オオクチイケカツオの日本列島での旬

今のところ、国内ではぎりぎりのところではあるが珍魚である


業者の方から問い合わせで送られて来た画像を見て、一瞬でその魚が欲しくなることがある。
今回は送られて来た写真に「ミナミイケカツオですか?」とあり、それだけで画像を見ないで確保した。全体像を見てオオクチイケカツオだと気づいた。
喉から手が出るほど欲しいのはミナミイケカツオの方だけど、オオクチイケカツオだってそれなりに欲しいので、買って後悔したわけではない。

このイケカツオ類(アジ科イケカツオ属)のイケカツオ、ミナミイケカツオは昔、沖縄では専門の漁があったという。
ところが九州以北では小型が多い上にめったに揚がらない。
国内では疎遠な魚といっていい。
ましてや国内海域にいないはずのオオクチイケカツオが主に鹿児島県、宮崎県にしても九州で揚がり始めたというのは、やはり温暖化のせいだろう。

オオクチイケカツオが1924に、この国の魚類学に登場した際の標本は明らかに当時統治していた台湾のものである。
当然、いまでも台湾では馴染みのある食用魚だ。
そんなに高くなく、市場などで見つけて、日常の惣菜用に買うといった魚だと思っている。
ところが鹿児島県などで揚がると競り値からして、明らかに高級魚といってもいい。
なぜだろう?
台湾とこの国のアジ科の魚に対する評価の違いによるものだろうと考えている。
また魚は北上するほど脂がのりやすくなる、のではないか、というのもある。
これらは今現在この魚に関する課題である。
また台湾に行って、本種と対面したいものだ。

寒い時季には身に滑らかさが感じられなかった


さて、今回の個体は2.7kgで、生殖巣は膨らんでいない。
前回の12月の個体は脂はのっていたものの、決して最上級の味ではなかった。
それが3月の個体は脂がある上に身がなめらかで文句なしの味わいだった。
本種も他のアジ科の魚同様に春から初夏においしいのかも知れない。
そんなことからも今回の個体はありがたかった。
問い合わせてくれた、鹿児島市の久保和博さんに感謝致します。


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