最大2.7m SL 前後になる。口はいちばん前方にある。体側に斑紋はない。体は側へんして細長く頭部背面から吻にかけて直線的。尻鰭はなく腹鰭は非常に小さい。背鰭は1つで長く繋がっている。成魚の尾鰭は上方を向く。[神奈川県小田原市江之浦沖/158cm SL ・重さ3.1kg]
サケガシラの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
-
珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★★
知っていたら学者級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区アカマンボウ上目アカマンボウ目フリソデウオ科サケガシラ属外国名
学名
Trachipterus ishikawae Jordan and Snyder, 1901漢字・学名由来
漢字/鮭頭、裂頭 Sakegasira
由来・語源/
鮭頭 新潟県寺泊での呼び名。「鮭頭」の場合、サケ漁の始まりを告げる魚の意味。
裂頭 口が伸びたとき、頭部が裂けたように見えるため。
ishikawae 小種名「ishikawae」は魚類学者、石川千代松にちなむ。
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)に〔東京湾口,清水巴川口〕とある。国内で初期に研究対象となった個体の採取地かも。
台湾 地震の前後に現れる(漂着)するので、地震魚と呼ばれる。Jordan
David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
Snyder
ジョン・オターバイン・スナイダー(1867-1943 アメリカ) 魚類学者。スタンフォード大学の魚類学教授。『日本魚類目録(A catalogue of the fishes of Japan)』を田中茂穂、David Starr Jordanとともに作る。地方名・市場名 ?
生息域
海水魚。主に沖合いに暮らす。
日本海、北海道・[岩手県宮古・田老・山田]、[神奈川県小田原市]〜土佐湾の太平洋沿岸。
台湾高雄沖。生態
日本海沿岸などにときどきまとまって流れ着いてくる。基本情報
日本周辺が生息域。沖合いにいてときに沿岸域に姿を現す魚だが、マスコミで騒ぐほど珍魚ではない。
近縁種のテンガイハタは若魚だけで成魚が見つかっていない。本種は逆に若魚・稚魚が見つかっていない。本種の生息域は日本周辺域のみで狭く、テンガイハタの生息域は広いなど、両種は本当に別種なのかと疑問に思う。またテンガイハタはリンネの使徒と目されるヨハン・フリードリヒ・グメリンが1789年に記載したもので、模式標本はあるのか、ないのかなど、本種とテンガイハタには様々な要件がある。
太平洋よりも日本海に多い。鳥取県や島根県の漁師さんで、ときに定置に大量に入り、売れないし、やっかいものだという人がいる。
1980年代に鳥取県米子市内の鮮魚店で5kg近いものが1尾500円でもいいが、売ったことはないと言われた。ときどきたくさん入るが練り物にしても下級なものだとのこと。
表面の鱗が強く、筋肉は非常に水っぽいものの、鮮度さえよければとてもおいしい魚である。
珍魚度 珍魚とは言えない。個体の状態さえ問わなければ探せば手に入る。特に日本海側の定置網などにはときどき入るし、まとまって入ることもある。水産基本情報
市場での評価/主に日本海側で水揚げがある。まとまってとれるときがあり、非常に安い。
漁法/定置網、釣り
産地/新潟県、島根県、神奈川県選び方
触って張りのあるもの。古くなると体液が流れ出、目が曇り凹んでくる。味わい
旬は不明だが、春〜夏である可能性がある。
非常に水分が多いので鮮度が落ちやすく、古くなると生臭みが出る。
解体するのはなかなか大変な作業であった。体を5当分に切り分けて三枚卸しにした。
測線上や背鰭際、腹部正中線上に強い棘があり触ると痛い。鱗は硬いが熱に弱く、火を通す限りはあまり気にならない。皮は弱く、骨は柔らかい。
筋肉は水分が多いが味はいい。熱を通すと柔らかくなり、少しだけ縮む。
味は鮮度次第。新しいと非常においしい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
