。歴史・ことわざ・雑学など
薬 古くはアオヤガラとともに乾燥させて腎臓病や喘息(ぜんそく)の薬にされた。古乾物は子供の寝小便にきくとされた。〈膈噎(かくいつ 喉や胸のつまる病)を患っている人は、この魚の嘴を用いて飲食すれば治るという〉。寺島良安は実際にやったがきかなかったらしい。『和漢三才図会』
参考文献・協力
協力/勘網丸・大楠漁協(神奈川県横須賀市)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)