コラム「滋賀県米原市『やまに料理店』のハス料理」

ハス料理を専門とする料理店はここだけ


湖東天野川ほとりに世継ぎという不思議な名の集落がある。天野川河口域は昔からハスの宝庫で、その昔「ハス料理」を名物にする料亭が軒を並べていたという。そして今に残るのはたった一軒のみ。それが『やまに料理店』である。江戸時代には二条城に魚を納めていて、そこから山に二条城の「二」をいただいたものだとのこと。2008年で9代目、10代目とともに店を営んでいる。ちなみに京料理の根源は日本海からの塩乾魚貝類と滋賀県琵琶湖の湖魚である。
大型のハスを料理するのはとても難しい。湖魚を扱う店で買い求め、いざ料理しても小骨が多いこともあってなかなか上手に料れないのだ。この難敵を見事に提供しているのが、『やまに料理店』である。
滋賀県琵琶湖周辺でもハスの成魚の水揚げはあり、鮮魚は手に入るものの、提供している料理店はほぼないのではないかと思っている。この貴重な「ハス料理」を末永く継承していただきたいものである。

初夏、生きている雌でしか作れない「車切り」


7月下旬、天野川河口にさす魞(えり)を眺めながら「ハス料理」をいただいた。
初夏の雌でしか作れないのが「車切り」だ。生きている大型の雌を背ごしにし、洗いにしている。背ごしは皮つきのまま1㎜ほどの厚みに切り放してある。
口に入れるとこつっと、歯に骨が当たるが、それがとても心地よい。
くせのない味で噛むとじわりと皮の風味、身の甘味が浮き上がってくる。うま味豊かで、味の余韻が一時残って実にうまい。ついつい箸の伸びてしまう味わいで、氷の隙間の身を探して箸を迷わせるほどに、あっけなく感じられる。この川魚ならではの風味、うま味はここに来なければ食べられない。

ハスの塩焼き


まさかコースの中に焼き物があるとは思っていなかった。ハスの成魚は何度か塩焼きにしているが、脊椎骨から伸びる神経棘が強く、非常に煩わしいのである。ハスの筋肉自体はおいしいのだけど、この骨のせいで台無しになる。
ところがこちらで出て来たものは、確かに小骨は気になるもののさほど煩わしくなく食べられるのだ。これは下ごしらえもあるが、焼き加減に秘密があるのだと思う。皮の香ばしさに、骨を除けながら食べる内に箸を捨て、手で喰らうが、これが正解である。蓼酢、二杯酢をつけて食べるが、つけるのを忘れるほどうまい。しかも思った以上に食べ応えがある。

ハスの田楽


焼き物が続いて、今度は田楽が来た。白みそが黄金色に焼き上がっている。このみその香りがいいのである。みそと皮を贅沢に箸で中骨から放し、こんどは初手から手づかみで食べる。骨切りしているのだろう、小骨が当たらない。
後々、ハスにみそを塗って焼くのは琵琶湖の漁師さんも自家でやっているもので、昔ながらの料理だと知ることになるが、淡泊なハスにみそがとても好相性なのである。

ハスのフライ


フライに使っているのは少し小振りの個体かも知れない。開いて中骨と強い神経棘は取り去っているようである。骨が舌に当たらず、非常に豊かなうま味と、川魚の持つ、独特の香りが口いっぱいに広がる。アジフライはマアジの風味があるからうまいのだが、ハスフライも同様。豊かなうま味と皮周辺の香りがあるからうまい。
これに小鮎などの小鉢がつき、お願いした日本酒もおいしかった。満足至極の初夏の琵琶湖畔であった。


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