庶民的だが、ちょっと贅沢なアカガレイ

身体も大きければ口も大きい北の海のカレイ

アカガレイ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に釧路産の美しいアカガレイがあって、思わず買ってしまった。1㎏以上あり、アカガレイとしてはやや高値だ。
ここ数年、魚種全般の魚価がぐんと上昇している。カレイ類が比較的高騰していないのは、目立たない姿だからだろう。
最近、テレビタレントとか、大げさなことを言うことで生活しているその道の通みたいな人が高級魚や変わった魚にだけ飛びつくのはいいとして、普通の人が普通の魚に関心がなく、比較的マスコミで取りあげられる機会の多い魚ばっかりに目が行くのは情けないと思う。
平凡な魚はケ(普段)の日に、珍しい魚・高級魚はハレの日(特別な日に)にということをお忘れなく。
普通の魚の代表格、アカガレイは、東北との繋がりが強い東京では昔から好んで食べられていて、馴染み深い魚である。
庶民的なカレイの中では少しだけお高く、ちょっと贅沢といった存在である。
もちろん、あくまでも平凡なカレイの中での話で、安い価格帯のアサバガレイ、黒ガレイ類(クロガシラガレイ、クロガレイ)、マガレイよりも高い、という意味である。
この冬から夏にかけては、この底辺にあるカレイが非常に重要であり、その上にあるのが産卵期のマコガレイ、アカガレイ、そしてその上の価格帯のババガレイ(関東ではナメタ)である。
ただ、カレイに種類があることを認識している人は、この国に住む人のほんの数パーセントでしかない。ほとんどの人がカレイに高い安いがあることなども、ぼんやりとしかわかっていないだろう。普通の、日常的なカレイがわかる人は、今どきの言葉を借りれば激レアといってもいい。
自然には決して優しくないサーモン(タイセイヨウサケ、サーモントラウト)や変なグルメをきどるくらいなら、少しずつでいいので、カレイ類の名前くらいはおぼえて欲しいものだ。
さて、ここ数年の魚価高騰はカレイ類にも及び始めている。さぞや漁師さんや産地の人は儲かっているのだろう、というとそんなことはない。とれる魚の総量が減っているので、産地でも困っているのである。

煮つけを実際に食べてまずいという人はめったにいない

アカガレイの煮つけ

さて、東京都民は昔からアカガレイが好きであった。嫌みがなくしかも味のある魚だからだ。基本的な料理法は煮つけである。
最近、煮つけが作れない人が増えているようだ。
知り合いの魚屋でも煮つけたものは売れるけど、自宅で煮つける人は減少の一途をたどっているという。
アカガレイの煮つけはそんなに難しくない。
水洗いして切り身にする(ここまでは魚屋でやってくれる)。肝があれば非常においしいので取り分けて置く。
大口で歯が鋭いので要注意。一日に大量に魚を下ろす魚屋で、意外に危ないのがアカガレイという人がいる。
これを湯通しして、冷水に取り表面のぬめりを流す(必ずしも必要はないが、そのまま煮つけると煮汁が濁り、アクが大量に出る)。水分をよくきる。
鍋に水を沸かし、酒・みりん、、ショウガの薄切りを加えて、魚の切り身を入れる。
沸騰した中で入れると危険だというなら冷たい状態から入れてもいい。
酒・みりん(場合によっては砂糖を加える。甘さはお好みで)は先に入れてもいいが、調味料の中でも醤油は最初控えめにいちばん後に入れる。
あとは煮るだけだけど、やや強火で煮汁が切り身を覆い尽くすように煮るか、落とし蓋をするといい。
意外に鍋の大きさが重要で、切り身がすっぽり入って、少し空きがでるくらいの大きさのものがいい。大きすぎる鍋は煮汁が多く必要で、しかもおいしい煮つけが作れない。
七割方煮えたら、肝があるときは加える。カレイの肝は煮すぎるとおいしくない。
加減をみて醤油を2、3回に分けて加える。
これも好みの問題だが、最後に甘みであるみりんを追加すると照りが出て、甘みが強くなる。
身を、皮を、煮汁にからめて、白飯の上にのせて食べたが、もう息苦しいほどにうまい。
まるで魔法のように白飯が消滅する。
ちなみに庶民的なアカガレイの中にも、福井県産などでは高鮮度化して生食できるものが出て来ていることも忘れてもいけない。
贅沢するときは贅沢する。アカガレイの刺身は非常にうましで一度食べてみて欲しい。


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