兵庫県香住浜貞商店の焼にぎすと豆腐をたく
焼にぎすの豊かなうま味が豆腐へと移る
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昔、大阪府、兵庫県や岡山県の山間部で淡水魚の「はえ(オイカワ)」を焼き、弁慶(藁を束ねたもの)に挿して干したもの(焼き枯らし)をたきものに使っていた。
この「はえの焼き干し」が手に入らなくなったところに、日本海のニギスを浜で焼いた「焼にぎす」が入ってきて、代わりに使ったみたら「はえ」以上にうまかった。
以後、「焼にぎす」が山間部だけではなく都市部にも広がったという話を、大阪市での水産の集まりで聞いている。
兵庫県美方郡香美町で「焼にぎす」を作っている『浜貞商店』のパンフレットに「焼きす、豆腐、ねぎの炊き合わせ」がある。
現在では「焼にぎす」だが、古くは単に「焼きす」だったことがわかる。
横道に逸れるが、最近、なんでもかんでも標準和名にすべき、とか標準和名が正しい名だとかいう愚か者がいるが、やはり本来の「焼きす」がいいと思っている。
さて、消費地での話では、田辺聖子の小説、『朝ごはんぬき?』(田辺聖子 新潮文庫 1979年単行本 1982年文庫化)に「焼にぎす」のことが出ている。
ちなみに田辺聖子は食通ではないが、食に関しては実にリアルである。食通以上に食のわかる人と言ってもいいだろう。
1970年代、神戸市の普通の通念がこの会話に出ている。
主人公、お手伝い兼秘書の明田マリ子が、小説家、秋本えりかの夫、土井氏に。
「買物をしますが、何かお好きなもの、ありますか。———でも、お口に合うようなお料理ができるかどうかわかりませんけど……」
「うーん。そやな。では……」
と土井氏は起き上がった。
「キスの焼いたのを串にさして売ってますなあ。あれを甘辛う煮(た)いて、そのおつゆで焼豆腐をたいて下さい……」
明田マリ子はこの日、新しいスーパーではなく、その奥の市場で買い物をする。
会話の中の「キス」はシロギスである可能性もゼロではないが、当時からシロギスは高級だった。とても市場で気軽に買えるものではない。
明らかに、日本海から来ていた「焼にぎす」である。
兵庫県神戸市湊川に住んでいた田辺聖子が通っていたのが湊川の市場である。
この市場や商店街で作り方などは、市場で聞いた可能性が強い。
この「焼にぎすと焼豆腐のたいたもの」を実際に作ってみる。
まずは「焼にぎす」を酒・みりん・醤油・水で甘辛くたく(関西の料理なので煮るではなくたく)。
「焼にぎす」を取り出して、今度は焼き豆腐をたく。
ねぎなどはお好みで加え、炊き上がりを皿に盛る。
浜で焼いたニギスから脂と濃厚な味が出る。
甘辛くたいた「焼にぎす」のおいしさに驚くかも知れないが、本命は焼き豆腐で、味に滅法奥行きがある。
また、内臓の入ったままたくと、こくのある味になるが、苦みが出るので万人向きとは言い難い。
取った方が苦みが少なくて、ご飯などに合う。

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イラスト図解 寿司ネタ1年生



