鉄器で作る小イカのアヒージョ
あっちちといいながら食べるのは和の鍋料理と同じ
深夜に目が覚めてしまって、なんとなくアヒージョを作る。酒を飲みたかっただけだけど、空酒じゃ困ると言った感じだが、ここにバゲットがあったのを気づかなかったのか、気づかないふりをしたのか。
熱々のオリーブオイルと一緒に少しずつ食べ食べ、本当は料理用に買っておいたジンをロックでやる。
明らかに100度近い油の温度が急激に低下したと言っても、アチチといいながら食べて、ジンで冷やす。
もう何十年も作っている料理だが、こんなに簡単で、こんなにうまい料理はない、なんて思う。
問題は深夜なのだからバゲットはよせ、と自分に言い聞かせたのに、ダメだったことだ。
やはりアヒージョは油を食べる料理だと思う。
要するにウルトラ簡単だけれも作れる料理
さて、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産と八王子綜合卸売センター福泉に同じ荷があった。石巻からきたバライカ(スルメイカの若い個体)で、なんと水氷(塩水に氷を入れたものの中に魚介類を泳がせたもの)だった。イカの水氷はとても珍しい。
いきなりアヒージョだと思った。
アヒージョは若い頃、決まった就職先に行きもせず、編集技術の専門家というか、今どきのフリーターになって、じょじょに仕事の範囲やクライアントが増えていく。
東京神田神保町から須田町まで仕事先が増え、やがて旧やっちゃ場のそばにあったところにも通い始める。その会社の前のパブの走りのような店で、初めてアヒージョという名の料理を食べた。
それは単に小型のフライパンでエビをソテーしただけのもので、フライパンのまま来たのが目新しかった。
やがて仲間がスペインに行き、雑誌『専門料理』にも作り方が載り、これがアヒージョだというイメージが出来た。
意外にアヒージョを知ったのは新しく。1990年代ではなかったか?
要する時間は10分以下。
小イカを下ろし、げそと胴に分けて、布巾にくるんで冷蔵庫に寝かせる。
ここまでは予めやっておく。
胴の部分を取りだし、適当に切る。
スペインだとカスエラという陶器の耐熱の器を使うのだけど、あんなに使いにくいもの使う気にはなれないので、南部鉄器を出してくる。
もちろん小型でもフライパンで作ってはいかんと思う。
小イカとにんにく、青唐辛子を入れ、オリーブオイルを注いで振り塩をし、強火で一気に火を通す。
鉄器の中で油が沸き立って、火が入りそうで危険、というときにジンをティースプーン1パイ投入してお終い。