今季初サヨリ

春は苦みの♪


あまりにも慌ただしい日々で、2月中旬も終わろうとしているときの今季初サヨリとは、ちょっとばかり遅い、とは思うものの、ボクの年で季節を感じる暇もなし、というのは悪くない
考えてみるとそこここにバラ科の花が咲き始めている。この梅か桜か、桃かわからない花をなんというのかわからないが、まばゆいばかりの美しさに春に置いて行かれる気がしてあせる。
せめて市場歩きで春らしいものをと思っていたら、サヨリの嘴が赤くキラキラしたのを見つけて無意識に買ってしまった。海の春一番は兵庫県淡路島産である。
この時季、二艘曳の「鱵船(季語では鱵だが、漢字としては本草綱目のもので間違い)」が紀伊水道を瀬戸内海をいく。ただただ何も考えないで見る二艘曳ほどのどかで、まったりした風景はない。

華奢だけど強い味


全長26cm前後と言っても1尾50gしかない。ボクの年だと浅丘ルリ子みたいなといった体形の魚である。こんな小さな個体でもそれなりに値が張るのは、他に代えがたい本種でしか味わえないおいしさがあるためである。今年はことさらに高いのは全国的な水産魚貝類の不漁のためでもある。
軽く一つかみ4尾を買って、素直に刺身にし、塩焼きにして食べる。値段を考えると刺身が普通だが、食べたかったのは塩焼きである。
春になり心と体が欲するのは苦みで、サヨリなどは強いうま味の中に苦みがあり、ここに高級魚としての意味がある。
でもなんといっても、トリは塩焼きである。今季の値段で際限なく飽食するのは危険だけど、焼いては手づかみで食らっているときりがない。サヨリもサンマも同じダツ目で同じように強いうま味があるが、サヨリのうま味は白身のうま味であって、サンマのように浮き魚の、直なものではない。
昔は秋にサンマ、春にサヨリとリレーしていたが、今季はサンマが失速、サヨリも高騰で先行きが危ぶまれる。
それでも探すぞ、サヨリちゃん、なのだ。


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