鰯の蒲焼きは風なのか

非常に昔から作られている歴史のある料理


NHK『今日の料理』はたぶん4、5歳くらいから見ている。家の事情で自宅にいなければいけなかったのもあり、大人に始まりの時間を教わってまで見ていた。小学生から中学生のときは『暮らしの手帖』を自宅で、ときに親戚の家にまで出掛けて読んでいた。ボクは幼時から料理番組と料理がのっている雑誌にキの字だったのである。
学生時代に江戸川区小岩の魚屋で下ろして売っていたマイワシを買い、初めて作った魚料理のひとつが「鰯の蒲焼き風」だ。山間部育ちなので、あまり魚を食べないまま上京してきて、なんとか好きになりたいと思い始めていたときだ。作り方は『暮らしの手帖』にあったものをそのまま作った記憶がある。『暮らしの手帖』は田舎の家から持って上京した本のひとつである。
今や普通の家庭料理である、「鰯の蒲焼き風」の歴史は非常に古く、半世紀以上前にだれかが考えたものということになる。
梅雨入りとともに鳥取県境港産の通常仕立てのマイワシが来ていて、少しずつ買っては計測するとともにいろんな料理を作っている。たまには目先を変えてと思って作ったのが、この懐かしい「鰯の蒲焼き風」である。
余談だが、同じ料理を豊島区駒込の商店街では「いわしの蒲焼き」として売られていた。ウナギの蒲焼きのように焼くのではなく、フライパンでソテーするからつけられていた「風」などは今や不要で、「鰯の蒲焼き」でいいのかも知れない。

おかずにするよりも丼、かな


非常に簡単な料理で、誰が作ってもやたらにおいしくて、丼にすると「うな丼」とまではいかないが、決してひけを取らない味となる。
たれを作る。我が家のたれは非常に簡単至極、酒1・みりん1を鍋に入れてアルコールを飛ばす、アルコールが飛んだら醤油1と山椒を加えて一煮立ちさせながら味見。ボクは甘いのが好きなので砂糖を加える。
マイワシは水洗いして手開きにして左右の身を分ける。
水分をよくきり、小麦粉をまぶす。このとき塩コショウする人がいるが、ボクは最近矢鱈に塩分に敏感になっているので、省く。
フライパンに多めの油を入れ、小麦粉をまぶしたマイワシをソテーする。
熱が通ったら、ネギ少々とたれを加えて絡める。
これをご飯にタレごと乗せていたが、気まぐれなボクは、最近はソテーしたときのタレは捨てることにしている。
ご飯をよそい、たれをご飯に適度にかける。
蒲焼きを乗せて、再度、タレをかける。
「鰯の蒲焼き丼」は食べる速度に気をつけたい。ブレーキ、ブレーキかけながら、ゆっくり味わって食わないと、食べたことを忘れて、もう一杯食べたくなる。
「鰯の蒲焼き丼」は誰が作っても、何時作っても、少々失敗してもうまし、なのだ。



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