聖子を探す旅8 苦難の果て、東山商店街でうまい酒とうどんにたどり着く

この灯りがなかったらコンビニ飯だったかも


1928年(昭和3年)、田辺聖子は大阪府大阪市福島の商店街で生まれ、兵庫県尼崎市出屋敷、兵庫県神戸市異人館通り、同市湊川神社上、そして兵庫県伊丹市と居を移している。ある意味、田辺聖子は摂津のエトランジェである。
湊川神社上(山に近い方が上、海に近い方が下)に住んでいたので、湊川の市場と隣り合わせの東山商店街にも来ていたはずだ。

初めて歩く、東山商店街は非常に長く、また路地が木の枝のように伸びて、そこにも商店が並んでいた。雷と土砂降りの雨で、夕闇迫る商店街には人がまばら、ほとんどの店が閉まっている。
途中、店仕舞い中の豆腐店『原商店』の方にご飯を食べられるところを聞く。商店街を奥に行くとロータリー(?)に行き当たり、そこに「うどん屋」があるという。

店を選んでいる余裕はないし、だいたい食べ歩きなんてやったことがない。予めネットで調べたことがないので、旅先の食事は博打に近い。
この日は伊丹市からして歩きに歩き、雨に打たれてまた歩きで疲れと、空腹で行き倒れてしまいそうだった。
商店街を上ると奥の方に灯りが見え、「手打ちうどん」とある。
砂漠でオアシスといった思いがこみ上げてくる。

ボクには冷えすぎだけど、それでも疲れたときのビールはうまい


その時点で店名はわからなかったが、店に入ると店内は地元の方が多い。店内が清潔で、店員さんの対応がていねいでほどよい。大将らしきは背を向けて何かを揚げている。
まずはビールだが、つまむものは揚げ物しかない。仕方なく「明石れんこん」と「鶏天ぷら」をお願いする。
ビールはキリンで、グラスが冷え冷え、ボクにはちょっと冷えすぎだけど、どろどろに疲れたときのビールは名状しがたい。

最近、やけに鶏肉がまずいと思っていたら、ここにおいしい鶏肉があった


最初に出て来たのは「鶏天ぷら」である。鶏肉嫌いではないが、最近、仕事の時の弁当に唐揚げが入っていることが多いが、この今どきの鶏肉がとてもまずいのだ。最近、まったく鶏めかないのは唐揚げブームのせいだ。
ところが、この店の「とり天」は鶏肉自体がおいしい。しかも表面と身の香ばしさ、豊潤さの差が大きいのも素晴らしい。
鶏肉の天ぷらは珍しいと思うが、長い人生の間に何度か食べている。でもこれほどおいしい「鶏天ぷら」は初めてだ。

明石というとタイだけど、れんこんも、主役だったのか


酒を「奥播磨(下村酒造店 兵庫県姫路市安富町)」にしたら、「明石れんこんの天ぷら」が来た。明石には何度も行っているが、れんこん畑は見ていない。目の前の天ぷらからすると、肉厚で元の大きさが推し量れる。れんこんも明石名物だったんだ。
おいしいというと月並みだけど、れんこんの香りってこんなによかったんだろうか。熱の通し方がいいのか、ほどよく硬い。分厚い天ぷらが4個並んでいて、多いなと思ったが、あっけなく食べ終わる。

手打ちうどんの店で手打ちうどんがうまいのは当たり前、か


天ぷらのおいしさに有頂天になって、その締めに「うどん」と思い、いちばん単純な、「おろし醤油うどん」にした。
すだち半切りがのったゆでたてのうどん、というシンプルなものだったが、味の存在感が非常に大きい。おいしさにボリュームがあると言ったらいいだろうか? うどんだけで食べたくなるほどのうどんである。
もちろん醤油をかけおろしと混ぜて、食べたら完成した味わいになる。
ちなみに関西は関東よりも日常的な食事がうまい。ごまかしがなく、普通にうまいといったらわかるだろうか? 6月13日の外食は2食と当たりだった。 

帰り方を聞いて、神戸駅にたどりつき、ホテルで意識なく眠る。
■はまもと 兵庫県神戸市兵庫区東山町

田辺聖子の小説の舞台は田辺聖子とともに引っ越す


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