数え日の新潟旅 上越高田のそば屋さんは優し

数分後に地獄が待っているなんて思えない城下町


高田城からとぼとぼ歩き始めたら、遠くの方でどーーーんがどーん、と凄い音がした。木がバキバキ折れるような音までする。そのときまだボクはこの冬の雷の怖さを知らなかったのだ。
雷が近づいてきているな、と思った途端、歩道に白いものが点々と弾ける。
点々とだったのはほんの少しだけで、どどどざざざと大きな氷の塊が頭を叩く。大急ぎで車にもどり傘を差したときにはずぶ濡れだった。

あっと言う間に真っ白な世界に


このまま車で眠ってもいいな、とは思ったものの、まだ4時台なのである。
高田城の橋まで歩いたら、また雷で、また雹が傘を押しつける。
結局一番近いところにあったそば屋に飛び込んだ。
そこにはひょっこりしたオカミサンがいて、びしょ濡れなのを見て、石油ストーブの前の席に導いてくれて、脱いだダウンを広げて乾かせてもらう。
それにしても体の凍えはなかなか引かない。

凍えた体に冷たいビールがうまいな


それでもビールをお願いしたらいろんなものがくっついてきた。
冷たい体にほどよく冷えたビールがうまい。
ビールのおまけにしては充実している。
地味なサラダがうまい。

お願いしたのはカツ丼のカツのようなものだけど


カツ丼のカツとかありますか?
とお願いすると、またまたカツとか揚げ物とか、いろいろ出て来た。
スキー正宗常温をお願いしたら、もう1品ついてきた。
しかも上越市のサメの情報までいただけた。
あまりにもありがたい情報だったので、
「すごくいい話をありがとうございます」
とうれし涙がポロリ、ポロリ。

結局、そばは食べず終い、なんとも不思議な上越高田の夜だった


「うちのおかずだけど」と鶏とこんにゃくなどの煮物までやって来た。
みな素朴でおいしいものばかり、ついでに体の湿気が湯気と一緒にふわわわあわと取れていく。
まさか冬の雷の後に極楽が待っているなんて。
まことに不思議な上越市高田の夜だったけど、支払いをしてもっとビックリした。
どうもすみませんの、ありがとさん。


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