根室旅2 いきなり釣れてビックリしたなもー
今旅もまた、あまりにも詰め込みすぎて、寸暇がなかった。根室半島と東梅(温根沼大橋の西側)を右往左往し、また市内のスーパー、魚屋を踏破した。
やっと時間が出来たので、念願の竿を出すことができた。
ボクは日本全国を股にかけ釣りまくる、さすらいの防波堤釣り師なのだ。
仕掛けは北海道中標津で買った片天秤のカレイ仕掛けで、錘は15号だと思うが数字がつぶれていて見えない。エサはアオイソメだ。
釣り師お勧めの堤防には作業車がとまっていたので、港内奥まったところで釣り始めた。せわしなく仕掛けを作り、波ひとつない堤防のきわに落とすと目分量で水深1.5mくらいしかない。
こーりゃ浅すぎてダメだと水くみをしていたら、ぴんと張っていたテグスがゆるんで竿が跳ね上がっている。
潮がとまっているのかな、と、まわりに落としてしまった仕掛けの紙や、ついでに誰かが捨てていった仕掛けの袋とテグスを拾う。
ついでにセイコーマートで買ったお握りをぱくぱくやっていたら、今度は竿が沈んでいるように見える。
しとしとと朝から降り続いていた雨が上がり、風が止まり凍えるように寒かったのが少しゆるんだのは奇跡だ。
またまた竿先が跳ね上がったが、この竿の動きからするとアマモでも引っかかっているに違いない。
車まで飲み物を取りに行って、ついでに竿を上げたら、実に重い。ゴミでもひっかけたのかなと思ったら、シュークリームのようなものが仕掛けにしがみついていて、わやわやと何かが動いている。えいやっと堤防に跳ね上げたら、やはりシュークリームのような物体で、よくよく見るとクリガニであろうカニである。まあまあ大きい。クリガニが釣れるとは幸先がいい。
じっとしていたのでつかまえようとしたら、いきなり横にするすると堤防を走って海に落ちていった。
なんてこったい! カニさんカニさん、どこいくんじゃい?
緊張感に欠けていたボクは思わず曇り空を見た。
つづいてカジカがいそうなヘチを狙うがまったくアタリがない。
こんどは澪に投げた。水深が浅いので糸ふけをとっていたら、いきなりアタリがきた。なんと30年近く探していた、カレイそのものみたいなカレイだった。
こんなにラッキーでいいのだろうか? 小振りなのにエサを2つとも飲み込んでいるところからして、よほど腹をすかしていたに違いない。
この1尾で仕掛けを1つ失う。
また同じ澪に投げると今度はカジカが来た。カジカは検索がないと同定不能なので、可哀想だけど持ち帰ることにする。
つぎにもカジカが来たところをみると、澪のこちら側にカジカの群れがいるのかも知れない。
こんどは少し遠くに投げ糸ふけをとっていたらいきなり大きな当たりがきて、やたらに重いし、ぐんぐんと竿を持って行かれそうになる。
なんと全長25cm前後のカレイのダブルで、これまた本命そのものである。
完全にハリを飲み込んでいて、2つめの仕掛けを失う。
仕掛けをかえて違う方向に投げたら根掛かりをして、これにて3つめの仕掛けを失った。
目的を果たしたといっても、どうにももの足りないので最後の仕掛けを投げたら小カジカがきて、遠くに投げたらカレイが来た。
正味、1時間半でカレイ4、カジカ2、小カジカ1であった。
帰宅後、同定したらカレイは目的のトウガレイ、カジカはシモフリカジカの若い個体だった。思わずうれし涙にくれる。
かれこれ40年近く前に北海道を旅していて、カレイ類の多彩さに驚いた。フィルムのとき、魚の撮影でいちばん苦しんだのもカレイだった。
あまりの難しさに、この国で最初に魚の撮影に取り組んだ益田一さんらの偉大さを痛感した。
デジタルカメラになってからカレイ類の撮影が容易になるが益田一さんたちは、デジタル以前なのだ。
撮影した種の画像はどんどん増えていく。基本的に食用となるものだけでいいのだけれど、重要なもので手に入れていないものがいまだに少なくない。入手困難だと思われる種も、じょじょに撮影を終えていく内、いちばん簡単だと思っていたトウガレイが一向に手に入らなかった。
札幌中央市場で、「そのへんでいくらでも釣れますよ」と教わってからも16年の年月を費やしている。
このまずいと評判のカレイの味はいかに、というのも大きな課題であった。
根室の釣りは大成功だった。