202412/18掲載

神奈川県小田原・真鶴、「うずわ」のしか煮

とれても安いソウダガツオ類で作る「しか煮」


「しか煮」はソウダガツオ属と玉ねぎを使って作る、「すき焼き」風の煮物で、神奈川県小田原・真鶴の郷土料理だ。高い牛肉・豚肉ではなく、海に近いところなので安い魚で代用したものだ。
このソウダガツオを使った「すき焼き風惣菜」に対して「しか煮」という言語がなぜ生まれたのかはわからない。漢字は「鹿煮」だという人がいる。鹿肉のような味がするためらしい。また四角く切って作るので「四角煮」が「しか煮」になったとも。
基本的には「うずわ(マルソウダ)」で作るらしく、「『うずわ』でなければおいしくない」、「『うずわ』で作るから『しか煮』だ」という人もいる。もちろん、「そうだ(ヒラソウダ)」でもいいという人もいる。
確かに「うずわ(マルソウダ)」で作ると煮て硬く締まり、この硬さが肉(鹿肉)を思わせる。うま味も豊かである。
対するに「そうだ(ヒラソウダ)」は煮ると軟らかく、うま味は「うずわ」と比べると少ない。「うずわ(マルソウダ)」よりも魚の煮つけ的な味だ。
比較しなければどちらもおいしいが、水揚げされているのを見て、どちらを選ぶかと言われると、「うずわ(マルソウダ)」を手に取ることになる。
今のところ、神奈川県小田原市・真鶴町だけの料理のようだが、調べていく内に作っている地域が広がったり、逆に狭まったりする可能性がある。
本料理は小田原市鴨宮にある鮮魚店『魚竹』さんと、小田原市江之浦、江の安 ワタルさん夫婦に教わったもの。また、『魚竹』さんはジャガイモを入れて、「肉じゃが風」にするというので、こちらも作ってみた。協力に感謝します。

「うずわ」の「しか煮」基本形、1 マルソウダについて


「うずわ(マルソウダ)」は比較的暖かい海域を回遊している。主に節(だし用の節や惣菜のゆで節)に加工されていて、鮮魚での取引はわずかでしかない。鮮魚ではほとんど売れない。この安い魚でこんなにおいしい惣菜が作れるというところがミソである。

「うずわ」の「しか煮」基本形、2 材料はマルソウダと玉ねぎだけ


三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。
サイコロ状に切る。
玉ねぎは適当に切る。玉ねぎの歯触りを残したいので繊維に沿って切ったが、甘味を出したいなら、繊維を断つように切ってもいい。

「うずわ」の「しか煮」基本形、2 最初に切り身を炒める


鍋に油を入れて冷たいときに切り身を入れて、火をつける。
鍋を動かしながら軽く焼き目をつける。

「うずわ」の「しか煮」基本形、3 砂糖たっぷり、酒・醤油でこってりと


玉ねぎを加えて少し炒めて、酒・砂糖・醤油で味つけする。
お上品な味つけは「しか煮」に似合わない。
こってり甘辛いのがいい。
聞取した人の中には「砂糖うんと入れろよ」と言った人もいる。
基本的に魚と玉ねぎの水分、酒など調味料だけで水は不要だ。

「うずわ」の「しか煮」たべてびっくりするおいしさである


煮て硬く締まった「うずわ(マルソウダ)」が、確かに肉を思わせる。魚のおいしさが豊かに感じられて、食感が肉である。
明らかにご飯の友であり、朝ご飯にもいい。

「うずわ(マルソウダ)」の「しか煮」、肉じゃが風もいいね


三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取り、適当に切る。あまり小さく切りすぎると料理の中に埋もれてしまう。
玉ねぎも適当に切る。今回は横方向に切ったが、縦方向の方が歯触りはいい。
ジャガイモも適当に切る。
切った身を油で炒める。ここにジャガイモ(メークインがいい)を加える。
少し炒めたところに玉ねぎを加える。
酒・砂糖・醤油・水を加えて煮る。
「うずわ(マルソウダ)」が硬く締まって肉のような食感である。強いうま味が、しみたじゃがいもが矢鱈に味わい深い。
年齢にもよるが、肉じゃがに負けない味だと思っている。

「そうだ(ヒラソウダ)」で作ってもおいしい


試しに「そうだ(ヒラソウダ)」でも作ってみる。
三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取り、適当に切る。あまり小さく切りすぎると料理の中に埋もれてしまう。
玉ねぎも適当に切る。今回は横方向に切ったが、縦方向の方が歯触りはいい。
切った身を油で炒める。ここに玉ねぎを加える。
酒・砂糖・醤油・水を加えて煮る。
ヒラソウダは脂がそこそこ乗っていて、柔らかく、こくのある味わいである。そこに玉ねぎの味わいと食感が加わる。
明らかに惣菜であり、矢鱈にご飯に合う。
ちなみに他の魚で作ってもよさそうだ。

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