サケ

代表的な呼び名秋ザケ

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体長80センチ前後になる。胸鰭と腹鰭が離れている。あぶら鰭があり、尾鰭に銀白色の放射線状の筋がある。重さ3kg-5kg。写真は遡上のために沿岸域に集まってきたものだが、比較的成熟度が低い、「銀毛」と呼ばれる個体。
写真は岩手県譜代で11月初旬に揚がった川に上る直前の雄。体長80センチ前後になる。胸鰭と腹鰭が離れている。あぶら鰭があり、尾鰭に銀白色の放射線状の筋がある。重さ3kg-5kg。
川に上って成熟が進むと雄は鼻が曲がり、体側に「ぶな」と呼ばれる赤褐色の模様が浮き出てくる。
川に上り、産卵直前になっても体側に赤味を帯びず、鼻が曲がらず穏やかな顔つきをしている。
3年目に母河に帰ってきたサケ。2kg前後しかなく商品価値が低い。

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全関連コラム

珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度
知らなきゃ恥
食べ物としての重要度 ★★★★★
非常に重要
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区真骨亜区正真骨下区原棘鰭上目サケ目サケ科サケ属
外国名
Chum salmon, Dog salmon, Keta Salmon
学名
Oncorhynchus keta (Walbaum,1792)
漢字・学名由来

秋ザケ
漢字 秋鮭、秋鮏 Sake
由来・語源
夏から秋、冬にかけて河川に遡上するために回帰してきたサケ。成熟が進んで白子・卵巣が大きくなっている。
サケ
漢字 鮭、鮏
「鮭」とは中国でケツギョ(本朝食鑑)を差す言葉であり、本当は「鮏」が正しいとされる。「生」は「生臭い」という意味合い。
「鮏」。左計(さけ)と訓む。
由来・語源
■ 『言泉』1986にはアイヌ語の「さくいべ」、「しゃけんべ(「しゃきぺ」『日本魚名の研究』)」からくるとある。
■ 『鮭の文化誌』(秋庭鉄之 道新選書)に北越雪譜からとして「「はららご水にある事十四、五日にして魚となる。形糸の如く、たけ一二寸、腹裂て腸をなさず。ゆえに佐介(さけ)の名ありといひ伝う」、「焼くと身が割れることから」というのが掲載されている。
イクラ/ロシア語で魚卵のこと。1906(明治39)前後、アムール川(黒竜江)下流、河口域に入植した日本の漁業者はサケ自体は日本に送っていたが、卵巣は自家消費以外を廃棄していた。その内にロシア内での需要が芽生えてきて、粒状キャビアに加工されるようになったのが始まり。ロシアで加工が始まったことからイクラというロシア語が国内に移入された。
筋子/卵巣(はららご)の卵膜をそのままに塩漬けにしたもの。最近では生鮮品として入荷してくる卵巣自体を言うこともある。「筋」は筋状など形状を表すとともに血管のことでもある。ブドウの房状の卵粒の周りに赤い血管が網目状に見られるために、この漢字が当てられた。

地方名・市場名

概要

生息域

淡水→海水→淡水[サーモンタイプ]。
[鹿児島県南さつま市笠沙]、九州北部以北の日本海側の河川、千葉県と茨城県の境を流れる利根川以北の河川に産卵のためにのぼる。生息域は北太平洋。北アメリカのカリフォルニアからベーリング海、オホーツク海をへて朝鮮半島南部。

生態

産卵期は北で早く、南で遅く、北海道で9月から本州で2月。
河口近くから十数キロさかのぼったあたりで産卵、2ヶ月ほどで孵化、1ヶ月から2ヶ月河川で暮らし、海に下る。
海が暖かくなる6月〜7月に沖合に出て、1年目の夏から秋にかけてはオホーツク海などで過ごす。
2年目には3年魚以上と合流し、ベーリング海へ移動。
寒くなると南下するというのを繰り返す。
3年〜5年魚となると産卵のために生まれた川(母川)をめざす。

