シラウオ

Scientific Name / Salangichthys microdon (Bleeker, 1860)

シラウオの形態写真

10cm SL 前後になる。受け口で口蓋骨歯がある。体高は低く、黒点が尾鰭・体側に並ぶが尾柄部上下からの三角形を思わせる黒点はないか不明瞭。
シラウオの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
10cm SL 前後になる。受け口で口蓋骨歯がある。体高は低く、黒点が尾鰭・体側に並ぶが尾柄部上下からの三角形を思わせる黒点はないか不明瞭。10cm SL 前後になる。受け口で口蓋骨歯がある。体高は低く、黒点が尾鰭・体側に並ぶが尾柄部上下からの三角形を思わせる黒点はないか不明瞭。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区側原棘鰭上目サケ目シラウオ科シラウオ属

    外国名

    Icefish
    言語英名 
    Whiting Glassfish

    学名

    Salangichthys microdon (Bleeker, 1860)

    漢字・学名由来

    漢字 白魚、鱠残魚、王余魚、銀魚 Sirauo
    由来・語源 生きているときは透明だが、死ぬと白いため。「しらうお」と「しろうお」の言語はしばしば混同があり、ハゼ科のシロウオであったり本種であったり、また「ひうお(琵琶湖の稚アユ)」であったりする。
    鱠残魚 〈備前平江、伊勢桑名に多し、武蔵角田川、中川のものも、桑名の種といえども水(みつ)美なれば、魚も亦美なり〉。あり得ない話ではあるが、桑名に多かったのだろうか? また東都(武蔵国江戸)周辺では隅田川、中川が有名だったのだろう。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
    Bleeker
    Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。

    地方名・市場名

    生息域

    海水・汽水。主要河川の河口域。
    北海道、青森県小川原湖・十三湖、秋田県八郎湖、京都府由良川河口域、島根県中海・宍道湖、茨城県、東京湾静岡県浜名湖、岡山、熊本。
    サハリン、沿海州から朝鮮半島東岸。

    生態

    沿岸域、河口付近、汽水域に棲息。
    シラウオの寿命は1年。
    春、2月〜5月に産卵。産卵後死んでしまう。
    孵化して夏には2〜4センチと小さいが漁獲の対象となる。
    10センチくらいになるが雌(めす)の方が大きい。

    基本情報

    主に食用となっているのはシラウオとイシカワシラウオの2種。青森県小川原湖、茨城県霞ヶ浦、島根県宍道湖、中海など淡水の影響の汽水域などでとれるのがシラウオ。千葉県から福島県などの外洋に面した淡水の影響のない海域であがるのがイシカワシラウオである。ともに味は非常によく高値で取引されている。よくハゼ科のシロウオとも混同されているが、こちらは非常に特種な食材である。現実社会で混同する可能性は低い。
    歌舞伎、三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)に「月もおぼろに白魚の篝もかすむ……」とお嬢吉三の台詞にあるのは当然、本種となる。春に産卵のために大川(隅田川河口から千住大橋にかけて)集まってきたシラウオを、たいまつをかかげとっている光景が目に浮かぶ。
    この台詞にあるように、春の季題、季語だ。おうおうにして大きな湾を控えている江戸や名古屋、大阪などの汽水域でとれるものであったので、古くから親しまれてきたのだ。
    現在では内湾の自然破壊、護岸などで漁獲量が減っている。春らしい魚ではあるが、入荷は年間を通してあり、値段も安定してやや高値、時期には非常に高価となる。
    関東では江戸前天ぷらの代表的な種。割烹料理店でも重要な素材。刺身、ぬた、椀種と大活躍する。

    水産基本情報

    市場での評価/入荷量は少ない。小型はやや高値。大きく型の揃ったものは非常に高い。
    漁法/底曳き網、四つ手網
    産地/茨城県、北海道、青森県、秋田県、福井県、島根県

    選び方

    味わい

    旬は冬だが、年間を通して味がいい
    シロウオと違って旬が長い。
    丸ごと食べるもの。白身でまったくクセのないなかに、旨みがたっぷりある。
    後味が非常にいい。

    栄養

    危険性など

    横川吸虫メタセルカリアが寄生していることがある。腹痛、下痢を発症することがある。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    シラウオの料理法・調理法・食べ方/揚げる(天ぷら、唐揚げ)、生食(刺身、酢じめ)、煮る(アヒージョ、卵とじ、しょうゆ煮)、汁(吸物)



    シラウオの天ぷら(かき揚げ) 茨城県霞ヶ浦産の小振りのものをざっと塩水で洗って、水分をよくきる。小麦粉をまぶして衣をつけて高温で揚げる。今回は三つ葉を使ったがなんでもいい。意外に玉ねぎがおいしい。さくっとした中にシラウオの甘味とほろ苦さがあって非常にうまい。


