サケ
代表的な呼び名秋ザケ
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 | ★★★★★ 非常に重要 |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区真骨亜区正真骨下区原棘鰭上目サケ目サケ科サケ属
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外国名 | Chum salmon, Dog salmon, Keta Salmon
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学名 | Oncorhynchus keta (Walbaum,1792)
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漢字・学名由来 | 秋ザケ
漢字 秋鮭、秋鮏 Sake由来・語源 夏から秋、冬にかけて河川に遡上するために回帰してきたサケ。成熟が進んで白子・卵巣が大きくなっている。 サケ
漢字 鮭、鮏「鮭」とは中国でケツギョ(本朝食鑑)を差す言葉であり、本当は「鮏」が正しいとされる。「生」は「生臭い」という意味合い。 「鮏」。左計(さけ)と訓む。 由来・語源 ■ 『言泉』1986にはアイヌ語の「さくいべ」、「しゃけんべ(「しゃきぺ」『日本魚名の研究』)」からくるとある。 ■ 『鮭の文化誌』(秋庭鉄之 道新選書)に北越雪譜からとして「「はららご水にある事十四、五日にして魚となる。形糸の如く、たけ一二寸、腹裂て腸をなさず。ゆえに佐介(さけ)の名ありといひ伝う」、「焼くと身が割れることから」というのが掲載されている。 イクラ/ロシア語で魚卵のこと。1906(明治39)前後、アムール川(黒竜江)下流、河口域に入植した日本の漁業者はサケ自体は日本に送っていたが、卵巣は自家消費以外を廃棄していた。その内にロシア内での需要が芽生えてきて、粒状キャビアに加工されるようになったのが始まり。ロシアで加工が始まったことからイクラというロシア語が国内に移入された。 筋子/卵巣(はららご)の卵膜をそのままに塩漬けにしたもの。最近では生鮮品として入荷してくる卵巣自体を言うこともある。「筋」は筋状など形状を表すとともに血管のことでもある。ブドウの房状の卵粒の周りに赤い血管が網目状に見られるために、この漢字が当てられた。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
淡水→海水→淡水[サーモンタイプ]。
[鹿児島県南さつま市笠沙]、九州北部以北の日本海側の河川、千葉県と茨城県の境を流れる利根川以北の河川に産卵のためにのぼる。生息域は北太平洋。北アメリカのカリフォルニアからベーリング海、オホーツク海をへて朝鮮半島南部。
生態
産卵期は北で早く、南で遅く、北海道で9月から本州で2月。
河口近くから十数キロさかのぼったあたりで産卵、2ヶ月ほどで孵化、1ヶ月から2ヶ月河川で暮らし、海に下る。
海が暖かくなる6月〜7月に沖合に出て、1年目の夏から秋にかけてはオホーツク海などで過ごす。
2年目には3年魚以上と合流し、ベーリング海へ移動。
寒くなると南下するというのを繰り返す。
3年〜5年魚となると産卵のために生まれた川(母川)をめざす。
基本情報
「サケ」は本来本種のみをいう。古代より、食用魚として重要なもの。東日本では正月などに食べる年取り魚だ。さまざまな加工品があり、古くは高級なものであった。
これが稚魚放流の努力によって安定した漁獲量が得られるようになり、価格が低迷するまでになっていたが、最近の温暖化で本州での漁獲量が激減し、徐々に値を上げて高級化してきている。
初夏の、「時鮭(時知らず)」、夏から秋の「秋鮭」ととれる場所や季節で値段や味わいがかわる。
また、サケ類の代表的なものであったのが、世界中からの輸入サケに主役の座を明け渡している。
脂が少なくさっぱりしているために、国産ものはあまり気味で、中国などへ輸出されることもある。
卵巣を筋子、ばらばらにして味つけしたものをイクラという。
珍魚度 水揚げ量は決して少なくない。やや高騰しているが手に入れるのはたやすい。
水産基本情報
■ 鮭児/秋鮭の1万本に1本混ざる。流通すると1㎏2万円を超える超高級魚。
■ 目近/日本海新潟の川などに遡上するサケで、北海道日本海側でとれた未成熟なもの。
■ イクラ/生、加工品とも高い。
■ 白子/秋鮭の揚がる秋に流通する。安い。
■ サケ自体の人気が養殖ギンザケ、サーモントラウト、アトランティックサーモンのために低くなっている。最近では国内で食用加工するよりも中国などへの輸出が目立つ。
漁法 定置網、刺し網、ほかにも伝統漁が存在する。
主な産地 北海道、岩手県、青森県、福島県
養殖は行われていないが、稚魚放流が盛ん。
