羅臼産ブリの旬は梅雨時から始まる

オホーツク海、夏のブリはウマスギ


6月末、北海道羅臼町の定置網に、時鮭(トキシラズ/サケ)が入っているのは当たり前だけど、10㎏以上のブリがそれ以上に入っていたのには驚かされた。
2009年の秋口、北海道から「見たことのない魚がとれました」と連絡が来て14年、いつの間にか北海道は、ブリ最大の産地になっている。ただブリがとれる時季が想像以上に早すぎないかと、不安がよぎる
羅臼旅からもどって半月。なんとその羅臼産が八王子綜合卸売協同組合に来ていた。8㎏なのでブリとしてはぎりぎりだし、少々痩せているが、マル幸、クマゴロウ曰く100パーセントブリ、しかも上物だという。ちなみに最近の傾向では、8㎏級は関東の市場においては立派なブリである。
さて、どんなに上物でも7月のブリは安い。撮影したいのもあり、丸々、1尾買ってきた。不思議なことに痩せているのに体表に脂が感じられるのである。
ちなみに7月のブリといてば「がりごり」とか「ごりごり」とか言われる。脂が抜けて身が痩せ、硬くなって非常にまずいのだ。鹿児島県など、初夏にまとまって揚がる地域では、抱卵個体はある程度の値で売れるが産卵したら商品価値はゼロになる。
根室海峡で揚がるブリは索餌回遊で、北の海で獲物をむさぼり食っているのだと思う。産卵回遊のブリはなんどか食べたことはあるが、産卵後エサをむさぼるために北上したブリは食べたことがない。

若くないととても食べられない大振りの刺身


下ろしてみたら、痩せているのに脂がやたらにのっていたのである。何を食べているのか? 北海道水試の『水試だより106』に8、9月はイカナゴが主で、9月、10月にはカタクチイワシが主とある。イカナゴ(ちりめんやくぎ煮になるサイズではなく20cm近い成魚)は脂が豊かなので、振りの体に脂が満ちるのも早そうである。しかも日本海よりもオホーツク海の方が遙かにエサが豊富らしい。
ちょうど小樽などからワラササイズが入荷を見ているが、流通のプロ達は北海道水試の調査結果通りの値をつけている。
それにしても7月のブリは安い。安いのに12月の日本海ものと比べても、それほど劣っているとは思えないのだから、オホーツク海は不思議な海域である。
この羅臼沖のブリが来春には相模湾に南下して来るのだろう。だから最近の小田原ブリがおいしいのだと考えたが、いかがだろう。

刺身は小振りに切ってちょうどいい


さて、羅臼産ブリの刺身は背と腹にわけて普通に大振りの刺身にすると食い切れなかった。ボクの年齢からすると脂が強すぎるのである。4等分して小振りな刺身にしてちょうどよかったし、やたらにおいしかった。
こんなにうまいブリが7月に食べられるなんて、温暖化を嘆いてばかりいられない気がしてきた。
それにしても7月から脂がのっている羅臼ブリ、これからどうなるんだろう? 昨年は晩秋まで北海道でブリが揚がっていた。ブリの旬は急激に変化していると思う。


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