基本情報

「サケ」は本来本種のみをいう。古代より、食用魚として重要なもの。東日本では正月などに食べる年取り魚だ。さまざまな加工品があり、古くは高級なものであった。
これが稚魚放流の努力によって安定した漁獲量が得られるようになり、価格が低迷するまでになっていたが、最近の温暖化で本州での漁獲量が激減し、徐々に値を上げて高級化してきている。
初夏の、「時鮭(時知らず)」、夏から秋の「秋鮭」ととれる場所や季節で値段や味わいがかわる。
また、サケ類の代表的なものであったのが、世界中からの輸入サケに主役の座を明け渡している。
脂が少なくさっぱりしているために、国産ものはあまり気味で、中国などへ輸出されることもある。
卵巣を筋子、ばらばらにして味つけしたものをイクラという。
珍魚度 水揚げ量は決して少なくない。やや高騰しているが手に入れるのはたやすい。

水産基本情報

秋ザケ
市場での評価 秋ザケは鮮魚、生フィレなどは秋から冬。徐々に値を上げてきている。回帰してきたものでは大きいほど高く、あまりにも小さい2kg以下は出荷利用されないこともある。
秋ザケ以外のもの
■ 時鮭(時知らず、時不知、三陸ではオオメ、オオメマス)/春〜初夏にとれる。産卵回遊で夏から秋に沿岸に寄せてきたものでは評価が違う。サケは成熟度が増すと値段が下がる。時鮭は高価。
■ 鮭児/秋鮭の1万本に1本混ざる。流通すると1㎏2万円を超える超高級魚。
■ 目近/日本海新潟の川などに遡上するサケで、北海道日本海側でとれた未成熟なもの。
■ イクラ/生、加工品とも高い。
■ 白子/秋鮭の揚がる秋に流通する。安い。
■ サケ自体の人気が養殖ギンザケ、サーモントラウト、アトランティックサーモンのために低くなっている。最近では国内で食用加工するよりも中国などへの輸出が目立つ。
漁法 定置網、刺し網、ほかにも伝統漁が存在する。
主な産地 北海道、岩手県、青森県、福島県
養殖は行われていないが、稚魚放流が盛ん。
サケの年間生産量は20万トン前後、海外からそれ以上のサケ科の魚を輸入している。

選び方・食べ方・その他

選び方

フィレは身に張りのあるもの。消費地では鮮やかな赤色をしているもの。取れたては赤みが弱く、徐々に赤くなる。また時間がたつにしたがって赤みが褪せてくる。若い個体の方がよく遡上するために回遊してきた秋のサケは脂が少ない。ただし河川に遡上するサケには独特の風味があって美味との声もある。
11月の雄の切り身。取れたては赤みが弱く、徐々に赤くなる。これが時間が経つとまた赤みが褪せる。切り身は原則的に鱗がついたまま。古くなると表面にぬめりが出る。

味わい

秋ザケとは、海で成長したサケが河川に回帰してくる8月〜12月に漁獲される個体。河川から遠くでとれたものほど脂がのっている。
大きいほど味がいいとされている。雌よりも雄の方が味がいい。基本的に4年で回帰するべきところ、3年で回帰した小振りのものはあまり美味ではない。雄は白子を持っているが小さく、雌は卵巣をほんの少ししか持っていない。
鱗は細かく皮膚に強く付着していて取りにくい。皮はとても硬く厚みがある。骨は軟らかい。
サーモンピンクと呼ばれる赤い色合いの身だが、これはアスタキサンチンという色素で、赤身魚、マグロ族のミオグロビンとは違う。区分としては赤身ではなく白身とされている。ただしこれを「白身」とするのはあまりにも科学的すぎる。食文化的には白身赤身ではなく「サケ」で独立させたい。
熱を通しても脂があれば硬く締まることはない。
産卵回遊してきたサケが沿岸で群れを作る。川に近づくにつれて「ぶな」という婚姻色が出る。まだ沖合で「ぶな」の出ていないのを「銀毛」。川に近づくにしたがって「ぶな」が出てくる。岩手県上閉伊郡大槌町では秋鮭の成熟によって5段階に仕分けされていたよう。赤みはケイジ、トキシラズと比べると弱い。
一般的に未成熟の方が脂がのっていて美味とされるが、実は「ぶな」のサケらしい風味も捨てがたい。
新巻鮭など「干す」行程があるものは「ぶな」が濃く出た成熟したものの方が、香りと風味があって味わい深い。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

