日本海産バライカで秋祭の味

バライカはまだ若いスルメイカのこと


ボクの周りには奥多摩出身の方が多い。現在も暮らしている人、都会(八王子)に出て来た人などさまざまだ。今でこそ奥多摩は観光地だけど、古くは山奥のまた奥であった。
奥多摩は東京都の方はともかく、全国的にみると非常にマイナーな地域だと思っているので説明しておきたい。東京都の西、山梨県に接する地域である。厳密に言うと青梅市とあきる野市から西の山間部だと考えている。
東京檜原村はときどき生き物を見に出掛けていたところ。ここで様々な人に話を聞いた。マタタビの酒(薬)のこと、イタドリを食べていたらしいことや、山菜などの保存方法・塩抜き、木の皮は薬だとか、クマの話、祭のとき八王子まで2日かけて歩いたこと、学徒動員で始めて電車に乗ったことなどなどだ。
市場にも檜原生まれの方がいて、秋祭に「いかと里芋」を作ったと教わっている。実に素朴なイカと里芋だけの煮物である。これが八王子にくるとにんじんやゴボウが加わり、こんにゃくを入れたりする。
念のために、里芋とイカを煮合わせる料理は日本全国にあると思う。ボクは上京して始めて江戸川区小岩という下町で食べたが、たぶん東京都ではありふれたものだろう。
檜原村では古くは塩イカ(長野県とは違って開いて塩漬けにしたもので、今も手に入る)を使ったようだが、戦後(1945年)になって生のイカを使うようになったという。
八王子綜合協同卸売組合、マル幸に日本海産のバライカ(スルメイカの若い個体)があった。昔はありふれた存在であったが、スルメイカの急激な減少を受けて最近では貴重なものとなっている。思ったよりも安かったが、それでも昔と比べると、と思わずにはいられない値段である。

東京でおいしい里芋を探すのは至難


八百角に土垂れがあって、少々大きすぎるが買った。最近、豊洲などで里芋を探すと上物であることはわかるが、法外な値であることが多い。京都中央市場に比較的安くていいものがあるのは、里芋が西高東低だからかも知れない。関東では群馬県沼田市や神奈川県秦野市にいいものがあるが遠すぎる。

地味で地味で地味な茶色一食の料理


帰宅するとまず里芋を濡らさないで泥を布などで拭き取り、皮を剥く。適当に切り、ざっと水洗いして塩もみしてザルに上げておく。
これをことこと下煮する。
イカはげそを抜き、ワタを出して、胴(外套膜)の部分だけを使う。
輪切りにする。
下煮した里芋は冷水に落とし、さらに表面のぬめを洗い。ザルに上げておく。
酒・砂糖・醤油・水を煮立たせた中に、イカと下煮した里芋を入れて絡めるように煮上げていく。
煮汁が少なくなってきたら追いみりんをして、一煮立ちしたら出来上がりだ。
できれば稲荷ずし(徳島県ではきつねずし)が欲しいけど、白飯の友とする。甘辛い味がご飯にあう。
ちなみに里芋(じゃがいもも同じ)のほっくりした風味がなぜか飯と好相性なのだ。もちろんイカのうま味を吸ったからこそだけど、ついつい先に里芋を食い尽くすのがボクの癖(へき)である。


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