松島産剥き身で、カキのフリッター

昔々から作っている、本の街のフリッター


学校はお茶の水だった。下ると神保町があり、そこには多くの古書新刊の本屋あり、本の卸問屋あり、多くの出版社が密集する本の街だった。
なんとなく、そのまま40年以上、まるで暮らすように仕事を致すこととあいなった。
あたり一帯、帰宅は朝という職場だらけだったので、そこここに深夜に食事がとれる、酒が飲める小さな店があった。
その一軒でよく食べていたのがフリッターである。
豚肉、エビ、カキ(マガキ)の3種類しかなく、カウンターに座るととりあえずビールとフリッターだった。

作っているのを見て、自宅でも作るようになった。
なにしろ小麦粉と塩とビールだけの簡単な衣で揚げるだけ。
コショウの缶と小さなフォークと、セットでやってきたが、パセリだけが飾りっ気だった。

ある日の昼下がり、机に大量の資料を並べ、整理をしながら昼ご飯を作る。
冷蔵庫をのぞいたら、ご飯なく、パンなく、麺なくで、あるのはマガキの剥き身だけだった。
困り果てた挙げ句に久しぶりに神保町でおぼえたフリッターを作る。
思い立って出来上がりまで、約10分だから簡単至極。

フリッターといっていいのかどうかわからないが、限りなく薄い衣と、マガキの間の空白感がやたらに好きだ。
空白といっていいのかどうか。衣がべったりマガキに付着していない状態がいいのだ。
もちろん衣はさわっと歯音がするくらい香ばしく、マガキはとても豊潤でうま味の塊そのものである。
昼間なのでビールではなく冷やした凍頂烏龍茶だけど、いい昼ご飯だな、と思いながら食べる。

揚げても豊潤で豊かな味の剥き身


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に容器に入った生食用剥きガキ(鈴幸水産 宮城県宮城郡松島町)があって、値段を聞いたら「消費期限が近いから安くしてやるよ」というのに飛びつく。
なにしろ2月の市場は毎年低調である上に、今年は特別低調でめぼしいものがない。
さて、中身をバットに開けたら、見事としかいいようがないほど膨らんだ剥き身が飛び出してきた。
以上は前回も書いた。

3分の1をフリッターにする。
剥き身を塩水であらい水分をよくきる。
塩コショウする。
小麦粉をビールで溶き、塩少々の衣を作る。
剥き身に小麦粉をまぶし、衣をつけて中温で揚げる。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。


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