爪の先アオリのアヒージョ

ワタルさんのさかなは国内随一の鮮度を誇る


神奈川県小田原市、江の安定置、ワタルさんにアオリイカの極小と小をいただく。
「アヒージョにしなよ」
とてもアヒージョという言葉が出てくるような人には見えないので、ビックリしたが、実にありがたい。
ワタルさん、ありがとう!
相模湾のアオリイカは晩春から梅雨時にかけて産卵するのだと思う。
7月も中旬になると大人の爪くらい(外套長1cm前後)の大きさが定置網に入る。
下旬になると握りの、丸漬けにはならないが、二枚漬けくらいにはなるサイズが混ざる。


今回は大小まぜこぜである。
せっかくなので並んだ発泡の隙間に混ざっている爪サイズを、少しひろい足して持ち帰る。
市場で「何やっているの?」とボクの手許をのぞき込んだ人、「爪の先アオリひろいしてました」なのだ。


ワタルさんのものは刺身にはなるという鮮度とサイズだが、できるだけ小さいのを選り分けて、アドバイス通りにアヒージョを作る。
ボクの初アヒージョはわからないが、最近出て来たプリント写真で見ると、考えていたよりも昔、2000年代くらいには食べていたようだ。
都心では何カ所かで仕事をしており、その一軒露地を挟んで前がスペインだかポルトガルだかの料理店だった。そこで最初にお願いする料理がアヒージョだったようだ。魚貝だけではなく、エリンギ、トマトやいろんなハーブ類が入っていたのでわからなかったのだ。
ちなみにアヒージョが本来、魚介類とにんにくと油だけの単純な料理だと知ったのは2010年以降のことである。
ということで料理法は非常に単純。
爪サイズをより分けて、流水でざっと洗う。
耐熱性の器の中に大量のにんにく、オリーブオイル、今回はほんの少しのハバネロ、爪の先アオリを入れて塩コショウする。
あとは火をつけ、まるで石川五右衛門が釜ゆで焼かれるごとくである爪アオリを、豊臣秀吉になった気分で眺め待つ。
思ったよりも水分が出たな、と心配したものの、1ぱい口に入れただけで懸念が吹き飛ぶ。1ぱい、1ぱいが濃厚うまいのである。
ボクは最近、辛いのが苦手なのだけど、超みじん切りにしたハバネロの辛さもいい。
アヒージョは油を食べる料理でもあるが、今回の油、ボクの料理史に残るうまさであった。
最近、夢中になっている普通のバタールよりも100円だけ高い、近所のパン屋のバタールが半分消滅するくらいにうまい。


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