202506/26掲載
6月、若いカマスサワラの刺身、うめー、とぞ思いける
味もサワラでもないしハガツオでもカツオでもない

食べて感じることだけど、まことに不思議な魚としか言いようがない。
血合いの味はカツオなどに似ているのに、身の色はサワラやハガツオに似ている。
ぱきっと、はっきりした味がない。
大きな丸味のある味で少しだけ酸味がある。
茫洋として終いにキリリとした味であるといったらわかってもらえるだろうか。
昔、高知県宿毛市で大量に揚がった本種を前に、好きだという男性に会っている。
安い魚だし、人気があるわけでもないのに、ときどき無性に食べたくなるという。
久しぶりに食べると、それがわかる。
東京の地酒、四合瓶の澤ノ井 特別本醸造をば、グラスにいっぱいだけ。
売れない魚は漁師のおかずになるしかない

忘れていたので、改めて。
6月6日の神奈川県小田原魚市場、二宮定置で「おかず」を分けてもらってきた。
左側はきれいだけど、右側に問題ありのカマスサワラだ。
このような魚はまったく食べられないわけではないが、売り物にはならない。
漁師の「おかず」である。
カマスサワラは相模湾奥にはあまり多いとは言えない。
珍しくはないがたくさんまとまってとれることはない。
むしろ沖合い、黒潮の影響の強い海域に多い。
名前の通り、カマスのような顔をしたサワラのような姿の魚で、身はサワラに似ているが、ハガツオにも似ているし、カツオのような赤身を思わせる部分もある。
最初に和名を考えた世代の岸上鎌吉などは、カマスでもない、サワラでもないとカマスサワラ科を立てた。
知名度は非常に低い、これを知っていると一般人(消費者)としては達人だろう。
もちろん流通のプロにとっては、ありふれた魚だ。
一塊分けてもらって刺身にする。