    シラウオの唐揚げ 塩水でざっと洗い水分をよくきる。冷蔵庫などで1時間以上ラップをしないで入れておいてもいい。片栗粉をまぶしてじっくり香ばしく揚げる。さらさらと軽く揚がり、ほろ苦さと香ばしさが楽しめておいしい。
    シラウオの刺身 強い塩水の中でざっと洗い水分をよくきる。これをこのまま生で食べる。塩分濃度の濃いなかで洗うと身が締まり、生臭みもとれる。味の特徴はなんと言っても微かな苦みだろう。後から魚らしいうま味がくる。
    シラウオの酢じめ 強めの塩水のなかで洗い。新しい塩水に2〜3分つける。ザルに上げて生酢で洗って水分をよく拭き取る。微かな酢の味に、身の甘味、ほどよい食感が楽しめる。より複雑で奥の深い味わいになる。
    シラウオのアヒージョ アングラスならぬシラウオのアヒージョだ。器にたっぷりのニンニク、鷹の爪、オリーブオイルを入れて、塩水でざっと洗って水分をよく切ったシラウオを入れる。火にかけてニンニクの香りが立って、油が泡立ち始めたら出来上がり。シラウオだけではなく、オイル自体もおいしい。
    シラウオの卵とじ 塩水でさっと洗い水分を切っておく。カツオ節出しに酒・薄口しょうゆで味つけ。シラウオを入れて一呼吸置き、卵を溶き入れる。シラウオ、卵の火の通し加減はお好みで。シラウオと卵の相性はよくとても味わい深い。
    シラウオの佃煮 塩水でさっと洗い、水分をよくきる。酒・しょうゆを煮立たせたなかで短時間で火を通す。しょうゆは少なめにした方がシラウオ本来の味が生きる。砂糖などで甘味をつけるとご飯に合う。山椒、しょうがなど好みのもので風味をつける。
    シラウオの塩煮 塩水のなかでさっと水洗いして水分をよく切る。鍋に酒・水少々を煮立たせ、柚子の皮とシラウオを入れて軽く火を通し、そのまま冷ます。柚子は冬の名残とでも言えそう。上品で繊細な味わいになる。
    シラウオの吸物 塩水のなかでざっと洗い水分をきる。カツオ節出しに酒・塩で味つけする。好みでしょうゆを加えてもいい。これでシラウオを煮て、椀に盛り、新たに汁を加える。青みなどはお好みで。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    ■ 加工品としては「ちりめん」、「しらす干し」、もしくは「茹で干し」が美味である。これは千葉県や茨城県で作られる。また佃煮、紅梅煮などもいい。
    シラウオの煮干し 霞ヶ浦で揚がったシラウオを塩ゆでして干し上げたもの。シラウオのしらす干しというとわかりやすいかも。カタクチイワシ以上に身が締まっており、苦みは少ない。非常に上品な味わい。霞ヶ浦周辺ではヌマチチブ、テナガエビ、ワカサギなどの混ざったものもあって楽しい。[茨城県霞ヶ浦周辺]
    シラウオの佃煮 霞ヶ浦で揚がったばかりのシラウオを醤油・砂糖・水飴などで甘辛く煮たもの。シラウオは強く煮ても硬くならず食べやすい。嫌みのない味わいで総菜として常備しておきたくなる。[茨城県霞ヶ浦周辺]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    トノサマウオ(トンサンウオ 殿様魚) 『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)に「トノサマウオ」が出てくるが、引用元が不明だ。有明海でのアリアケシラウオの呼び名「とんさんうお」と混同しているように思う。
    白魚・素魚 「白魚(シラウオ)」と「素魚(シロウオ)」の2種はよく混同される。前者は本種サケ目のシラウオで後者はスズキ目ハゼ科のシロウオである。シロウオ(素魚)は春先に産卵のために川に上るものをとり、躍り食いなどで食べるもの。躍り食い意外にはせいぜい卵とじになるくらいで言うなれば珍味である。
    三人吉三廓初買 河竹黙阿弥の歌舞伎「三人吉三廓初買」でお嬢吉三の言う名せりふに「月も朧に白魚の篝も霞む春の宵」というのなどまさにこのシラウオ漁の篝火だろう。この江戸前のシラウオは昭和初期までとれていたという。
    宍道湖七珍 島根県宍道湖のにいわゆる「宍道湖七珍」といわれる名物魚貝類があってそのひとつ。七珍はコイ、あまさぎ(わかさぎ)、ウナギ、スズキ、しじみ(ヤマトシジミ)、もろげえび(ヨシエビ)、そして白魚(しらうお)。
    樗蒲(ちょぼ) シラウオは一樗蒲(ちょぼ)、二樗蒲と数える。樗蒲はサイコロの目総てを足した数から1を引いた20尾。
    シラウオは春の季語
    「明けぼのや魚しろきこと一寸」松尾芭蕉
    「白魚をつかみ量りの男の手」中村汀女
    「錦絵に残る佃や白魚舟」中火臣
    「錦白魚舟羞らえる帆を孕ましぬ」加倉井秋を

    参考文献・協力

    『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『新 北のさかなたち』(北海道新聞社 監修/水島敏博、鳥澤雅 編/上田吉幸、前田圭司、嶋田宏、鷹見達也)、『島根のさかな』(島根水産試験場 山陰新報)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新版俳句歳時記 春の部 角川書店)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)

    地方名・市場名

    シラオ
    場所北海道厚岸 参考文献 
    シロウオ
    場所和歌山県新宮、大阪、伊勢湾 参考文献 
    シロイヨ
    場所富山県射水・氷見 参考文献 
    アマサギ
    場所富山県射水市放生津潟・四方・新湊 参考文献 
    シラユオ
    場所岡山県各地 参考文献 

    場所島根県出雲 参考文献 
    シラユ
    場所新潟県佐渡 参考文献 
    シラウオ
    場所東京都、有明海、秋田県象潟 参考文献 
    スベリ
    場所石川県今江潟・木場潟 参考文献 
    オオシロヨ シオレ シレヨ
    場所秋田県八郎潟 参考文献 
    シロヨ
    場所秋田県八郎潟・男鹿 参考文献 
    メソゴリ
    場所石川県河北潟 参考文献 
  • 主食材として「シラウオ」を使用したレシピ一覧

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