矢野誠一、「猫久」の鰯のぬた

矢野誠一の死をしのびながら鰯のぬたで正一合


〈鰯こしらいとくれ、鰯を。南風が吹いてるんだよ、ぽかときているんだよ、腐っちまうよ、い、わ、しッ〉
五代目、柳家小さんが得意としていた、『猫久』という話の一説である。
ここに出てくるのが、「鰯のぬた」だ。

矢野誠一の『落語長屋の四季の味』に出てくる。
先月なくなった矢野誠一のエッセイや評論はすべて我が家にある。
落語はそんなに好きではないというか、時間がないのでじっくり聞いていられないのだけど、矢野誠一の文章は好きでならない。
矢野誠一の死で「東京やなぎ句会」は全員が冥土に旅立ったことになる。
ひとつの時代が終わったのだ。

さて、時代は不明だが、「猫久」には髪結床が出てくるくらいなので、江戸時代を設定としているのだろう。
昼飯のおかずに、亭主の熊さんが鰯をおろして、女房がみそをすり鉢ですり、酢みそを作るのが「鰯のぬた」だ。
髪結床から帰って来たばかりの熊さんに女房が早く鰯をおろせとせっつく。
言われた熊さんが、髪結床で聞いた話を話している隙に、猫がやって来て鰯をくわえていく。
落ちはわかりにくいが長屋の風景が浮かんでくるようである。

せっかくなので鰯(マイワシ)を買って来て、手開きにする。
振り塩をして少し寝かせ、酢で一度洗ってそのまま少し置く。
水分をきり、酢みそをかけてご飯ではなく、酒を一合。
鰯のぬたで酒を飲みながら矢野誠一のエッセイを読む。


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