南会津の旅 南会津町岩下、雪の下の「おでん大根」

太い重い、見た目が悪い昔ながらの雪の下大根


新暦の初午の日は2月6日、二の午は2月18日である。南会津、午の日に行われる行事に欠かせない郷土料理「つむづかり」の、材料の主役は大根である。
福島県会津地方でも南会津町は山の中であり、雪深いところであるが、「つむづかり」の大根はこの時季、雪の積もる前に収穫して保存して置いたものを使う。
その雪の下の大根を、二の午の日に、岩下の『みどりや』さんに分けてもらって来た。

原産地のわからない大根の、国内への移入時期は非常に古い。歴史時代以前からある。
寒冷なところでも作れる。歩留まりがよく、生でも食べられるし、煮ておいしいなど、これほど優れた野菜は他にはない。
歴史のある野菜なので、その土地土地で生まれた品種が無数にある。今でも地方に行くと日本各地に在来種が散らばっていて、買うのが楽しみである。土地土地の在来種を手に入ると、大根という野菜の奥深さを感じずにはいられない。
東京都内では、最近、愛知系のF1ばかりで在来種はなかなか手に入らない。F1がダメだというわけでないが、程よい大きさで、あくが少なく、筋がなく均質な、今どきの大根ばかりを食べている気がする。今回は地元のみなさんにとてもお世話になったが、この大根など予想外のものでありがたいとしかいいようがない。

今回いただいた大根はなんと2㎏以上の大大根である。地元では煮崩れないので「おでん大根」というらしい。
ずんどうで直径が15cm前後もある。表面は泥で汚れているようだったので、タワシでこすったが一向に取れない。染みついているようなのだ。
今どきこんな大大根はスーパーで売っていても、牛乳パック2本分の重さでは誰も買わないだろう。

何時間煮ても一向に柔らかくならない


さて、包丁を入れたらなかなか刃がたたない。体重をかけて切る。
皮を剥いてせん切りにして干す。面取りはしない。

これを水煮にする。大根の水煮は京都五条で会った元芸妓さんに教わったもの。
大根は「水でことこと煮るのがいちばん。(大根から)ええだしが出ます」という、どこかの寺でやっているというやり方で煮る。
テキストを打ちながら、ことこと煮ると部屋が暖まるし、大根も煮えるしで一石二鳥である。
初日は6時間、翌日は12時間煮て、翌々日は温める程度で煮て食べきった。

完全無欠の精進料理とする


何時間煮ても柔らかくはならない。歯ごたえがある。小食なら一切れはとても食べられないだろう。合わせたのは単なる辛子味噌。
水で煮たのに、びっくりするほど味わい深い。おいしさに奥行きがある。面白いことに煮汁にうま味がある。
3日間連続で食べても飽きない味だった。

大根尽くしにしても嫌じゃない


「切り干し大根をたいたん」に、「塩もみ柚子の香」と大根尽くしも悪くなかった。
ちなみに1切れ食べるとお腹がくちくなり、ご飯が入らなくなる。
ものすごく痩せて、見違えるようになった。


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