温暖化を感じる魚12 スマ(やいと)

いつの間にか、関東ではお馴染みの魚になっている


サバ科スマ属スマは回遊性の肉食魚で最大で体長1m前後になる。インド洋、太平洋の熱帯域から温帯域に非常に広い生息域を持つ。国内では北海道でも発見されているが、山口県・房総半島以南に多い。

スマという標準和名を知っている人は意外に少ない。今、全国的に標準和名を表示することが多くなっているが、それでもスマという人は少なく、もともと東京の呼び名だったスマは東京ですら使われなくなっている。
岸上鎌吉(1867年11月29日~1929年)は標準和名「ヤイト」を提唱している。胸鰭の下に丸い点が並ぶのが灸(やいと)の痕に見えるためで、非常に呼び名としてわかりやすい。多くの地域で今現在も、「やいと」なので、この動物学黎明期の和名をそのままにしておけば混乱はなかったのだ。
また、市場などでよく、「やいとがつお」、「すまがつお」と呼ばれることがあるのは、見た目がカツオに似ているため。また、古くはカツオ科(今現在はサバ科)の魚だったためでもある。

北上し、大型化しているスマ


本種は明らかに北上傾向にあり、大型化している。代表的な産地は長崎県、鹿児島県だが、ここでは1m近い個体も珍しくない。
1970年代の末から1980年代にかけて関東周辺の伊豆や房総半島に毎週通っていた。当時、伊豆半島伊東・下田あたりの魚屋では見ることがあったが、相模湾北部ではヒラソウダ(現在はサバ科ソウダガツオ属だが、古くはスマ同様にカツオ科)は普通だったが、スマは見ていない。このとき、両種とも地域性が高い魚で、生息域内でしか小売店などで見ることはできなかった。
魚を丸暗記していたときだったので、築地市場(東京都中央市場)でも探しに探したが、見つけることは出来なかった。2000年くらいまで東京都中央市場築地市場への入荷量は極めて少なかったのは、足の速い魚だと嫌われていたのかも知れない。当時、東京都内でも知る人の多かったヒラソウダは、流通するに値しない魚とされていたが、スマも同様だった可能性も高い。

生まれて初めて出合ったのは1970年代終わり頃、和歌山県串本町である。以後、紀伊半島ではいたって在り来たりな魚だということを知る。
今現在、小田原魚市場など揚がらない日はないというくらいありふれた存在になっている。
昔の紀伊半島海の環境と、現在の相模湾北部の海の環境が等しくなっていると考えるとわかりやすいだろう。
温暖化で明らかに水揚げ量が増えてもいるはずだ。鹿児島県鹿児島市の魚市場では本種が場内にずらりと並ぶことも珍しくない。鹿児島県からは航空便で翌日には届く。スマは明らかにカツオ同様、まずは刺身用の魚であることから、この航空便の意味も大きい。

さて、2024年くらいから九州、山口県、東京の地元とも言える静岡県、神奈川県(相模湾)などから入荷を見ている。鮮度のいいものは高級魚そのもので一入り(高級魚に多い造りで1箱に1尾)も珍しくない。
昔は高級魚というと白身魚を指す言葉だったが、近年、白身魚は凋落傾向にあり、赤身魚が高値をつけている。その高値の頂点にあるのがスマだ。

新しい赤身の味がするスマ


先にも触れたが基本的に刺身の魚であるのはカツオと同じである。カツオよりも若干酸味が少なく、脂ののっている期間が長い気がする。
酸味が控えめなところはクロマグロのトロと似ているが、より味わいが軽いので、だれが食べてもおいしいと感じるはずである。たっぷり食べても飽きが来ない。
たぶん、本種の味をしったら、マグロとカツオだけではない赤身の世界を知ることになると思う。
問題は、近年、値段の上昇が止まらないことだけかも。

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