サケの料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き、幽庵焼き、西京焼き、みそ漬け)、汁(三平汁、粕汁、鍋、シチュー)、ソテー(ムニエル)、生食(ルイベ、刺身)
サケの卵巣・白子などの料理・レシピ・食べ方/イクラ(塩漬け、しょうゆ漬け)、白子(揚げる、煮る、焼く)
サケのフライ 国内だけではなく、サケ科の魚の定番的な料理法である。身がミルフィーユのように重なり合っており、くせのない白身ではあるが、サケ科ならではの風味がある。熱を通しても強く締まらないのもいい。
水洗いして三枚に下ろし腹骨と小骨をていねいに抜く。皮を引いて、塩コショウする。小麦粉をまぶして溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。
サケのムニエル 表面を香ばしく、中はしっとりとした状態に仕上げるのがベスト。身(筋肉)が層をなしていて、その層にそってほぐれる。身にサケらしい風味とうま味が感じられて美味。バターともよく合う。水洗いして三枚に下ろす、小骨などを抜き皮を引いて塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの油でじっくりソテー、仕上げにバターで風味づけする。
サケの塩焼き(秋ザケの塩焼き) 単に切り身に振り塩をして焼く、これがサケのもっとも基本的な料理法。今でも関東のスーパーでは塩焼き用のサケが売られている。サケの臭いが気になるときはサケを塗りながら焼き上げるといい。

サケの唐揚げ サケのあらにカレー粉と片栗粉を合わせたものをまぶして揚げたもの。硬い皮がじっくり揚げることでかりっと香ばしくて美味しい。
サケの粕漬け(秋鮭の粕漬け) 塩をまぶして半日ほどねかせ、水洗い。水分をよく拭き取り、酒粕、みりんを合わせたものに2日以上漬け込んだもの。ほどよい甘さで脂の少ないサケでもおいしく食べられる。
サケの銀毛のルイベ 冊にして48時間以上冷凍してから刺身状に切る。完全に解凍しても、半解凍で食べてもいい。河口域に集まってきたサケでも成熟の度合いが低いものは脂があり、河川に入ると脂が少なくなる、それぞれ好みの味を見つけるのもいい。
サケのちゃんちゃん焼き 北海道の郷土料理「ちゃんちゃん焼き」はたっぷりのバターでソテーしたサケ半身にキャベツ、にんじんなどを加えて合わせみそ(みそ、砂糖、酒)をかけて食べるもの。豪快な料理だが家庭ではフライパンなどで少量作ってもうまい。
サケのみそ煮 比較的脂の落ちた秋のサケには独特の臭みがある。これを好きかキライかは分かれると思うが、煮ると少し硬く締まる傾向がある。この両方をみそで煮ることで解消できる。ほの甘く味つけするとご飯に合う。
サケのイクラしょうゆ漬け 8月の成熟の度合いが低い筋子で作る。手を入れると熱いくらいの湯のなかで筋子をほぐす。血管、破損した皮などをていねいに洗い流して、しょうゆのみ、もしくはしょうゆ・みりん、しょうゆ・酒で漬け込んだもの。1日くらいおくと食べられる。味つけを薄くするとご飯に大量のせできる。
サケの白子フライ 白子は水で洗い、水分をよくきっておく。塩コショウして、小麦粉をまぶし、アングレーズ(卵・水・油を合わせたもの。これに小麦粉をまぶすとバッター液)をからめ、パン粉をつけて揚げたもの。揚げた白子は中は微かにクリーミーで甘味があり、とて親しみ深い味。
サケの牛乳みそ汁 少量のカツオ節だしに水を加えたもので切り身を煮て、みそをとき、仕上げに牛乳を加えたもの。北海道の方に教わったものだが、実に優れた家庭料理である。野菜は大根やにんじんにキャベツ、玉ねぎ、じゃがいもなどお好みで。
サケの白子煮 白子は安くて下ごしらえの手間がなくて便利な食材だ。適当に切り、湯通しして冷水に落として粗熱を取る。酒・しょうゆ・砂糖・水を合わせ煮立てたなかに入れて鍋止めする。一瞬なんだろう? と思いそうな食感が楽しめ、イヤミのない味わい。
白子の揚げ出し 白子は水洗いして適当に切る。水分をよくきり、片栗粉をまぶして揚げる。タレはカツオ節出し7に対してみりん・酒・しょうゆを同量混ぜ合わせたもの3を合わせて一煮立ちさせたもの。割合は好みで、甘いのが好きなら砂糖を加えてもいい。揚げたばかりを器に入れてたれをかける。タレを入れた中に揚げたものを入れてもいい。大根おろしやねぎをのせて出来上がる。
サケ白子のみそ漬け ここでは白みそと赤みそを合わせたもの、みりん、酒、砂糖を合わせて漬け地にした。白子は水でさっと洗い、水分をよくきり、合わせみそに漬け込む。1日以上漬け込んで焼き上げる。小粋な味わいになる。