サケの年間生産量は20万トン前後、海外からそれ以上のサケ科の魚を輸入している。
選び方・食べ方・その他
選び方
味わい
秋ザケとは、海で成長したサケが河川に回帰してくる8月〜12月に漁獲される個体。河川から遠くでとれたものほど脂がのっている。
大きいほど味がいいとされている。雌よりも雄の方が味がいい。基本的に4年で回帰するべきところ、3年で回帰した小振りのものはあまり美味ではない。雄は白子を持っているが小さく、雌は卵巣をほんの少ししか持っていない。
鱗は細かく皮膚に強く付着していて取りにくい。皮はとても硬く厚みがある。骨は軟らかい。
サーモンピンクと呼ばれる赤い色合いの身だが、これはアスタキサンチンという色素で、赤身魚、マグロ族のミオグロビンとは違う。区分としては赤身ではなく白身とされている。ただしこれを「白身」とするのはあまりにも科学的すぎる。食文化的には白身赤身ではなく「サケ」で独立させたい。
熱を通しても脂があれば硬く締まることはない。
産卵回遊してきたサケが沿岸で群れを作る。川に近づくにつれて「ぶな」という婚姻色が出る。まだ沖合で「ぶな」の出ていないのを「銀毛」。川に近づくにしたがって「ぶな」が出てくる。岩手県上閉伊郡大槌町では秋鮭の成熟によって5段階に仕分けされていたよう。赤みはケイジ、トキシラズと比べると弱い。
一般的に未成熟の方が脂がのっていて美味とされるが、実は「ぶな」のサケらしい風味も捨てがたい。
新巻鮭など「干す」行程があるものは「ぶな」が濃く出た成熟したものの方が、香りと風味があって味わい深い。
栄養
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危険性など
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食べ方・料理法・作り方
水洗いして三枚に下ろし腹骨と小骨をていねいに抜く。皮を引いて、塩コショウする。小麦粉をまぶして溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。
好んで食べる地域・名物料理
新潟県村上市ほか県内各地 塩引きほか鰓、内臓ほかサケすべてを食べ尽くす料理があり壮観。
岩手県、新潟県、山形県では塩漬けして「干す」行程をまだ残した「塩引きサケ」、「新巻鮭」が作られている。
やな料理 栃木県那須烏山市。フライ、塩焼き、イクラなど。
■料理
【飯】
鮭の親子飯 三枚に下ろしたサケを一寸くらいに切り、甘辛く煮て細かくほぐしておく。卵巣はバラバラにほぐす。熱いご飯にほぐしたサケの身とイクラを散らし、煮汁をかけて食べる。
鮭のちゃんちゃん焼き 鮭の片身、もしくはフィレとキャベツ、玉ネギ、ニンジンなどの野菜をたっぷりのバターで焼き、酒、みりん、砂糖などを加えて練った味噌を回しかけて作るもの。もともとは漁師料理とされている。
【汁・鍋】
ルイベ(ルイペ) アイヌ料理のひとつ。鱗を取り、内臓をのぞいたものを丸のまま、もしくは三枚に下ろして外につり下げ、凍らせたもの。皮をはぎ、割って、また削り取り、生で食べる。焼いて食べることもある。
鮭汁 山形県では「ようしる」。サケの切り身の入ったみそ汁のこと。大根、焼き豆腐、ネギなどを加える。
又兵衛鍋(またべえなべ) 岩手県宮古市津軽石川の鮭と後藤又兵衛の伝承にちなむ。古くから鮭漁師が仕事の合間に食べていた番屋の賄い料理。刻んだ鮭の卵膜、ニンニク、ネギ、醤油、酒少々を入れて煮込み、腹子を添える。
【その他】
煮なます 酢と酒で氷頭を煮て作るもの。
酒かす煮 塩鮭、塩鮭の頭を細かく切り、里いも、にんじん、大根。こんにゃく、昆布などとともに酒粕、みそで煮たもの。[福島県河沼郡湯川村]『会津の郷土料理』(平出美穂子 歴史春秋社 2008)
加工品・名産品
南部鮭燻す 宮古市で買ったもの。味つけが上品で燻した香りも非常にいい。[南部鮭加工研究会(岩手県宮古市)]
カレーパン粉焼 秋ザケをフィレにしてカレー粉、パン粉をつけた半製品。プライパンでソテーする。
鮭のルイベ漬 生のサケをたぶん冷凍、しょうゆ味をつけてイクラと合わせたもの。[佐藤水産 北海道石狩市]
魚肉ソーセージ サケを原料とし北海道などで作られている。
鮭ぶし 「サケのカツオ節」と書くのも変だろうか。節にしたものだが、だしに使うよりもそのままお浸しなどにのせていい。[華ふぶき(知床標津マルワ食品)]
昆布巻き サケを芯に昆布で巻き、煮たもの。
【干もの・塩蔵品】
ぼだっこ 秋に取れるサケの塩蔵品のこと。[秋田県]
荒巻鮭(新巻鮭) サケの塩蔵品。江戸時代に奥羽から松前にかけて塩引きが作られた。松前に北前船で塩が送られ、そのたびに利用されていた筵(むしろ)で塩引きサケを包み、帰り船にのせた。塩を運んだ筵で巻いたので、この名となった。また「新巻」となったのは昭和になってから。
【卵巣】
イクラ 筋子をほぐして塩漬け、もしくはしょうゆ漬けにしたもの。[越田鮮魚 岩手県大槌町]
