アオメエソの唐揚げは原始的だからこそうまい


一般に「目光(めひかり)」と呼ばれることの多いアオメエソ科のアオメエソとマルアオメエソは生息域は違っているが、形態的に違いを見いだせないでいた。1980年代初めに茨城県で「めひかり(マルアオメエソ)」を手に入れて、1990年代に静岡県沼津市で「とろぼっち(アオメエソ)」を手に入れたときなど、写真を撮り、トレスコープで同じ大きさに拡大して何十回とためつすがめつしてもわからなかった。
今、やっとマルアオメエソが消滅した模様だが、なぜか和名だけは鹿児島大学のリストにも残っている。往生際が悪いとは思うものの、今年から銚子以北のマルアオメエソとされたものもアオメエソとする。
ちなみに標準和名は国内のわずかな人しか知らないと思う。昔、あるマスコミでの打ち合わせでイサキを知らないという女性が「めひかりは好きです」と言ったのに驚いたことがある。イサキは比較的浅場に多く、たぶん縄文時代からお馴染みの魚である。対するに「めひかり」、アオメエソは動力船が国内で導入し始めた昭和になってからの魚なのだ。一般流通し始めたのは1990年代になってからだと思っている。
この、「魚の常識のゆがみ」ってのは日常が消滅して、魚の名がいきなりマスコミとかネットから下りてくるようになって生じたのだな、などと思う。これなど眼の前にあるものを見ず、情報を受けて始めて知る。ある意味、鬼の絵は描けるけど犬の絵は描けない、ていのものだ。


さて、八王子綜合卸売協同組合、マル幸水産に銚子からアオメエソがきていた。底曳き網で揚がったものではあるが鮮度は上々。考えてみると底曳き網の季節到来でもある。
これを、もう40年以上前に、おんぼろシビックで茨城県を走り回っていたとき、魚屋で初めて味見させてもらった「めひかりの唐揚げ」にする。当時、茨城県に行くたびに魚屋で唐揚げを買い求めているので、当時からもっとも一般的な料理法だったのだろう。
さて、なぜアオメエソは唐揚げにしてうまいのだろう? たぶん深海魚で、深海の中層域を漂って暮らしている。このときの浮力を特有の脂分をため込むことで得ているのだと思う。まずはこの脂分が揚げ物にしたとき半液化して味わいとなる。
次いで骨が柔らかいことだ。アオメエソの円鱗上目は比較的原始的な魚なのである。スズキやマダイなど高等な骨や棘を持っているのに対して鰭は軟条だし、骨は非常に柔らかいし。
当然、揚げるとまるごとさくさくと食べられる。
持ち帰ったら測定して撮影。頭を落として水洗いする。
これをタオルにくるんで冷蔵庫に放り込む。
揚げる1時間くらい前に片栗粉をまぶして置き、じっくり時間をかけて揚げる。表面だけさくっとし、独特の脂のためにふんわり揚がり、魚らしいうま味と脂の口溶け感というか豊潤さが感じられる。
今回は揚げ上がりに塩ではなく、酢醤油を軽く振ったけど、最近、この酢の軽さがとても好ましい。
ビールではなく頂き物のノンアルコールビールだったが、最近の、はかなりいける。


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