好んで食べる地域・名物料理

■地域
新潟県村上市ほか県内各地 塩引きほか鰓、内臓ほかサケすべてを食べ尽くす料理があり壮観。
岩手県、新潟県、山形県では塩漬けして「干す」行程をまだ残した「塩引きサケ」、「新巻鮭」が作られている。
やな料理 栃木県那須烏山市。フライ、塩焼き、イクラなど。
■料理
【飯】
鮭の親子飯 三枚に下ろしたサケを一寸くらいに切り、甘辛く煮て細かくほぐしておく。卵巣はバラバラにほぐす。熱いご飯にほぐしたサケの身とイクラを散らし、煮汁をかけて食べる。
鮭のちゃんちゃん焼き 鮭の片身、もしくはフィレとキャベツ、玉ネギ、ニンジンなどの野菜をたっぷりのバターで焼き、酒、みりん、砂糖などを加えて練った味噌を回しかけて作るもの。もともとは漁師料理とされている。
【汁・鍋】
ルイベ(ルイペ) アイヌ料理のひとつ。鱗を取り、内臓をのぞいたものを丸のまま、もしくは三枚に下ろして外につり下げ、凍らせたもの。皮をはぎ、割って、また削り取り、生で食べる。焼いて食べることもある。
鮭汁 山形県では「ようしる」。サケの切り身の入ったみそ汁のこと。大根、焼き豆腐、ネギなどを加える。
又兵衛鍋(またべえなべ) 岩手県宮古市津軽石川の鮭と後藤又兵衛の伝承にちなむ。古くから鮭漁師が仕事の合間に食べていた番屋の賄い料理。刻んだ鮭の卵膜、ニンニク、ネギ、醤油、酒少々を入れて煮込み、腹子を添える。
【その他】
煮なます 酢と酒で氷頭を煮て作るもの。
酒かす煮 塩鮭、塩鮭の頭を細かく切り、里いも、にんじん、大根。こんにゃく、昆布などとともに酒粕、みそで煮たもの。[福島県河沼郡湯川村]『会津の郷土料理』(平出美穂子 歴史春秋社 2008)
塩引き鮭(しおびきざけ) 河川に入ったサケの腹をさき内臓を取り去り、塩をすり込む。腹は一カ所割かない(これを村上では「止め腹(とめばら)」という)でくっついたままになっているのが村上市三面川流域独特のやり方。これを1か月ほど寝かせて、塩出しをして滑りを取る。これを陰干ししたもの。3週間くらい干すと食べられる。干すほどに身の赤みが強くなる。またこれを夏まで干し枯らしたものを「酒びたし(さけびたし、さかびたし)」という。[協力/大滝栄一さん 新潟県村上市]
三平汁 塩引き、生を汁にする。「三平汁」は塩引きの場合はその塩味で、生のものは塩味をつける。ニンジン、ごぼうなど野菜と合わせる。なます皿で供すのが基本形。
サケのどんがら汁(サケのがら汁、サケのざっぱ汁/みそ仕立て) サケの産地では多かれ少なかれ、汁ものにして食べているはずである。例えば新潟県では魚のあらのことを「がら」。「どんがら」といい、このあらと内臓といういちばんうま味のある場所を汁にしたものを「どんがら汁」という。これをみそで仕立てることが多く、ついでしょうゆ味にすることが多い。この白子や肝いりの「みそ汁」が非常に美味しい。
サケのどんがら汁(サケのがら汁、サケのざっぱ汁/しょうゆ仕立て) 山形県酒田市、遊佐町など庄内地方では「どんがら汁」、山形県最上地方鮭川村では「ざっぱ汁」という。サケのあら、内臓などをしょうゆ仕立て、みそ仕立てで作ったもの。
鮭鍋(石狩鍋、秋あじ鍋) 生のサケをぶつ切りにし、玉ネギ、キャベツ、大根、ニンジンなどとみそ仕立ての鍋にしたもの。石狩市新町にある創業明治13(1880)の『金大亭』が発祥とされるが、北海道だけではなくサケの揚がる多くの地域で作られていたはず。
鮭のかすっぺ汁(サケの粕汁) 岩手県宮古市で聞き取った料理。サケの身を煮だして、大根、にんじんなどを加え、火が通ったら酒粕、みそを溶く。[岩手県宮古市、山形県真室川町]
はらこ飯 サケの身をしょうゆ、砂糖などで煮る。煮汁とサケの身を分けて、この煮汁で「はらこ(イクラ)」を煮る。炊きあがったご飯にサケの身を加えて蒸らし、蒸らし終わったらかき混ぜる。茶碗に盛り、イクラをのせて出来上がり。『ごっつぉうさんー伝えたい宮城の郷土食』(みやぎの食を伝える会編著 河北新報出版センター)
しもつかれ(つむずかり、しみつかれ、しもつかり、すみずかり) 福島県、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県などで作られている。福島県南会津町、栃木県栃木市、栃木県小山市、栃木県宇都宮市今里、那須郡那珂川町、さくら市、群馬県板倉町、茨城県結城市では実際に家庭で作られているのを確認。塩引き鮭の頭、大豆、にんじん、大根、酒粕などを煮たもの。
氷頭なます 山形県では「ごんすけなます」。生サケ、塩引きザケの頭部、吻の部分の軟骨を薄く切り、甘酢に漬け込んだもの。大根やニンジンなどと合わせる。

