マツダイ

Scientific Name / Lobotes surinamensis (Bloch,1790)

マツダイの形態写真

80cm SL を超えることもある。体高があり強く側へんする。楕円形で黒い。全体を硬く大きな鱗(櫛鱗/しつりん)が覆っている。幼魚は枯れた木の葉型。
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80cm SL を超えることもある。体高があり強く側へんする。楕円形で黒い。全体を硬く大きな鱗(櫛鱗/しつりん)が覆っている。幼魚は枯れた木の葉型。幼魚は枯れた木の葉型。触ると跳ねる。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目マツダイ科マツダイ属

    外国名

    学名

    Lobotes surinamensis (Bloch,1790)

    漢字・学名由来

    漢字 松鯛 Matudai
    由来 「松」がつく呼び名は神奈川県、長崎県の「マツバダイ(松葉鯛)」だけ。マツダイの出所は田中茂穂も不明としている。本種の形態で「松」というと鱗が松ぼっくりを思わせる、もしくは松の木肌を思わせるくらいしかない。
    〈マツダヒ科マツダヒ〉。『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)
    Bloch
    Marcus Élieser Bloch(マルクス・エリエゼル・ブロッホ 1723-1799 ドイツ)。医師、博物学者。ヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー(Johann Gottlob Theaenus Schneider)とともに『110の画像付分類魚類学』を刊行。

    地方名・市場名

    生息域

    汽水・海水魚。内湾、汽水域や外洋の漂流物のふきん。幼魚、若魚は海の表面の漂い木の葉に擬態する。
    北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、琉球列島。
    台湾、山東省・福建省・広東省、東部をのぞく太平洋の温帯・熱帯域。

    生態

    幼魚のときには、木の葉や木の破片などに擬態して水面を漂っている。人などの気配がすると跳ね上がる。
    体内から小魚などが出てくることが多い。
    成魚になっても水面近くを漂う。

    基本情報

    東部太平洋の日本列島から中国大陸にかけての汽水域、内湾に生息している。
    あまりまとまってとれる魚ではないので、一般的には知られていない。
    珍しいとまでは言えないが、入荷量は非常に少ない。

    水産基本情報

    市場での評価 まとまってとれることはない。単独でとれたり、数匹の水揚げだったり。当然流通の場でも珍しいもののひとつだ。相模湾では近年増えていて、夏の魚として認知されつつある。値段はやや高値。
    漁法 定置網
    産地(漁獲量の多い順)

    選び方

    外見ではよしあしがわからない。鰓などをよく見て鮮紅色のものを選ぶ。

    味わい

    脂がのるのは寒い時季ではないかと思うが、水揚げ量は少ない。水揚げの増えるのは夏で、そこそこに味があるので、旬は夏としてもいいと考えている。
    鱗はやや小さく硬く取りにくい。狭い空間で処理するには包丁ですき引きした方がいいかも。骨は硬い。
    血合いの赤い透明感のある白身で熱を通しても強くしまらない。身質はタイ科の魚に似ている。
    マツダイの鱗マツダイの鱗 鱗は普通に引くと硬く、飛び散りやすい。むしろ包丁ですき引きにした方がやりやすい。
    マツダイの切り身マツダイの切り身 切り身にした姿はクロダイに近い。熱を通しても強く縮まず、皮に香りがある。
    マツダイのフィレマツダイのフィレ 透明感のある白身で血合いが赤い。クロダイに似たフィレだ。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    マツダイの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身)、焼く(塩焼き、魚田)、ソテー(ポワレ、ムニエル)、揚げる(フライ、唐揚げ)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)
    マツダイの刺身 水洗いして三枚に下ろす。皮を引き刺身にする。血合いが赤く、透明感のある白身でとてもきれいである。活魚は食感が強くうま味も豊かである。嫌みのない味わいで食べ飽きない。

