202501/02掲載

「たらの粕汁」は後がいい

上越の人はスケトウダラの粕汁で冬の寒さをしのぐ


「たら汁」は日本各北陸以北、東北で作られているものだが。
青森県の「じゃっぱ汁」、秋田県の「たら汁」、山形県の「どんがら汁」などはマダラで作る。
新潟県以西は主に「たら(「すけそ」とも。スケトウダラ)」で作る。
塩味の汁、醤油味、みそ味などいろいろあるが、新潟県はなんだろう? と思っていたら、上越市では「粕汁」だという。

「粕汁」と初めて出合ったのは秋田県横手市だが、あまりにも塩辛いのでビックリして味がよくわからなかった。
以来粕汁とは長々と縁がなかった。
だいたいみそ汁に酒粕を入れる文化は、ボクの生まれた四国の町にはなかった。

実際、上越市内のスーパーに行くと、酒粕がたらの切り身の横に置いてある。
「ばら粕」というばらけた酒粕で、ちょうど手に取っていたバアチャンに作り方を聞いたら、最初に湯の中で酒粕を溶かしておくのがコツで、あとは「たらのみそ汁を作ればいい」のだという。

大根やニンジンを入れるといいと聞いたけど、やめた。
とにかく大量に作って正月を越そうと思ったのだ。
作りたてはみそと酒粕のせいで、ちょっと濃厚な味わいではあるが、さほど感心できる味ではなかった。
酒粕のアルコールが残っている気がして、少し煮込んでみたが、やはり味は平凡だった。
想像したよりは、うまい、といったところだ。

どこから見ても白いどろどろしたものにしか思えない


ところが翌日煮返すと断然、おいしくなっていた。
作って完全に冷めて、煮返すと、初めておいしくなるのかも知れぬ。
こんな御馳走を上越市の人達は日常的に食べているのだと思い、ちょっとだけ嫉妬してした。
スケトウダラからこんなにうま味豊かなだしがでるんだ、ということも、何度か煮返した身や皮が非常にうまい、ということもこの瞬間まで知らなかった。
しかも本当のおいしさは、終いにやって来た。
どろどろになった汁だ。
3日目の朝のスケトウダラもねぎも残っていない、ただのどろどろした汁の、あまりにもウマスギに、思わず踊ってしまいそうになる。

ここでふと気がついた。「鱈汁と雪道は後がいい」はスケトウダラの粕汁なんだと。

最初に粕を湯に溶かしておくことだけがコツ


新潟県上越市で買ってきたスケトウダラを水洗いして、適当に切る。
雄を選んだつもりが雌だった。
今回は汁ものなので、なんとか雄であってほしいと選んだのにハズレを引いたことになる。
これを適当に切る。
湯通しして氷水に落とし、表面のぬめりや汚れを落とす。
この行程は必須ではない。
昆布だしに、ばら粕を溶かしておく。
どろっとするくらいがいい。
切り身を昆布だしで煮て、どろっとさせた酒粕と、妙高市太田醸造のみそを加える。
少し煮込んでねぎを加える。
大根やにんじんを具に加えてもいい。

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スケトウダラのサムネイル写真
スケトウダラPollack海水魚。水深0-2000mの表層・中層域。北海道全沿岸、青森県〜和歌山県白浜の太平洋沿岸、青森県〜山口県の日本海沿岸。・・・・
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