加工品・名産品

フィレ サケを三枚おろしにしたもの。鱗はついている。秋から初冬にかけて関東には大量に入荷してくる。
南部鮭燻す 宮古市で買ったもの。味つけが上品で燻した香りも非常にいい。[南部鮭加工研究会(岩手県宮古市)]
カレーパン粉焼 秋ザケをフィレにしてカレー粉、パン粉をつけた半製品。プライパンでソテーする。
鮭のルイベ漬 生のサケをたぶん冷凍、しょうゆ味をつけてイクラと合わせたもの。[佐藤水産 北海道石狩市]
魚肉ソーセージ サケを原料とし北海道などで作られている。
鮭ぶし 「サケのカツオ節」と書くのも変だろうか。節にしたものだが、だしに使うよりもそのままお浸しなどにのせていい。[華ふぶき(知床標津マルワ食品)]
昆布巻き サケを芯に昆布で巻き、煮たもの。
【干もの・塩蔵品】
ぼだっこ 秋に取れるサケの塩蔵品のこと。[秋田県]
荒巻鮭(新巻鮭) サケの塩蔵品。江戸時代に奥羽から松前にかけて塩引きが作られた。松前に北前船で塩が送られ、そのたびに利用されていた筵(むしろ)で塩引きサケを包み、帰り船にのせた。塩を運んだ筵で巻いたので、この名となった。また「新巻」となったのは昭和になってから。
【卵巣】
イクラ 筋子をほぐして塩漬け、もしくはしょうゆ漬けにしたもの。[越田鮮魚 岩手県大槌町]

新巻鮭 塩漬けにしたサケを水洗いして、50パーセント近くまで屋外で乾燥させたもの。岩手県大槌町、釜石市、宮古市などでは水産加工業者以外にも一般人も作るもの。スーパーなどでは塩漬けにしただけのサケも売られていて、これを買い求め、自宅で洗い、滑りをとって干すこともある。「ぶな(婚姻色)」の出た脂の少ないものの方が風味が豊かである。[たかのり海産 岩手県大槌町、越田鮮魚店 岩手県大槌町、後藤商店 岩手県大槌町]
鮭の新切り(ようのじんぎり) 鮭川村を流れる鮭川を上ってきたサケの内臓を取り去り、10日以上塩漬けにして、後に塩抜き。軒下に吊して乾燥させたもの。昼夜の気温差と寒風にさらして干し上げていく。独特の風味が楽しめる逸品。[鮭川村観光協会 山形県最上郡鮭川村]
さけとば 主にアキザケのブナを、3枚に下ろした身を皮付きのまま縦に切り裂いて干し上げたもの。強いうま味と、ほどよい渋みがあり、酒肴として優れている。一般的にメスを使うという情報もあるが、雄の方が味はいい。[たかのり海産 岩手県上閉伊郡大槌町]
はらも干し とば(サケの身を縦に細長く切り干したもの)を作るとき、腹の周りの薄い部分を干した物。[たかのり海産 岩手県大槌町]
みそ漬け 秋から冬にかけて川を遡上してきたサケで作ったもの。これはみそだけだが、酒粕を混ぜることもある。[新潟県村上市]
鮭のちゅう 「ちゅう」はサケの胃と腸を細く切り、塩辛にしたもの。食感がよくておいしい。[河村水産 北海道標津郡標津町]
めふん 延喜式には鮭背腸(せわた、みなわた)とも。サケの背骨下にある「めふん(腎臓)」の塩辛。体内の塩分濃度を調節する器官である腎臓が、淡水と海水を行き来するサケでは大きく発達している。鮮度がいいとなかなか味わい深いものだが、鮮度落ちが早いので基本的には塩辛などにする。[加島屋 新潟県新潟市]
鮭の焼き漬け サケの切り身を素焼きにしてしょうゆ。みりん、酒などを合わせた地につけ込んだもの。家庭料理だが、最近は魚屋さんやスーパーで買うことが多い。[まえた 新潟県新潟市ほか]
しもつかれ サケの頭を焼き、ほぐす。これを煎り大豆、酒粕、鬼下ろしで下ろした大根、にんじん、などとしょうゆ、砂糖などで煮込んだもの。[大関商店 栃木県栃木市]

