小さいけど非常に美味、ミクリガイ
浅場にいるきれいで小さな巻き貝

ミクリガイの仲間(エゾバイ科ミクリガイ属)は、主に煮て食べる巻き貝である。
煮て食べる巻き貝には、同じエゾバイ科の「磯つぶ(エゾバイ)」、「白ばい(エッチュウバイ)」、バイ科のバイなどがあるが、味の点ではこれらを凌ぐと思っている。
比較的通好みの、知る人ぞ知る、といった巻き貝だが、この小さな巻き貝のことも知って置いて損はないだろう。
ミクリガイの仲間の巻き貝はみな小さいく、模様が様々でとても美しい。
本州、四国、九州の比較的暖かい浅い海域で至って普通に見られる。
食用となるミクリガイ属はミクリガイ、九州東シナ海側のクロスジミクリ(ミクリガイとされることが多い)、ミオツクシ、シマアラレミクリ、トウイトガイ、マユツクリガイなどだ。
ときどき市場流通もするが、産地周辺で消費されることが多い。
このわずかに市場流通していたものが、ここ十年来、より希なものとなっている。
明らかに生息数が減少しているのだと思うし、浅場のカゴ漁など貝をとる漁が衰退しているのもある。
そして最大の、減少の原因は、日本列島の海岸線の乱開発だと思っている。
沿岸域の浅場では、今、巻き貝など軟体類だけではなく、魚類も減少傾向にある。
ミクリガイの仲間で比較的見かける機会が多いのはミクリガイだ。
ときどき全国流通もするが、同種内での色・模様や形の変化が大きい上に、非常に地方名が多いため、貝専門の仲卸(市場の魚屋)にすら認知度が低い。
また、近年、プロの料理人の水産物への関心が、ますます薄れている気がする。
今やプロといえども、目立つものには強い関心を示すのに、地味なものには無関心なのである。
流通が不安定なものは儲からないので、ミクリガイの仲間には興味がわかないというのもあるだろう。
■写真は愛知県西尾市一色産ミクリガイ。