カイワリは鉄板うまい

可愛い顔して、濃厚なうまさを誇る

カイワリ

知り合いに趣味は競馬・競輪・競艇という人がいる。ときどき「テッパン」とという言語を使う。レースの予想に関することで、確実にとれる、という意味らしい。「鉄板」は女性誌でもよく使われる言語である。「鉄板コーデ」などという使われ方をするが、隙のない完璧なコーディネートという意味だ。「テッパン」、「鉄板」は確実に、手堅い、外れようがない、という意味だ。
それでは魚界の鉄板的存在とはなにか? カイワリではないだろうか? 他の魚はどんなに高い魚でも大小や、季節や漁獲方法によって当たり外れはある。その点、カイワリは絶対に存在しないとされる4割バッターのような、特殊な存在ではないかと思う。
手のひらサイズでもいい味をしているし、かなりいじめ抜いた漁獲方法で揚げてもそこそこにおいしいし、季節による変化もさほど大きくない。
ちなみに海水魚の勉強は学生時代で、図鑑を丸暗記することから始めたので、個々の魚に関してはなにも知らなかった。初めて本種のことを心に明記したのは、下世話な話だけど、大橋巨泉のイレブンフィッシングでの、「こんなにうまい魚はない」だった。大橋巨泉は伊東に住んでいたこともあって、本種をよく知っていたのだと思う。
アジ科の中では珍しく浅場に来るのは稚魚期くらいで、成魚は沖合いの水深100m前後にいる。
近所の鮹さん(岩崎薫さん)が通っているのは相模湾をのぞむ伊豆半島東岸の漁港であり、当たり前だけど釣り場は相模湾である。いつもは本命ではなく、あまり人気のない、釣り人をして外道とされる魚を分けてもらうのだけど、カイワリだけは本命ながらいただくことが多い。
今回もいろいろ持って来てくれたなかに、カイワリが入っていたので、思わず頬が緩む。うれしいが顔に出ていた気がする。
同じカイワリながら、とりわけ相模湾のカイワリは特別うまい気がする。特に蛸さんの持って来てくれるカイワリは釣って半日以下なので、鮮度の問題もあって抜群にうまい。
ちなみにカイワリの競り値が国内でいちばん高いのも小田原魚市場をはじめとする相模湾周辺である。
今回の個体は全長22cm・重さ200gである。カイワリはこれで大人である。

味は万華鏡のようにいろいろな味が混ざりきらめく


迷わず、その日の内に刺身で、深夜酒の肴にする。
片身は焼霜、片身は単に刺身にして、変化をも楽しむ。
おいしさをどう表現するといいのだろう。
カイワリはマアジよりもより、味は白身魚に近く、脂は青魚特有の濃厚さがある。
アジ科ならでは、あぶった皮が濃厚な味わいであるのもうれしい。
とっておきの宮城県栗原市の「綿屋」を開ける。今日から正一合解禁!
蛸さんに感謝!


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