釣り情報

河川や海でルアーなどで釣る。北海道では人気の釣りものとなっている。

歴史・ことわざなど

サケの基本
Salmo Linnaeus,1758とOncorhynchus Suckley,1861 現在はSalmo(タイセイヨウサケ属)、Oncorhynchus keta (Walbaum,1792)に分かれているが1955年前後までは総てがSalmo(タイセイヨウサケ属)で976年前後からSalmo (Oncorhynchus) keta (Walbaum,1792 になる。その後、Oncorhynchus keta (Walbaum,1792)となる。
古代より重要な食用魚 素干しになったり、塩引きなどに加工、朝廷への献上物、租税の代わりだった。江戸時代後期の滝沢馬琴の日記には贈答用や正月の祝い魚などとしてたびたび塩鮭が登場している。
常陸風土記(養老5/721) 久慈郡助川郷。川で鮭(サケ)がとれるので「助(すけ 現在では「マスノスケ」のことだとしているが単にサケかも)助川とした」。『たべもの話』(鈴木晋一 平凡社)
宇治拾遺集(1213-1221) 「犬童子鮭盗みたる事」は犬童子が越後からの鮭の荷を襲って盗む話。「醍醐寺を開いた理源大師聖宝」に干鮭(からざけ)が出てくる。これは塩をしないで干したもの。『たべもの話』(鈴木晋一 平凡社)
「鮭」と「鱒」の違い 本来我か国で「鮭(サケ)」とは標準和名のサケだけに使われていた言葉である。例えば英語の「サーモン(salmon サケ)」、「トラウト(trout マス)」が川に遡上して産卵、海に下るものを「サーモン」、一生を淡水でくらすものを「トラウト」と明解なので、我が国でも同様に説明しているのも見かけるが、これは明らかに間違い。我が国でとれるのはサケ、サクラマス、カラフトマスの三種が主だった。そこにサクラマス(ヤマメ、アマゴ)、アメマス(イワナ)などの陸封型が存在する。そこではサケのみが「サケ」、他のカラフトマスとサクラマスは「マス」と呼び分けた。
鮭鱒混同 明治期にニジマスが移入されたことも「鮭鱒混同」を作り出した原因だ。アメリカから移入したニジマスは主に湖沼に放流された。一般的にはまさか海に下るとは思わなかったのだろう。陸封型のサクラマス(ヤマメ、アマゴ)、アメマス(イワナ)も「マス」と呼んでいたために、淡水だけで生活環をとげられるニジマスとなったようだ。面白いのは本来我が国でとれないベニザケ、ギンザケだが、これは間違いなく古くからの和名ではなく動力船による漁が行われ始めた明治以降ではないかと思っている(これは調べているところ)。またベニザケなどは一時「べにます」と呼ばれた時期もある。
故事・祭事
鮭の宮まいり 「霜月十五日は、三面川のぬしである鮭太郎が、瀬波の多岐神社と、宮下の河内神社へおまいりする日だという。『鮭の宮まいり』、『鮭の恩がえし』、『鮭女房』などの話」、「『この日、漁師も網をおろさず、多岐神社と河内神社に参拝し、大漁の願をかけて祈るばかり…』と、いわれている」。『村上の歳時記』(矢部キヨ 村上市商工会議所)
年取り魚、正月魚 静岡県、長野県、新潟県などを境に東日本ではサケを、西日本ではブリを年取りの魚、正月用の魚にした。
鮭の日 11月11日。十一を縦に2つ重ねると鮭の右の文字になることから。新潟県村上市と築地の業者が作る。
又兵衛祭 岩手県宮古市
加工品
荒巻鮭 北前船が蝦夷地に塩を送り、帰りにサケを持ち帰っていた。その折に塩を詰めていた筵(むしろ)にサケを巻いて持ち帰ったため。
新巻鮭 遡上のために沿岸に集まってきた「秋味」を筵(むしろ)に巻いて塩漬けにしたもの。正月用という意味合いもあり、大手水産会社N社(旧日魯漁業か)が命名した? 『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)
鮭(しゃけ) 夏目漱石の『吾輩は猫である』に〈黒(猫)のうちのお神さんが大きな声を張り揚げて「おや棚に上げておいた鮭(しゃけ)がない。大変だ。……一切れ二銭三厘に相当する鮭の骨が……〉『吾輩は猫である』(夏目漱石 岩波文庫 1905-906 明治38-39)

