芝海老のかき揚げ

江戸前のかき揚げ

シバエビのかき揚げ

春めいてきた。今季、シバエビもそろそろ終わりかなと思う。別に冬季限定のエビではないが、3月になると「名残の」という言葉がつく。
晩春から初夏から初秋に産卵期を迎え、寿命1年の親エビは死ぬ。産卵期が長いので大小はあるものの、関東の市場には日本各地から比較的長い期間入荷してくる。
標準和名、シバエビは「芝海老」であり、江戸(東京)の芝(現在山手線の三田駅付近)でたくさん揚がったのでついた名である。江戸時代には江戸湾で盛んに打瀬網(風力による底曳き網)が行われていた。江戸湾では様々なエビが様々な漁法で漁獲されていたが、もっともたくさん揚がったのが打瀬網でとっていたシバエビであったはずだ。
今、江戸前シバエビは壊滅状態だと思う。豊洲市場などに並ぶのは愛知県三河湾、三重県伊勢湾、九州福岡、熊本、佐賀の3県が目立つ。このエビは比較的広い内湾で環境破壊が進んでいないところでしかとれないのだ。
江戸前天ぷらのかき揚げ種(たね)では、一に小柱(バカガイの貝柱)、二にシバエビ、三にイカと店の格、値段が下がる。高級天ぷら専門店では基本小柱で、なければシバエビでもいいが、イカは決して使わないはずだ。
かき揚げは俳句の季語ではないが、あえてというと早春ではないかと考えている。早春2月に2つが揃い踏みする。
3月の声を聞いたばかりではまだ小柱は高い。名残のシバエビでかき揚げを作る。荷を見ても産地はわからなかったが、愛知県三河産ではないかと思う。
剥き身にして水分をよくきる。
冷たい水に卵黄を溶かし、冷やした小麦粉を入れて衣を作る。
剥き身に糸三つ葉を合わせたものに小麦粉をからませ、衣を加えて高めの油で揚げる。
三つ葉は江戸前天ぷらでは邪道だが、エビの風味に糸三つ葉の香りが合う。これでぬる燗と生きたいところだが、素直に飯の友とする。
エビの甘みと独特の食感が、飯泥棒と化す。


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