難易度高めのオニサザエ

触るといかに刺々しいかがわかる


三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にオニサザエが入っていた。せっかくなので「食用貝類基本のキ」を書く。
オニサザエは食用貝だが、認知度はきわめて低い。
知っていたら学者級である。

オニサザエはアッキガイ科テングガイ属の巻き貝だ。
この属の巻き貝は国内に約16種いるが、大型は総て食用貝である可能性が高く、おしなべて味がいい。
本種は房総半島・能登半島以南の浅い磯(岩礁域)に生息している。
褐色で岩そのものの色合いで黒褐色で、非常に刺々しい。
棘はざらついて長い。

ちなみに同じアッキガイ科テングガイ属のオニサザエ、センジュモドキ、ガンゼキボラの3種は同じように浅い岩礁域にいて、同じ食文化を作っている。
手に入れていないがセンジュガイもそこに入ると思われる。
4種は非常に似ていて、貝の同定に熟達していないと区別がつかないので、よくとり違えられていることも知って置くべきだ。
ただし実見した限りでは、いちばん小売店などで見かける機会が多いのがオニサザエで、また地方名も多い。

『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)とボク自身が集めた呼び名を整理するとその特徴が浮かんでくる。
「棘」や「針」、「鬼」がつく名前が多いのは棘だらけだから。
鳥羽市安楽島の「がんこーじ」は直感的だが「岩」に関係しているでは、と考えている。同様な例では「岩ぼら」がある。「さざえ」と呼ぶ地域があるがこれも「細石」の転訛だとしたら石のことだ。
「鬼の手拳」、「鬼の手ご」なども貝殻が非常に硬いことと、その刺々しいところから来たのだろう。

とってもおいしいので、食べ始めると止まらなくなる


日本海で食べている地域は確認できていない。太平洋側でも黒潮の影響の強い房総半島南部、伊豆半島南部、紀伊半島、四国太平洋側、熊本県天草地方、宮崎県、鹿児島県で食べられている。
磯の貝類が豊富なときは売り物ではなかったので、知る人ぞ知るといった存在だったはず。
今でも本種を食べた経験のある人はごくわずかでしかない。

非常においしい巻き貝で塩ゆでにして食べると味がある。
取り出しては、食べると、いい酒の肴になる。
もしも出合う機会があれば、見た目は地味だが、ぜひとも食べて欲しいものである。
三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんと安楽島新鮮組のみなさんに感謝!


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