から鮭のせんば煮 古川柳に「から鮭のせんば汁にする照手姫」。〈塩物の魚を汁で煮だしたのを船場煮ともいい〉。『明治東京風俗語事典』(正岡容 有光堂 1957)
こど漁
9月〜12月中旬まで行われる鈎(かぎ)を使ったサケ漁。「こど」とは上ってきたサケを寄せるための装置のこと。「ごど漁」には何種類かある。
川岸に箱形の流れをゆるめるサケの休息所を作り、入ってきたサケを鈎でひっかけてとる。
岸に足場を作り、タケザサや木を沈めて、近づいてきたサケを鈎で引っかける。(写真)
流れによどみを作るだけのこともある。人によってはおとりのサケを泳がせることもある。
 いずれにしても鈎で取るというのはもっとも原始的なサケ漁のひとつ。これが現存するのはここだけ。
[新潟県村上市府屋大川]
【道具】きっぱめ・せんめ アキザケが成熟度を増すとメスの体からイクラがこぼれだしてくる。このこぼれだしてくる穴をふさぐ木ぎれ、もしくはプラスティックでできた栓(せん)。岩手県大槌町。

地方名・市場名

ハナマガリ[鼻曲がり]
備考岩手県「南部鼻曲がり」は産卵で回遊してきた雄サケの吻(上あご)が成熟して曲がったことによる。当地で作られる「鮭の塩引き(新巻鮭)」は秋に作り夏まで保存する。このように長い期間保存するとき脂があると酸化して変色、苦みが出てくるので川に入って脂が少ない「鼻曲がり」をよしとしたことによる。 場所岩手県 
イオ ヨウ
場所山形県由良漁港 
イヨ イヨボヤ
場所新潟県村上市 
シャケ
備考東京ではシャケであり「平井」が「しらい」になるなど独特の音の変化が聞かれる。これも調べていく必要を感じる。また塩鮭は全国的にも「しおざけ」ではなく「しおじゃけ」となることが多い。 場所東京 
アキアジ[秋鮭] アキザケ[秋鮭] ギンゲ[銀毛] ブナ
サイズ / 時期秋・8月くらいから 備考秋に群れをなして産卵回遊して河川に近づいてきたものをアキアジ(秋鮭)、アキザケ(秋鮭)。 場所北海道、東北 
オオメ[大目] オオメマス[大目鱒]
サイズ / 時期春から初夏 備考春に回遊してくる未成魚(北海道の時不知)を。 場所岩手県、宮城県(聞き取りは気仙沼、石巻) 
ケイジ[鮭児] ケンチ[鮭児]
備考北海道で秋に「秋鮭」に混ざって知床、網走などでとれるものロシアの河川に遡上するサケが迷い込んだもので脂がのっていて美味。これと同じものを岩手県ではオオメ(大目)という。 場所北海道 
シベ カムイ・チェプ シロザケ[白鮭] ギンマス メジカ[目近] トキシラズ[時不知] トキシラズ
備考アイヌ語。 
アキアゲ アギアズ イオ イヌマス ウオ オオスケ オオスミ オオナマコ サケノイオ サケノオ シロ ナツザケ ビン ビンゴ ラシャマス
参考文献より。