アザハタは東京の魚

東京都小笠原からの魚だった


20世紀末、築地を歩いていて、アカハタモドキ(小笠原を代表する小型のハタ)かなと思って見たら、本種だったときのうれしい気持ちは忘れられない。そのとき初めて見たわけではなく、ほんの1週間ほど前に、場内で見つけて、戻るルートなので後買いしようともどったところ、売れてしまっていたのだ。その内、小笠原ものが定期的にくる築地では取り立てて珍しいものではないことを知ったものの、初買いはどうしても興奮するものなのである。
この初物の画像はポジフィルム時代なので面倒で見る気にもなれない。とにもかくにもボクが名づけた新江戸前、小笠原の魚であることが1990年代わかったことになる。
アザハタは今現在は伊豆諸島以南に生息する小型のハタである。本種がなぜ痣羽太なのか、がわからない。1950年代(ボクは松原喜代松が最後の魚類検索を出したとき)以後の、比較的新しい時代の和名で命名者も不明だ。
さて、八王子総合卸売協同組合、マル幸、クマゴロウが銭州から釣り上げてきたものは、体長25cm・513gと小振りである。釣り上げてすぐ締めて血抜き済み、鹿児島県産以上に鮮度がよい。銭州は八丈島よりも北、神津島の南にある。近年伊豆諸島神津島や利島あたりでは珍しい魚ではなくなっているようだ。

新しいと硬いの薄めに造る


小振りではあるが全体に丸味があり、尾に近い部分まで肉厚である。三枚に下ろすと少しだけぬるっとするのは脂がのっているためだ。卵巣は小さく、産卵期はかなり先とみた。
釣り上げて3日目は筋肉が硬直してまだ硬い。
三枚に下ろして皮を引き、腹骨血合い骨をとり、薄めに造る。
皿にねぎ、みょうがを敷き詰めて、紅葉下ろしを添える。
わさび醤油で食べても味があり、非常においしいとは思ったものの、ポン酢を掛けて香味野菜、ポン酢とぐちゃぐちゃにしてつまんだ方がうまかった。邪道だけども。

本あらに負けない湯引きの味


半身は湯引きにしてみた。九州での「あらの湯引き」である。「本あら(クエ)」やマハタなどと比べるとミクロだけれど、味は決して負けていない。一切れの味のボリュームが大きいのだ。噛めば噛むほどうま味が広がってくる。


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