サケガシラの料理法・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き)、揚げる(フライ、天ぷら)、煮る(煮つけ、鍋)、生食(刺身、あぶり)、汁(みそ汁、潮汁)、胃袋湯引きサケガシラの塩焼き(一夜干) 水分が多いので二枚に下ろして、腹部を適当に切り、振り塩する。1時間以上寝かせてから焼く。鮮度の悪いものは軽く干すと焼きやすい。じっくり焼くと水分がぬけて縮むが、筋繊維が弱いので硬く締まらない。箸を入れると筋繊維の間から液体が染み出してくる。身は豊潤で舌の上で簡単にほぐれて甘味がある。皮周りの風味がよく、うま味豊かで非常に美味だ。クリックで閉じます
サケガシラのフライ 水分が多いものの、上品な白身でほどよく繊維質、フライに適している。三枚に下ろして皮を引き、塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(卵・小麦粉・水)をからめてパン粉をつけて高温で揚げる。時間をおくと水分が出ると思われたが、それほど気にすることはなかった。さくっとした中に豊潤な身で実においしい。クリックで閉じますサケガシラの天ぷら 水分が多いが、くせがなく、程よく繊維質だ。皮はごつごつしているが熱に弱い。これを皮ごと天ぷらにした。三枚に下ろして腹骨、血合い骨を取る。水分をよくきり、軽く振り塩をする。表面にでた水分を再度ふき取り、小麦粉をまぶして衣をつけて高温で揚げる。皮目が実に香ばしく、身にも独特の風味がある。クリックで閉じますサケガシラの煮つけ 水洗いして頭部と腹部の身、真子を煮つけにしてみた。材料は一度湯通しして冷水に取り、水分を切る。これを酒・醤油・水を煮立たせた中に入れて煮る。みりん、砂糖で甘味をつけてもおいしい。身は縮むものの柔らかくて美味。クリックで閉じますサケガシラの鍋韓国風 中骨などあら、切り身などを集めて置く。湯通しして氷水に落として霜降りにする。これを煮干しだし・酒少量・塩のつゆで煮ながら食べる。唐辛子は好みで加えるが、入っていた方がより韓国風になる。カツオ節出しでもいいが、ちり鍋など昆布だし・酒・塩よりも動物性のだしを使ったものの方がうまい。クリックで閉じますサケガシラのあぶり(焼霜造り) 筋肉は水分が多く、大味である。鱗や皮膚はグアニンで銀色をしていて熱に弱い。湯通しすると皮が柔らかくなるだけで、見た目にもよくなかったので、炙ってみた。皮目の香りがよく、皮の直下にもうま味がある。クリックで閉じますサケガシラの刺身 念のために作ったもの。三枚に下ろして厚みのある背の部分を使った。皮を引き、切りつけたが、身割れしやすくなかなかうまくいかない。なんとか刺身状にして食べてみたが平凡な味わいだ。クリックで閉じますサケガシラのみそ汁 あらを集めて置く。湯通しして冷水に落として霜降りにする。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。とてもうま味豊かな汁になる。筋肉よりもとろとろの皮の方に味がある。ご飯にも合う。クリックで閉じますサケガシラの潮汁 あらを集めて置く。湯通しして冷水に落として霜降りにする。水分をよくきり、昆布だしで煮だして酒・塩で味つけする。嫌みのない実に味わい深い汁になる。あらについた身よりも皮の方がうまい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
肉食魚 1964年に出版された名著『山陰の動物誌』(上田常一著 今井書店)に「故田中市郎の『珍魚の誉』という本」という章がある(正確には『南珍魚と北珍魚』)。〈昭和三五年十一月(1960)隠岐西郷町宇屋川で捕れた。なんでもイワシを追いあげて上がったらしく、川上の浅瀬で婦人たちがイワシを拾ったということだった。体長一,五メートル、白銀のタチウオを短くしたような形で、目が巨大なことから……〉。
釣れる 写真の固体も釣り上げられたもので、大きなハリを咽の奥に2本飲み込んでいた。
テンガイハタ 本種と非常に類似した魚にテンガイハタというのがある。その違いは現状では不明である。『日本産魚類検索』でも2種の検索は難しい参考文献・協力
協力/内藤淳一朗さん(ヤオマサ/神奈川県小田原市) 西潟正人さん
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『山陰の動物誌』(上田常一著 今井書店)