ナガウバガイは謎の貝
釧路産のナガウバガは初めて見る貝だった

ボクは軟体類学者でもないし、貝家でもない。でも貝が好きだと思う。貝は触って千回、見て千回(個だったかも)だというので、半日掛けて過去の画像と原さん(株式会社ハライチ)、舛本洪介さん(築地魚市場)から分けていただいた、釧路産のナガウバガイだと思われる二枚貝を図鑑の写真と比較・同定した。
一致した図鑑は、『原色世界貝類図鑑 Ⅰ』(波部忠重、伊東潔共著 保育社 1965)・『学研生物図鑑 貝Ⅰ・Ⅱ』(監修/波部忠重 奥谷喬司 学習研究社 1983)。
一致しなかった図鑑は『標準原色図鑑全集 貝』(波部忠重、小菅貞男 保育社1967)と『日本近海産貝類図鑑 第二版』(奥谷喬司編著 東海大学出版局 20170130)。
『北の貝の仲間たち』(樋口滋雄)は肥後俊一のコレクションによるものだが、両今回の個体と一致するものと、下記で述べる福島県相馬市原釜産と一致する両タイプが乗っている。
ただし、全図鑑の解説を読む限り、今回の釧路産が真のナガウバガイでいいと思った。
上2個が「ほっきがい(ウバガイ)」、下が釧路産ナガウバガイ

寄り道になるが、「ほっきがい(ウバガイ)」とも比較してみた。
「ほっきがい(ウバガイ)」/丸味があり、殻高さが高い。殻頂は前後ほぼ中心あたりにある。
ナガウバガイ/膨らみが弱く、殻高が低い。殻頂は前後ほぼ中心あたりにある。
釧路産のナガウバガイの軟体はウバガイと同じように黒っぽい
福島県相馬沖のナガウバガイ?

我がサイトの画像で問題となるのは福島県相馬市原釜産の個体である。
今回の北海道釧路産の個体(貝殻)を子細に見るとまったく別種に見える。まったく別の貝だとしかいいようがない。でも我が家にある貝類図鑑すべてを見るとふたつともナガウバガイになる。
軟体の色も味も熱を通したときの色も違う

だいたい可食部分である軟体の味がまったく違うのである。
北海道釧路産軟体部分/黒っぽくて「ほっきがい(ウバガイ)」と同じ。ゆでると色が赤く変色する。
福島県相馬市原釜産軟体部分/筋肉も臓器や外套膜も黄色い。ゆでても色が変わらない。
念のために図鑑で比較する。
釧路産タイプ/、『原色世界貝類図鑑 Ⅰ』(波部忠重、伊東潔共著 保育社 1965)・『学研生物図鑑 貝Ⅰ・Ⅱ』(監修/波部忠重 奥谷喬司 学習研究社 1983)。
福島県相馬市原釜タイプ/『標準原色図鑑全集 貝』(波部忠重、小菅貞男 保育社1967)と『日本近海産貝類図鑑 第二版』(奥谷喬司編著 東海大学出版局 20170130)。
よって2タイプは別種としか考えられないが、貝類の世界は貝殻の世界であり、軟体は見ないのではないか? もし軟体の遺伝子などを調べるともっと明確になりそうである。
原さん(株式会社ハライチ)、舛本洪介さん(築地魚市場)にはまことに感謝します。