宮城県産マボヤ今年初食い

ちょっとだけ不気味な球体


ホヤ(マボヤ)を初めて見たのは小岩の魚屋だったのか、新宿伊勢丹だったのか? ちゃんと覚えていない。煉瓦色のような、血痕のような色で丸く、ヒゲが生えていて角があって、の姿にものすごい引力を感じたけれどなかなか食べてみようとは思わなかった。初食いはこれまたはっきりしない。神楽坂の鮒忠とか小岩の定食屋とか、伊勢丹で買った気がするとか。八王子の魚屋の長老や築地の長老達に聞くと東京では戦前から食べていたらしい。
マボヤは九州北部以北にいるが食用とする地域としない地域に分かれる。瀬戸内海には白いマボヤがいるが、見向きもしない。島根県隠岐では舫いロープに大量についているのをボクが取っているのを見て、漁師に捨てろと言われている。
食べているのは三陸太平洋側と青森県だけだったので、東京が食で、いかに東北と強く結びついていたかがわかる。
なんだこれは? ともやもやして図書館に行き、国立博物館に行き、結局、博物館で教わった比較動物学の書籍を買う。比較動物学の書籍は今手許にあるのは1982年のものだが、ホヤの仲間を調べた現物が見つからない。
ホヤとは? かなりはしょって述べると、
動物界(植物界というのもある)脊索動物門(体の中に心張り棒がある生き物)尾索動物亜門(生きている間に心張り棒が尾に近い部分にある)ホヤ綱(生まれたときには自由に泳ぎ心張り棒が体にあるが大人になると岩などにくっつき、分厚いビニールのような寝袋をまとい動かなくなる)マボヤ目マボヤ科(北海道のアカボヤなども含む)マボヤ
となる。なにがなんだかわからないと思うけど、それでいいのだ!
脊索動物門から上ではボクたち哺乳類と同じだけど、系統的には何億年か前に生き別れした家族と同じだ。
享徳の乱のなれの果てのような徳川家康が上州の国衆、世良田氏の流れだというが、その世良田氏は新田氏の一族で膨大な世代を遡れば清和天皇に行き着くという以上にわけがわからない。
海の中の岩にくっつき、入水管と出水管を持ち、取り込んだ海水から有機物を取り込んで赤いデブになる生き物でもある。

レモンイエローの刺身にレモン


クチクラと言われる厚いビニールのようなものを切り、確かにパイナップルのような色の筋肉を取り出す。
循環器に残っている有機物などを取り去り、軽く塩水で洗って適当に切ると刺身になる。

レモンをかけるときゅっと締まる


調味料は柑橘類だけが好みなので食べる直前にレモンをきゅっと絞り、きゅっと締まった身を食う。
大好きな川本三郎的な表現をすると、「ビールに合う」だけど、むしろ「チャミスルに合う」。
苦くて舌の上が冷や冷やして、ちょっとだけうま味があって、独特のゆるい食感がいい。
値段を見て、宮城県のマボヤ養殖の現状はいかに? と考える人は少なそう。


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