これこそ平凡においしい、マダラの「たらちり」
東京ではもっとも基本的な鍋だ

40代の終わり頃、苦しみ抜いてそれまでの水産生物の知識を捨てた。
水産生物について何気なくつけていた順位も捨てる。
想像以上に苦しかったが、以後、水産生物が真っ平らに見られるようになった。
余談になるが、同じく以後、小うるさい文章、物言いに腹を抱えて笑えるようになる。通になったと自分で思ったとき、その人の食の人生は終わるのである。
マダラなど平凡だからという目で見ていたのが、その真価を見つめ直して、はじめてそのおいしさがわかった。
国内の漁業はタラをとることで進化したのだと考えているが、それほどにマダラはうまい。
しかも最近の生のフィレが非常によくなっているのだ。
塩蔵の塩分濃度が下がり、良質になったのも同様である。
マダラの切り身など他の魚と歩調を合わせるように高くなっているが、歩留まり100パーセントというところが素晴らしい。
さて、おいしい鍋汁の中で素直に煮えて、素直においしくなってくれるマダラの切り身がうまい。
今回は野菜も豆腐もたっぷりと用意したが、ほぼ総てを食べ尽くせた。
この上品で嫌みのない魚のどこにこんなにおいしいが詰まっているんだろう。
酒なしで凍頂烏龍茶で食べてもおいしいとは、まさに矢鱈にうまい。
生の半身は家庭でも使いやすいのでオススメ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に北海道根室市『永宝冷蔵』から「生ぶわ(マダラフィレ)」がきていた。片身0.63kgは我が家にはちょうどいい。
生ぶわも、塩蔵も大好きである。
だいたいマダラは味がいいし、いろんなものに使える。
これを持ち帰り、3分の1をちり鍋(水炊き)に、3分の1を西京漬けに、3分の1をフライにする。
「たらちり」は食べやすい大きさに切り、振り塩をして1時間くらい。
これをこのまま湯通しして冷水に落とし、表面のぬめりなどを流す。
水分を切り、煮干し・鰹節混合だし少々、昆布だしに酒・塩のつゆで煮ながら食べる。
たらの場合はだしがなければ、味の素でも、だしの素でもなんでもいいので、ひと味プラスするとおいしい。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。