一年振りのゾウリエビを焼いてみた

焼いて真半分に割ってから食べるのだけど、割ると身が弾け出る


とても奇妙な姿なので、初めて見る人はびっくりしそうである。ただしそんなに珍しいエビではない。日本列島の暖かい海域の岩場に普通にいる。
イセエビの刺し網などに混ざってとれ、昔は見向きもされなかったが、近年、人気急上昇中である。
漢字「草履海老」、「足袋海老」などの名があるが、たしかに草履にも足袋にも似ている。
大きなくくりではイセエビに近く(イセエビ下目)、もっと近い親戚筋には、ミナミゾウリエビ、セミエビ、コブセミエビ、ウチワエビ、オオバウチワエビ、ウチワエビモドキ(以上セミエビ科)がいる。
以上総てが今現在、この国では高級エビとして人気が高い。
ただし、知名度が高いわけではない。
この中で1種類でも見た事のある人は、かなりエビを知っていると思う。

今回はかなり残酷なやり方で料理した。
いつもはゆでているが、今回は焼き上げたのだ。
焼いている最中から強いエビの香りが部屋に充満する。
この香りがたまらないという人は真のエビ好きだろう。

少なかったけれどみそもいい味だった。


軍手をして焼き上がったものを割ると、にょごっとぷるんと身が飛び出してくる。
後はかぶりつくだけだけど、非常に強い甘味とエビの風味で口の中がいっぱいいっぱいになる。
できればほどほどに頬張ったほうがよいだろう。
頭部にあるみそが今回はちょっぴりだったけど甘い。
エビを食っているぞ、と心底から感じてしまう。
頭の中にゾウリエビの味が充満して、ビールを用意したがグラスに注ぐさえ忘れていた。

可愛い妖怪と呼んでね、と言ってるみたい


10月4日、神奈川県小田原魚市場、活魚槽にゾウリエビがまとまって入っていた。ムムムだった。こんなにたくさん競り落としてもらってもどうしようもない。
そこに我が競り人である、さんの水産さんがやってきて、「大丈夫ですよ」。
そうだきっとスーパー ヤオマサのナイトウさんがなんとかしてくれる。
実際、なんとかなった。
ボクが欲しかったのは1尾だけなので、ナイトウさんにお願いして分けていただく。
ナイトウさんの住まいの方向には足を向けて眠りませぬ。

生きているのにいきなり炎の上に


持ち帰って、流水で洗い湿らせたペーパータオルを巻き、冷蔵庫で眠っていただく。
今回の大きさは全長19cm・182gなので平均的なサイズである。
食べる直前にいきなり直火で甲羅の方からあぶる。
これで動かなくなるので足を上にして上火でじっくり焼き上げる。


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