    マツダイのカルパッチョ 水洗いして三枚に下ろして皮を引く。できるだけ薄く切りつける。皿ににんにくをなすりつけ、塩・コショウとオリーブオイルを敷く。ここに切り身を並べて行く。並べ終わったらスプーンの裏側でとんとんとたたいて馴染ませて、上からも塩・コショウをふり、好みの野菜などを乗せて再びオリーブオイルをかける。
    マツダイの刺身中華風 本種の欠点は突出していい部分、もしくは味に個性がないところだ。その分、料理法を選ばない魚であるものの、物足りなさを感じる。ここでは刺身状に薄く切り、野菜のせん切りの上に乗せて、中華風のタレをかけたもの。タレは中国醤油・香酢(中国酢)・ごま油・にんにく・黒粒コショウを合わせたもの。刺身の上に揚げたにんにく、玉ねぎ、ナッツ類をかける(ここで使ったのは市販品)。夏向きの料理で野菜もたっぷり摂れる。
    マツダイの煮つけ かまの部分をにつけた。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく拭き取り、酒・醤油・水をわかしたところに入れて煮る。砂糖、みりんで甘味を加えてもいい。煮ても硬くならず身離れがよくとても味がいい。
    マツダイの酒蒸 頭部を梨子割りにする。振り塩をして1時間以上寝かせて、皿に昆布をしき、のせて蒸し器で15分蒸す。付着している身は柔らかく中は豊潤、身離れもよくポン酢などで食べるととても味わい深い。
    マツダイのフライ 三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取り、皮を引く。塩コショウして小麦粉をまぶし、衣をからめパン粉をつけてやや高温で揚げる。表面はさくっとして、身は適度に締まり、甘味がありとてもおいしい。
    マツダイの唐揚げ 刺身にして残った部分や腹身の薄い部分を使う。水分をよくきり、コーンスターチか片栗粉をまぶす。これをじっくり揚げて、揚げ上がりに粉チーズと塩コショウをする。単に塩コショウしてもいいし、塩だけでもいい。
    マツダイのポワレ 切り身にして塩コショウする。これを多めのオリーブオイルで低温でじっくりソテーする。表面が香ばしく揚がったら、切り身を取りだす。残ったフライパンに白ワイン、塩コショウをして味を調えてソースにする。
    マツダイの塩焼き 水洗いして二枚に下ろして骨つきの方を切り身にする。振り塩をして1時間以上寝かせて焼き上げる。身は焼くと適度にしまりが身離れはいい。皮目の風味がよく、身にうま味があって美味。
    マツダイの若狭焼き(醤油焼き) 切り身に振り塩をする。1時間程度寝かせて表面にでてきた水分を拭き取る。これをじっくり焼き上げる。焼き上がりに酒・醤油の若狭地を漬けながら焼き上げる。
    マツダイの味噌汁マツダイのみそ汁 あらなどを集めて置く。熱湯に粗くぐらせて冷水に取り、汚れや鱗などを取り去る。これを水から煮だして、みそを溶いただけのもの。好みで泡盛、日本酒などを加える。沖縄のコーレーグスなども非常に味わいを高める。
    マツダイの潮汁 あらなどを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だしで煮だして酒と塩で味つけする。非常に滋味豊かな汁でご馳走である。付着している身もおいしい。

    好んで食べる地域・名物料理

    祝い事 昔、宮城県気仙沼ではマダイがとれなかったので、お食い初めや地鎮祭、上棟式などの祝い事のときに塩焼きにして出された。神事での魚は神主さんに魚種を指定される事がほとんどなので、魚を持ち帰る持ち帰る神主さんの好みが反映されているのかも。ほかには金山吉次とよばれるユメカサゴ、マタナゴ(ウミタナゴ類)、クロソイなどが使われた。[佐藤誠さん(濱喜/宮城県気仙沼)]

    加工品・名産品

    釣り情報

    相模湾ではルアー釣りの対象魚。

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/さんの水産(神奈川県小田原市)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)

    地方名・市場名

    ハッパ[葉っぱ]
    場所千葉県小湊 備考幼魚・稚魚のことだと思う。 参考文献 
    タカノハ
    場所山口県下関 参考文献 
    アズキ
    場所徳島県海部郡海陽町宍喰『宍喰漁業協同組合』 
    マツバダイ
    場所神奈川県相模湾周辺、長崎県 参考藤田晴大さん 
    エチオピア
    場所長崎県大村湾 参考藤田晴大さん 
    カラス
    場所長崎県平戸市度島 参考福畑敏光さん 
    タカノハ
    場所兵庫県姫路市家島群島坊勢島 
    バン
    場所大分県中津市 
    クロダイ
    場所愛媛県川之江 参考文献より。 
  • 主食材として「マツダイ」を使用したレシピ一覧

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