釣り情報
河川や海でルアーなどで釣る。北海道では人気の釣りものとなっている。
歴史・ことわざなど
古代より重要な食用魚 素干しになったり、塩引きなどに加工、朝廷への献上物、租税の代わりだった。江戸時代後期の滝沢馬琴の日記には贈答用や正月の祝い魚などとしてたびたび塩鮭が登場している。
常陸風土記(養老5/721) 久慈郡助川郷。川で鮭(サケ)がとれるので「助(すけ 現在では「マスノスケ」のことだとしているが単にサケかも)助川とした」。『たべもの話』(鈴木晋一 平凡社)
宇治拾遺集(1213-1221) 「犬童子鮭盗みたる事」は犬童子が越後からの鮭の荷を襲って盗む話。「醍醐寺を開いた理源大師聖宝」に干鮭(からざけ)が出てくる。これは塩をしないで干したもの。『たべもの話』(鈴木晋一 平凡社)
「鮭」と「鱒」の違い 本来我か国で「鮭(サケ)」とは標準和名のサケだけに使われていた言葉である。例えば英語の「サーモン(salmon サケ)」、「トラウト(trout マス)」が川に遡上して産卵、海に下るものを「サーモン」、一生を淡水でくらすものを「トラウト」と明解なので、我が国でも同様に説明しているのも見かけるが、これは明らかに間違い。我が国でとれるのはサケ、サクラマス、カラフトマスの三種が主だった。そこにサクラマス(ヤマメ、アマゴ)、アメマス(イワナ)などの陸封型が存在する。そこではサケのみが「サケ」、他のカラフトマスとサクラマスは「マス」と呼び分けた。
鮭鱒混同 明治期にニジマスが移入されたことも「鮭鱒混同」を作り出した原因だ。アメリカから移入したニジマスは主に湖沼に放流された。一般的にはまさか海に下るとは思わなかったのだろう。陸封型のサクラマス(ヤマメ、アマゴ)、アメマス(イワナ)も「マス」と呼んでいたために、淡水だけで生活環をとげられるニジマスとなったようだ。面白いのは本来我が国でとれないベニザケ、ギンザケだが、これは間違いなく古くからの和名ではなく動力船による漁が行われ始めた明治以降ではないかと思っている(これは調べているところ)。またベニザケなどは一時「べにます」と呼ばれた時期もある。
年取り魚、正月魚 静岡県、長野県、新潟県などを境に東日本ではサケを、西日本ではブリを年取りの魚、正月用の魚にした。
鮭の日 11月11日。十一を縦に2つ重ねると鮭の右の文字になることから。新潟県村上市と築地の業者が作る。
又兵衛祭 岩手県宮古市
新巻鮭 遡上のために沿岸に集まってきた「秋味」を筵(むしろ)に巻いて塩漬けにしたもの。正月用という意味合いもあり、大手水産会社N社(旧日魯漁業か)が命名した? 『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)
鮭(しゃけ) 夏目漱石の『吾輩は猫である』に〈黒(猫)のうちのお神さんが大きな声を張り揚げて「おや棚に上げておいた鮭(しゃけ)がない。大変だ。……一切れ二銭三厘に相当する鮭の骨が……〉『吾輩は猫である』(夏目漱石 岩波文庫 1905-906 明治38-39)
1 川岸に箱形の流れをゆるめるサケの休息所を作り、入ってきたサケを鈎でひっかけてとる。
2 岸に足場を作り、タケザサや木を沈めて、近づいてきたサケを鈎で引っかける。(写真)
3 流れによどみを作るだけのこともある。人によってはおとりのサケを泳がせることもある。
いずれにしても鈎で取るというのはもっとも原始的なサケ漁のひとつ。これが現存するのはここだけ。
[新潟県村上市府屋大川]
地方名・市場名
備考岩手県「南部鼻曲がり」は産卵で回遊してきた雄サケの吻(上あご)が成熟して曲がったことによる。当地で作られる「鮭の塩引き(新巻鮭)」は秋に作り夏まで保存する。このように長い期間保存するとき脂があると酸化して変色、苦みが出てくるので川に入って脂が少ない「鼻曲がり」をよしとしたことによる。 場所岩手県
場所山形県由良漁港
場所新潟県村上市
備考東京ではシャケであり「平井」が「しらい」になるなど独特の音の変化が聞かれる。これも調べていく必要を感じる。また塩鮭は全国的にも「しおざけ」ではなく「しおじゃけ」となることが多い。 場所東京
サイズ / 時期秋・8月くらいから 備考秋に群れをなして産卵回遊して河川に近づいてきたものをアキアジ(秋鮭)、アキザケ(秋鮭)。 場所北海道、東北
サイズ / 時期春から初夏 備考春に回遊してくる未成魚(北海道の時不知)を。 場所岩手県、宮城県(聞き取りは気仙沼、石巻)
備考北海道で秋に「秋鮭」に混ざって知床、網走などでとれるものロシアの河川に遡上するサケが迷い込んだもので脂がのっていて美味。これと同じものを岩手県ではオオメ(大目)という。 場所北海道
備考アイヌ語。
アキアゲ アギアズ イオ イヌマス ウオ オオスケ オオスミ オオナマコ サケノイオ サケノオ シロ ナツザケ ビン ビンゴ ラシャマス
参考文献より。