泉州玉ねぎが出たら、鱧も出る

今季初ハモは佐島産


八王子総合卸売協同組合、マル幸に小振りのハモが来ていた。それだけなら通り過ぎるのだが、なんと相模湾三浦半島にある神奈川県佐島産なのである。
漁法がわからない。定置網、刺網であるはずもなく、延縄だろうと考え、今度聞いてみようと思って買い求める。
というとで、今季初ハモは佐島産とあいなる。まだ卵巣は未熟で、脂ののりは今ひとつながら初物としては上々だった。

玉ねぎはうんと入れるべし


大阪市野田の大蒲水産加工業協同組合でハモの話を聞いたことがある。そこで初めて聞いた言葉が「泉州玉ねぎが出たら、鱧も出る」だ。泉州は大阪府の南西部、堺から泉佐野周辺のこと。ここの名産がハモと玉ねぎで、晩春から初夏にかけて玉ねぎの初物が出始めるときに、玉ねぎと相性のいいハモの漁が始まる(とれはじめる)という意味だ。
出始めの玉ねぎとハモで作るのが醤油仕立ての鍋だ。同じ野田、中央市場で聞いたら、夕食でもあり、翌日のおかずでもあったのが、ハモのすき焼き、すなわち「はもすき」だったらしい。
醤油仕立てのハモの鍋ものは大阪だけではなく、淡路島でも食べられている。ハモ漁のある沼島でいただいたものは、実に味わい深く。そして家庭的な料理である。このハモ漁の時季に淡路島に行くなら、ぜひ食べて頂きたい鍋でもある。
兵庫県と言えばこのハモを使った鍋が灰谷健次郎の短編にもあったと思うが、わがブラックホールのような本の山から出てこないので、引用できない。
ちょうど八百屋に新玉ねぎが出ていたので、今季初ハモで今季初「はもすき」を作る。
まずハモを下ろして骨切りをして、湯通しして冷水に落として霜降りにする。この工程は必ずしもやらなくてもいい。
割り下は、醤油1・酒1・みりん1を合わせて、水で適宜に薄め加減したもの。砂糖を入れるとご飯に合う。
野菜は玉ねぎと大葉春菊、糸こんにゃくを使う。
まずは鍋に玉ねぎを大量に入れて、ハモを上に乗せて割り下で煮始める。煮えてきたら糸こんにゃくとか春菊を加えて、あとは食べるだけだ。
割り下の甘味と玉ねぎの甘味がやたらにハモに合う。玉ねぎはこんなに食べられるのだろうか? と思うほど入れるのかコツ。

翌日の朝ご飯も楽しみ


「はもすき」は当日もいいが翌日はもっといいのだ。食べきらないでせっかく残したものの。朝ご飯に食べて撮影し忘れてしまった。
考えてみると去年の初「はもすき」で残ったのは玉ねぎだけだった。念のために昨年の朝ご飯を載せておく。
蛇足だけど、今年も初ハモは、腹開きにするべきところを、無意識に背開きにしてしまった。穴子(マアナゴ)に馴れているので、ついついやってしまう毎年恒例の失敗である。2尾目からは腹開きにするつもり。


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