氷頭なますを作るためにサケの1本買いをする
氷頭でやる酒やたらにうまし、晩秋の夜
久しぶりの「氷頭なます」にどうにも箸が止まらない。
日本酒にも合うので、ついつい杯を重ねることになり、終いにはコップ酒になる。
心地よくなって、この「氷頭(上顎の先端と目の間の皮と軟骨)を食べようと思った始まりの地はどこだろう?」なんて考えてしまう。
きっと村上市の人は、うちだ、といい。岩手の人も、うちだ、といいそうだ。
こりっこりっとして噛みしめると髄液のような、不思議な液体が出てくる。
軟骨なのにうま味がとても強いのはこの正体不明の液体のせいだろう。
分厚い皮に微かに脂と甘味があるのもいい。
ちなみに市販の「氷頭なます」で、うまいものに出合ったことがない。
また作るしかないけど、来季かも知れぬ。
サケでいちばん好きなのが目の前方の氷頭
八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に岩手県普代から2.5kgの雄のサケが来ていた。
不漁なので今年はサケを買えないだろうと思っていた。
雄なのでそんなに高くない。だんだんとれなくなってきているので、もっと高くていい気がするが、昔はあまり相手にされなかった2㎏弱なので、10年前の3倍以上は妥当かも。
ちなみに雌は卵巣(筋子)があるので高いが、身も内臓も雄の方が遙かにおいしいのである。
買い求めて真っ先に作るのが「氷頭なます」である。
サケですら日常的な食べ物ではなかったので、学生時代に書籍で読むまで「氷頭なます」の存在をしらなかった。
初めて食べたのは、おんぼろシビックで、新潟県村上市まで旅をしたときだ。関越トンネルの開通前、やっとたどり着いた新潟市から、ただただ北上して、岩船港のサケを売る店で買い、村上市内の居酒屋で食べた。
作り方は、新潟県、山形県、岩手県で教わっているので、東北のサケの産地で広く作られているのだろう。
また「氷頭なます」が数ヶ月にわたって食べるものだという事を知ったのは、2015年のこと。村上市府屋のオバアサンから「塩引き鮭の氷頭(頭部上顎の部分で主に軟骨を氷頭という)を使って大量に作る」という話を聞いてからだ。「今年はまだ出来ていないので、来月おいで」と言われたが、行けるわけがない。
余談になるが、村上市でカラフトマスの氷頭で作ると言う人にも会っている。村上市周辺はサケだけではなく、カラフトマスの消費量も多い。
この、「サケの消費量の多い地域でのカラフトマスの消費」に関して詳しく調べると面白いに違いないと思っている。
ちなみに塩引き鮭、塩ザケで作ると少し渋味があって、それほどおいしいとは思えない。生のサケの氷頭で作った方が遙かにおいしい。