近所のスーパーでオオニベ刺身用を買う

いつの間にかオオニベは都内では普通の魚になっている


東京都内多摩地区、我が家の近所のスーパーに高知県産オオニベが丸ごとどでーんと飾られ、刺身用の柵が特売されていた。特売なので至極安い。
オオニベはニベ科の中でも最大級の魚であるといってもわからないと思う。東京湾などでもたくさん釣れる、イシモチ(シログチ)に近い魚であり、西太平洋ではこのニベ科の魚たちは重要な食用魚であるとおぼえていてもらえるといいかも。
東京湾のシログチがせいぜい全長30cm弱なのに1mを越える巨大魚で、大物釣り師の憧れの存在でもある。
1980年代オオニベを築地場内で見つけたときはうれしかったが、8㎏以上あって、とても手が出なかった。21世紀になり築地の大手荷受け、大都魚類の競り場に大量の箱が置かれていて、すべて宮崎県で養殖されたものだった。宮崎県は当時、オオニベの養殖で有名だったはずである。
当時、生息域内ではあるが、相模湾ではほとんど見られなかった。駿河湾にもいたとは思えない。個人的には、もっぱら九州から来る魚と思い込んでいた。
それが今や、相模湾でもいたって普通の魚になっている。本種が相模湾で珍しい魚でなくなったのは2010年前後からだと思う。2023年現在、大きな個体が普通に見られる。
宮城県気仙沼でも揚がっていて、温暖化で北上し、水揚げが増えた魚のひとつである。


お隣の韓国とこの国の、魚に対する価値観・考え方の違いは、ニベ科の魚に如実に見いだせる。韓国では魚の価値を刺身中心には考えない。国内では安すぎる魚である、シログチの値段を韓国の市場で聞くと、手持ちのウオンでは買さえもある。
今やオオニベは日本各地のスーパーで刺身用として売られているが、できれば和で考えず、フライにでもムニエルにでも使ってみてはと思う。またやけに淡泊な魚なので、刺身の食べ方も韓国にならって辛味やごま油を使ってみるべきである。
さて、今回の柵は刺身にしても悪くないな、といった鮮度だった。普段ならフライにでもしたいところだが、今回は刺身にしてみよう、と考えて切りつけた。


切りつけると見た目はいいし、食指が動く人も多いと思う。
ただ、やはりオオニベの刺身の味はまずくはないが、単調である。


これを国内の離島風に酢・醤油・一味唐辛子で食べてみる。
これなら十二分にイケルと思う。酢みそもありだろう。


韓国風にごま油・塩(コチュジャンや唐辛子を加えてもいい)などは、単調な味わいだからこそ合うのだと思う。
個人的にはオオニベの刺身は和ではなく、自由な発想で、一工夫が必要だと考えている。


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