カラフトマス
代表的な呼び名マス
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★ これは常識 |
食べ物としての重要度 | ★★★★ 重要 |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
概要
生息域
淡水→海水→淡水[サーモンタイプ]。
回遊は日本海、東北太平洋側、北海道、オホーツク海沿岸。北太平洋全域、ベーリング海。
遡上する河川はほぼ北海道でオホーツク海沿岸、根室海峡沿岸の河川に95%が遡上する。日本海側では北海道西岸北部の河川、太平洋側では三陸北部の河川で見られる。
日本海で見られるものはアムール川や沿海州、サハリン西部の川で約1年前に生まれたもの。
国内以外で遡上する河川は朝鮮半島東部、シベリアのレナ川まで、アメリカはカリフォルニア州サクラメント川からカナダのマッケンジー川まで。
生態
■ 8月〜10月、河川を遡上する。河川の中・下流域、海で9月〜10月に1000粒〜1500粒を産卵。
■ 4月〜5月、川を下り、海に入る。
■ 最初は沿岸で暮らし、成長とともに沖合に出る。
■ 沖合でオキアミ類、イカなどを食べて、1年ほどで母川に向かう。雄は成熟すると背が張り出してくる。
基本情報
一般消費者が知っておくべき基本的な魚のひとつ。
英名、ピンクサーモン、北海道では「あおます(青鱒)」と呼ばれる。北太平洋にいるサケ属ではもっとも小型で、もっとも資源量が多い。
本種は国内ではオホーツク海、北海道東部太平洋沿岸が主要な漁場なので明治期まで国内ではあまり知られていなかった。明治になり北海道での漁業が盛んになり、北洋での近代的な漁が始まるとともにサケマス類(サケ、ベニザケ、カラフトマス、マスノスケなど)がまとまって市場流通を始める。
本種はサケマス類の中でもっとも安かったために、すぐに庶民的な食用魚として人気をはくす。それまで「ます」は一般的にサクラマスのことだったものが、本種のことという認識が生まれ、流通上の「ます」として今に至っている。
鮮魚は北海道での定置網の漁期である7〜9月に出回る。鮮魚は都内にはあまり流通してこない、もしくは加工原料として取引されているようだ。またサケ類を比較的好んで食べる新潟県や山形県、新潟県などで人気が高い。卵巣である「マス子」も東北で流通する量がいちばん多い。
多くが缶詰や塩蔵品である「塩ます」に加工された。サケ缶の大方の原材料は本種で、古くは輸出され、外貨獲得の一翼をになっていたことがある。
山間部では昔、塩引きサケ、身欠きニシン、塩サバ、塩イワシなどが食べられていた。そこに明治期になり本種が加わって今日に至る。また都市部でも「塩ます」は庶民的な味覚として定着する。
今現在は鮮魚での流通は少なく、多くが「塩ます」、「マス子」、缶詰などの加工品になっている。
「塩ます」は今でも日本各地で食べられており、特に山間部で見かける機会が多い。
珍魚度 至って在り来たりな食用魚だが、北海道、東北などでは鮮魚を見ることができるが、関東以西では加工品が中心となる。
水産基本情報
市場での評価 鮮魚は春から夏にややまとまって入荷してくる。値段は安い。塩マスは少ないながら見かけるもの。サケ類の塩蔵品としては安い。
漁法 流し網(刺し網)、延縄
主な産地 北海道、岩手県、宮城県、青森県
選び方・食べ方・その他
選び方
触って硬いもの。鰓が鮮やかに赤いもの。
味わい
春から夏に大量に漁獲され、基本的に夏の魚。
若魚よりも大型魚の方が美味。桃色の身はとても美しく見栄えがする。
鱗は細かく取りやすい。皮は厚く強い。骨は柔らかい。
総て天然物なので生食は避けるべき。もしも生で食べたいなら一度氷らせてから食べること。
栄養
ー
危険性など
日本海裂頭条虫(サナダムシ)/扁形動物門条虫綱多節亜綱擬葉目裂頭条虫科。はっきりした症状はない模様。
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
塩ますをよく食べる 山梨県上野原町・甲府市、福井県大野市・勝山市など。
加工品・名産品
近年では主に、青森県、山形県、新潟県などのようにサクラマス、サケなどを好んで食べていた地域、山形県、福島県、長野県、山梨県や岐阜県などの山間部で消費されている。
山形県米沢などでは昔ながらの塩分濃度の「塩ます」が作られているが、古くは塩分の供給という役割も負っていたと思われる。
岐阜県下呂市小坂では正月の年取魚に高価な「塩鰤」を買えない家庭では「煮いか」とともに年取魚とした。『小坂の文化 四季と味』(小坂の文化「四季と味」編集委員会 2003)
単に焼いて食べるだけではなく、三平汁や麹などを使ったすしなどにも使われる。
釣り情報
ルアー、フライなどの対象魚。
歴史・ことわざなど
■ 総て天然。養殖は行われていない。
■ サケ属ではもっとも小型。
■ 北太平洋域での資源量はサケ属中最大を誇る。北洋サケマス漁の中心的なものだった。